「コバンザメ」はなぜ成立するのか? 連載23

(有)ソルブ 林原安徳

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「コバンザメ」はなぜ成立するのか? 連載23

店長の立地,立地について,飲食店経営

2020/11/09 「コバンザメ」はなぜ成立するのか? 連載23

 

 

年末年始の働き疲れは溜まってはいませんか。体力に自信のある人ほど無理をしがちです。“無理が通れば道理が引っ込む”と昔から言われています。休めるときには十分休むこともプロの習慣として大切なことです。メリハリをきかせた体調管理をお願いします。

 

 

さて、今回はTG(トラフィックジェネレーター:交通発生源)について、少し深掘りしてみましょう。

 

それはTGの大きさについてです。体積とか重量とかそういう意味の大きさではありません。TGという立地要因がどれだけ良い影響を与えるか、その大きさのことです。または、その大きさを示している指標を探してみましょう。

まず、鉄道駅というTGは「乗降数」でその大きさを知ることができます。乗降数は1万人よりも2万人のほうが影響も大きいことは言うまでもありません。

ただし、鉄道駅では注意することがいくつかあります。その一つは、乗換駅の場合、乗降数をどう補正するかという点です。特に異なる鉄道会社間での乗り換えがある場合は難しい。乗降数をTGの大きさの目安にするというのは、その駅の外に出て来てくれる流入数をつかむことができるからです。でも、乗り換えする場合、必ずしも両会社の乗降数を合計するだけで良いわけではありません。200m以上も駅同士が離れていれば合計するだけでも良いかもしれません。乗り換えする人が街の中を歩いてくれるからです(図1)。

 

駅 動線

図1 JR武蔵野線「新秋津駅」と西武池袋線「秋津」

(乗降者数は新秋津駅7万1386人、秋津駅7万3236人とほぼ等しい)

 

しかし、駅のホーム(図2)とか、改札を出てすぐで乗り換え(図3)があるような場合はどうでしょう。なかなか、街に出て来てくれる人々の数を把握することは難しいものです。

 

駅図2

駅のホームで乗り換え

「代々木上原駅」では、小田急電鉄小田原線とメトロ千代田線がホーム内で乗り換えができる。

乗降者数はそれぞれ3万5359人、3万9190人で、合計は7万5千人だが、この数字にはホームでの乗り換えは含まれていない。

 

駅

図3

改札を出てすぐで乗り換え

四谷駅は、JR東日本の改札、メトロの改札(丸ノ内線・南北線)があるが、乗降数はそれぞれ18万4592人、10万1940人、10万1940人となっているが、乗り換え数は不明である。

 

 

ただ、こうした場合、駅の乗降数の代わりに、駅周辺での「年間小売販売額(図4)」や商店数(図5)を調べることで補正はできます。

 

 

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図4

年間小売販売額

図2での代々木上原駅(7万5千人)周辺500m圏の年間小売販売額は94億9千万円だが、同線での成城学園前駅(8万4033人)では126億円なので、乗降数がほぼ駅の大きさを反映していると考えられる。

 

 

商店数

図5

商店数

同じように商店数を電子地図を用いて集計すると157店と出るが、成城学園前駅203店よりやや少ない程度だ。

 

 

ところで、地下鉄の駅出入り口は、JRなど陸上を走る路線のそれに比べるととても多いですね。最低でも2個所、普通で4個所、多いと数十個所あります。

この場合、駅の乗降数はそのままその駅の大きさを示すものでないことはわかりますね。それぞれの駅口に人々は分散してしまうからです。

次に、大型小売店、量販店というTGについての大きさは何で表せば良いでしょうか?一番適切なのは、それらの店の販売額です。このデータは「日本スーパーマーケット年鑑(商業界)」や百貨店調査年鑑(ストアーズ社)にはたいてい載っていました。しかし、昨今の大競争淘汰の時代に入りますとこのデータは各企業の秘密にされてしまい、かなり多くの企業が公開しなくなりました。

ですから、それらの販売額はいまやTGの大きさの指標にすることができません。

そこで、小売店の場合、その売場面積や階層数、駐車場台数、レジ台数などで大小を決めています。

大学とか専門学校のようなTGはどうでしょう。一見「学生数」がわかりそうなものですが、それが毎年更新されていたのは90年代初頭までの話し。旧文部省が発行していた学校総覧という本に掲載されていました。今は掲載されていませんので、各大学の定員数や大学の敷地の広さなどで代用するほかありません。ただし、それらは明らかに不正確にならざるをえません。

 

レジャー施設や公園などはどうでしょう。

大きなレジャー施設なら、「レジャーランド&レクパーク総覧」(綜合ユニコム)でわかります(図6)。

 

 

テーマパーク 公園

レジャー施設

日本の有名なレジャー施設なら、ほぼその来場者数は調べられる。

 

 

しかし、こうしたものに載っているのはある程度有名な施設だけです。小さな公園、レジャー施設は掲載されていません。仕方がないので、こういうTGは、地図上で面積を計測したり、入園数を実測したりして大きさの目安を作ります。

時には、観光用の専門誌を数社分購入し、それらで紹介されている記事の文字数を数え、その平均値で代用することもあります。

ところで、交差点TGはどうでしょう。その大きさを知るには、通行量を図るしかないでしょうか。確かにその方法は確かな数値を与えてくれます。しかし、最低でも数時間は計測、しかも計測範囲が広いなどの理由であまり行われていません。

簡便的に行う方法は、交差点を形成するそれぞれの道路の幅を、電子地図帳で計測し、それぞれを掛け合わせるというものです。仮に10m幅の道路と8m幅の道路が交差している場合は、10×10×8×8=6400ということになります。

 

ところで、TGは店の売上を左右する最大の立地要因です。近くに大きいTGがあるかないかで店が存続できるか、撤退を余儀なくされるのです。ですから、少しでも大きなTGを見つける必要があります。複数あればなお良い。

たとえば、最近では、駐輪場がTGとしてたいへん寄与していることもわかってきました。とりわけ、駅のすぐ近くでの駐輪を禁止しているような場合、駅からはやや離れた場所に大きな駐輪場が用意してあることがしばしば見受けられます。

そうなると、この駐輪場こそ駅の代わりになるTGとしての力を発揮するのです。もちろん、この場合のTGの大きさは収容できる自転車数ということになります。

 

自店に影響を与えるTGが、大型小売店のような商業施設であるときは、まさしく「コバンザメ」商法ということもできます。スーパーマーケットの近くにコンビニエンスストアやお総菜専門店が出店していて驚いたことはありませんか?「なぜスーパーで売っているものをわざわざ別の店でも買おうとするのだろう」そういう感想を持ったことはありませんか?

確かにそういう不思議さがあります。競合するはずの商品が競合していない。むしろ小さい店にとって大きな店は、より多くのお客様を集めてくれる存在です。

よく言われることがあります。

「新しいスーパーができると多くの店舗のお客が減って経営が苦しくなるけれど、不思議と八百屋/果物屋だけはそういうことがまったくない。共存どころか、より繁盛する。」

このことの確実な裏付けはとれていませんが、筆者も同じ感想を持っています。

TG(交通発生源)はコバンザメ商法を拡大したものです。駅、大型交差点、学校、レジャー施設、公園そして駐輪場、こうしたさまざまなサメ=TGの近くにいれば外敵(同業店・ライバル店)から守られる。

ただし、そのためには、TGから直接見える(視界性が良い)、TGTGとの動線上にあるなどの立地条件を満たしていなければなりません。

 

 

 

(プロフィール)

林原安徳はやしはら やすのり
売上予測コンサルタント。昭和31年さいたま市生まれ。 東京大学卒業後、日本マクドナルド(株)に入社。出店調査部にて、1,000店舗単位の成功を決める「立地と売上予測」を基礎研究し実践応用する。
独立後、理論を独自に深耕させSORBICS(ソルビクス)と命名。これに基づき、チェーン展開する多くの企業や個人をコンサルティングしている。主な著作に「実践・売上予測と立地判定」(商業界)「最新版 これが繁盛立地だ!」(同文舘出版)。無料メルマガを配信中。立地道場を東京、大阪、福岡で開催している。

 

「統計てきめん」の地図使用承認(C)昭文社第51G083号)

 

 

 

 


 

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