交通量神話に踊らされるな。連載13

(有)ソルブ 林原安徳

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交通量神話に踊らされるな。連載13

店長の立地,立地について,飲食店経営

2020/10/30 交通量神話に踊らされるな。連載13

桜の開花も間近かとなりました。そして、いよいよお花見です。

 

 

お花見の名所はどこもたいへんな賑わいになります。

 

そうした催事には必ずある出店(でみせ)。

 

もちろん、たくさんの人が集まり、歩いているから儲かると思って出店(しゅってん)しているわけですが、

 

そうなると「交通量が多ければ売れる、繁盛する」と言えそうですね。

 

 

 

しかし、これは、そのままで決して鵜呑みにしてはいけません。

それが、ここで筆者が一番言いたいことです。

 

 

確かに、「交通量が多ければ売れる」は一面の真実を言っています。

 

人がだれも歩いていない路地裏に出店するより、

表通りで人がたくさん歩いている通りに面して出店したほうが、

よっぽど売上げが高くなるのは多くの場合、事実です。

 

 

ですから、もし売上げ不振で困っていて、

表通りに賃料もほどほどの物件が見つかったとしたら、

リロケートすることを考えても良いでしょう。

 

交通量が多いぶん余計に人々との接触機会が増え、

認知度も上がるからです。

お店の受け入れ態勢さえ良ければ、より繁盛できるでしょう。

 

 

では、どんなときに、この「交通量が・・・」がウソになるのでしょうか?

 

これは、違う地域同士を比べたときに起きるのです。

 

 

 

つまり、上の例では、同じ街で、同じような環境だから言えるのです。

 

これが、違う街で、新たな物件が出てきたというような場合は、ウソになります。

 

 

 

街が違う、駅が違う、環境が違う

という場合は、交通量の単純比較はきわめて危険です。

 

 

とりわけ、オフィス街などのように、

朝夕の交通量が著しく多いような街と比較してはいけません。

 

どういうことかというと、

 

オフィス街の人達は、通勤、そして仕事、

つまり「お金を稼ぎ」にその街に来ているわけであって、

決して「お金を使う」ために来ているわけではありませんね。

 

歩いている人の心理状態が、

「お金を使わない」ほうに傾いている。

 

だから、こういう心理状態の人が何人歩いていようと、

その交通量は、に等しいと言えます。

 

 

 

さほど極端でないにせよ、

地域が違うということは、競合店の数も影響力も違います。

 

だから、1日に同じ1万人が歩いていたとしても、

競合店が多いほうの地域は、自店舗への貢献は少ない。

 

 

また、そもそも、

住んでいる人の感じ方も違うかもしれません。

 

下町的な地域なら、「低価格であること」がお店を選ぶ一番の理由かもしれません。

そうしたらあなたの店はそれに答えなければいけません。

 

 

あなたが今まで出してきた地域が、

けっこう所得の高い層が住んでいるような街であるなら、

そうした地域でなければうまくいかないかもしれません。

 

 

ある店では交通量100人に1人、入店してくれたとしても、

同じことが新しい街で言えるとは限りません。

 

いいえ、確実に違うはずです。

 

今度は200人に1人、あるいは300人に1人しか

お客さんになってくれない。

そういうことが起こります。

 

異なった地域間では、1人の交通量にかかるウェイトが異なってくる。

これがより真実に近いことです。

 

 

 

もう一つ、交通量があてにならない理由があります。

 

それは、地点ごとに、交通量の測り方がまったく異なってくるということです。

 

 

単に、ほんとうに

「お店の直前だけ計測する」

と決めたとしても、

 

その「お店の直前」というのがどうなのということになります。

 

 

交通量 通行量 測定

[交通量の測定.jpg]

交通量の測定方法は、大きく分けて2つ、①直前型 と ②領域型 があります。

①直前型は、ABの方向を測定するが、②領域型は、駅から出てくる人々=イからトまでの7方向を測定しその合計を求めます。たとえば、日野市にあるT駅では、①直前型では平日10:00~18:00で、3400人ですが、②領域型では、26200人とその8倍以上になります。

交通量は、計測方法によって大きく数値が異なることがわかります。

 

 

 

 

図にもあるように、実際、交通量というのは、単に直前を往復する人ばかりではありません。

 

横断歩道や路地がすぐ近くあるような場合、その人達をどうするか、数えるのか数えないのか、これによって交通量はかなり変わってきます。

 

 

それに、直前なんか、ほとんど人は歩いていない。

でも、店は繁盛している。

 

どうしてかなあと思ったら

駅からその店がよーく見えて、

駅口から出てきた人も売上に貢献している

ことは明らかというような場合もあります。

 

 

ですから、こういう場合、本来なら駅に出入りする人も数えなければいけないと思ってしまいます。

 

 

さらに、計測する相手はどうしましょう。

 

子供を含めますか?

赤ちゃんも含めますか?

ベビーカーに乗った子供はどうしますか?

タクシーやバスから降りてきた人は数える、

それとも数えない?

 

 

 

計測時間はどうしましょう。

 

1日24時間数えますか?

それとも12時間?8時間?1時間でも良いですか?

 

雨が降ってきたら中止ですか?

風が強かったらどうです?

暑い日でも良いですか?

 

 

このように、そもそも

 

交通量なんて計測自体が、ほとんど正確でない。

 

 

もちろん、車の交通量なら、

ある程度正確にできるかもしれません。

 

でも、問題は、人間の交通量のほうです。

 

これがなかなか、同じ条件で計測できることは少ない。

 

異なる条件で計測した「交通量」どうしを比較して、意味があると思いますか?

 

 

一方は店前を往復する人が8時間で5000人。

 

もう一方は、店前を往復するだけではなく横断歩道を渡ってくる人も数えた4時間で3000人。

 

こういう数字を単純に比較しても意味がないですね。

 

 

 

交通量は、多いに越したことはありませんが、それは同じ地域、街だから言えること。合点していただけましたか?

 

 

 

筆者注

「交通量」は「自動車」や「鉄道」の交通量を表すことが多く、人間が対象の場合は、それと区別して「通行量」と呼ぶことがありますが、ここでは混乱を避けるため敢えて、一般的な「交通量」と表記しております。

 

図の説明

[異なる街での通行量.jpg]

通行量

もともと調布のA店は繁盛店で、1000万円以上売っていました。直前の交通量は4400人。それに対して新しく物件が同一の鉄道路線に出ました。調布から3.8km離れた「仙川」の商店街です。交通量を測ってみると12000人あり、A店の3倍近くあるから大丈夫と判断しました(B店)。果たして、出店後、その売上は500万にも満たず不振店になってしまいました。これは実話です。

 

 

 

(プロフィール)

林原安徳はやしはら やすのり
売上予測コンサルタント。昭和31年さいたま市生まれ。 東京大学卒業後、日本マクドナルド(株)に入社。出店調査部にて、1,000店舗単位の成功を決める「立地と売上予測」を基礎研究し実践応用する。
独立後、理論を独自に深耕させSORBICS(ソルビクス)と命名。これに基づき、チェーン展開する多くの企業や個人をコンサルティングしている。主な著作に「実践・売上予測と立地判定」(商業界)「最新版 これが繁盛立地だ!」(同文舘出版)。無料メールマガジン「ソルブ通信」で最新の立地情報を配信中。

http://www.sorb.co.jp

 

 

 

 

 

 


 

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