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埼玉・深谷の激戦 コンビニ
埼玉・深谷エリアの新たなる激戦徹底レポート [ベイシア vs ベルク vs ヤオコー] 月刊コンビニ 2013年12月号
深谷エリアにおける商圏は、地上を走るJR高崎線によってその南北が分断されている。
今回、ベイシアスーパーマーケット深谷国済寺がオープンしたのは北側の商圏(図A、以下「A北商圏」と呼ぶ)である。
もともと、深谷は南側のほうが人口の伸びが速かったようで、現状では全体を覆うように人口が貼り付いている。そして、やや熊谷市、籠原周辺にまで拡がっている(図B、以下「B南商圏」と呼ぶ)。
したがって、総人口を比較すると、A北商圏の360百人に対して、B南商圏は545百人と1・5倍になる。
そこで、B南商圏では、各SM等の進出も激しく、イトーヨーカドーアリオ(売場面積113,000㎡)をはじめ、9店舗が鎬を削っている。1店当りの単純割当人口(注1)は、6000人強ときわめて競合環境は厳しい。
これに対して、A北商圏は5店舗であったから、その値は7200人強とやや緩和状況であった。しかし、その新店のオープンによって6店舗となった結果、その値はB南商圏と同じ6000人強と変貌する。
南北の商圏における統計データ比較
ここで、鉄道によって明らかに分断されている南北の商圏の違いについて、考察しておこう。
1.年齢別人口
日本全体では、少子高齢化が進行していますが、この深谷エリアは南北ともに幼児、子供、若者(0歳~39歳)の割合が高く、逆に、60歳以上高齢者の割合が少ない。これは、マーケットとして現時点では有望であることを示している。
2.通勤・通学
通勤・通学の手段を見ると、A北商圏で自転車が多いのに対し、B南商圏は電車が多い。
B南商圏が広く深谷駅のみならず、籠原駅を利用している状況を裏付けている。ただし、両商圏において、自家用車の利用は53・3%と全く同じであり、駐車場なくしては商売が成立しないことは確かだ。
3.経年推移
人口は、両商圏ともに、2005年までは順当に増え続けたが、2010年では減少に転じている。これに対して、世帯数は増加の一途を辿っており、一世帯当たりの人員数が減少していることを意味している。とりわけ、単身者の増加が考えられる。
4.年収別世帯数
両商圏ともに、年収300万円未満の世帯は全国平均を大きく下回る。また、同800万円以上の世帯は全国並みであるが、その中間層300万円以上800万円未満の世帯は大きく上回っており、「中流」層がいまだ健在であることを示している。
5.人口予測
将来人口を予測すると、A北商圏が今後25年間で約85・7%になるのに対して、B南側はさらに少ない82・9%になる(注2)。
すでに、B南商圏は激戦に加えて、需要人口の大きな減少というダブルパンチをA北側より強く受けることを意味している。
6.その他の比較(図8)
統計をさらに調べていくと、A北商圏は、B南商圏に比べ持ち家世帯の比率が8%近く高く、また一戸建て世帯の割合も10%近く高い。古くからの住人が割合多いことを示している。その反対に、A北商圏にくらべB南商圏では共同住宅(アパート、マンション)に住む割合が10%以上高い。これもB南商圏においては、転入居住者が多いことを示唆している。このことは、居住期間別世帯数(図9)を調べることによって裏付けられる。
すなわち、20年以上居住世帯がA北商圏の33%に対してB南商圏では29%、反対に、5年未満はA南商圏で21%、B北商圏で25%である。
こうしたことから、A北商圏での出店は、すでに購買行動が定着している住民が多い中での出店であるから、その成功のためにはよほどのインパクトを与える必要があろう。
あるいは、A北商圏内にとどまらず、より広い地域からの集客ができることが不可欠と思われる。
A北商圏における各店の立地状況
とりわけ店間距離が近い、または、同一の幹線道路上にある5店舗について実査を行い、その立地を分析した。
ベルク深谷稲荷町店
最も深谷駅に近い店であるが、店前道路は、1kmも進まないうちに切れてしまう延伸性がない生活道路である。そのために地元の住人しか認知、利用することができない。しかしながら、車での進入退出は容易であり、自転車、徒歩での来店もきわめて容易であり、地元での利便性はきわめて良好と見ることができる。
ヤオコー深谷国済寺店
深谷駅から行くと一度、国道17号線を渡った後の側道になる生活道路沿いに位置している。片側1車線ながら反対側車線からの看板に対する視界性はきわめて良い。
これに対して、店側車線からの視界性はきわめて難がある。加えて、せっかくの駐車場も、その中に並木のように樹木が配置されている。これは広さに制約を与えるうえ、ドラッグストアとの併設によって店舗自体の視界性をきわめて悪くしている。土地利用の方法に改善の余地がある。
ベイシアマート深谷東方店
そのヤオコーからほぼ1km、交差点の角地にある。しかし、駐車場はほかのSMと比べ少なくいかにも見劣りがする。交通量の多い南北の道路は、中央分離帯があり反対側車線からの直接INはできない。土地がやや変形であることも手伝って、駐車場を増やすことが難しい立地である。
ベルクフォルテ
国道17号線に面しており、かつ駐車場が375台と最も広く、同じ棟続きに、ドラッグストア、衣料品店がある。
およそA北商圏で繁盛する条件をすべて兼ね備えている。すなわち、車来店のための駐車場が広いこと、国道に面しているために他の地域からの吸引も可能であることなどだ。
建物の間口が広いことは、その広さを実際以上に大きく見せる効果も果たしており、客観的に、この店が地域No1店舗と受け止められていると推定される。
最後まで、この店は勝てるだけの立地上の優位点を持っている。
スーパーマーケット深谷国済寺店
ベルク深谷稲荷町店とヤオコー深谷国済寺店の間に、本年9月にオープンした。
残念ながら、この店は国道17号線から直接入ることはできない。
もちろん、国道沿いには「次の信号左折」と大きな野立看板が設置されてはいるが、これだけで、果たして、地元の住民はともかく遠方よりの顧客獲得が可能であるかについては疑問が残る。ただし、売場面積は2303㎡と、単独店舗としてはA北商圏で最も大きく、その吸引力に期待したい。
近未来予測
B南商圏はすでにSM過剰は明らかである。そのためすでに1店舗は別のスーパーマーケットに転換した。これからも再編は必至である。
そして、S北商圏も同様に過激な再編が始まろうとしている。
スーパーマーケット深谷国済寺店がオープンすることによって、立地上もっともインパクトを受けるのはヤオコーであろう。最も近距離にあるばかりでなく、もともとベイシアマートとベルクの間にあって、商圏は大きな制約を受けていたからである。この店のためにとどめを刺されるのは時間の問題である。
次に影響を受けるのは、街中にあるベルクであろう。互いに17号線の内側、JR線の北側の住民が主たる顧客となり、商圏が完全に重複しているからである。
とはいえ、両者は競い合いながらも当面は両立すると考えられる。
先発優位の原則からいけば、この新店のほうが償却器材、構築物が大きい分だけ危ういこともじゅうぶん考えられる。
本文2909字
注1.考えられる直接競合する商圏の総人口を店数で除した数値。
注2.人口予測には、コーホート変化率法を用いた。
24/09/08
23/06/12
22/05/20
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埼玉・深谷エリアの新たなる激戦徹底レポート [ベイシア vs ベルク vs ヤオコー] 月刊コンビニ 2013年12月号
深谷エリアにおける商圏は、地上を走るJR高崎線によってその南北が分断されている。
今回、ベイシアスーパーマーケット深谷国済寺がオープンしたのは北側の商圏(図A、以下「A北商圏」と呼ぶ)である。
もともと、深谷は南側のほうが人口の伸びが速かったようで、現状では全体を覆うように人口が貼り付いている。そして、やや熊谷市、籠原周辺にまで拡がっている(図B、以下「B南商圏」と呼ぶ)。
したがって、総人口を比較すると、A北商圏の360百人に対して、B南商圏は545百人と1・5倍になる。
そこで、B南商圏では、各SM等の進出も激しく、イトーヨーカドーアリオ(売場面積113,000㎡)をはじめ、9店舗が鎬を削っている。1店当りの単純割当人口(注1)は、6000人強ときわめて競合環境は厳しい。
これに対して、A北商圏は5店舗であったから、その値は7200人強とやや緩和状況であった。しかし、その新店のオープンによって6店舗となった結果、その値はB南商圏と同じ6000人強と変貌する。
南北の商圏における統計データ比較
ここで、鉄道によって明らかに分断されている南北の商圏の違いについて、考察しておこう。
1.年齢別人口
日本全体では、少子高齢化が進行していますが、この深谷エリアは南北ともに幼児、子供、若者(0歳~39歳)の割合が高く、逆に、60歳以上高齢者の割合が少ない。これは、マーケットとして現時点では有望であることを示している。
2.通勤・通学
通勤・通学の手段を見ると、A北商圏で自転車が多いのに対し、B南商圏は電車が多い。
B南商圏が広く深谷駅のみならず、籠原駅を利用している状況を裏付けている。ただし、両商圏において、自家用車の利用は53・3%と全く同じであり、駐車場なくしては商売が成立しないことは確かだ。
3.経年推移
人口は、両商圏ともに、2005年までは順当に増え続けたが、2010年では減少に転じている。これに対して、世帯数は増加の一途を辿っており、一世帯当たりの人員数が減少していることを意味している。とりわけ、単身者の増加が考えられる。
4.年収別世帯数
両商圏ともに、年収300万円未満の世帯は全国平均を大きく下回る。また、同800万円以上の世帯は全国並みであるが、その中間層300万円以上800万円未満の世帯は大きく上回っており、「中流」層がいまだ健在であることを示している。
5.人口予測
将来人口を予測すると、A北商圏が今後25年間で約85・7%になるのに対して、B南側はさらに少ない82・9%になる(注2)。
すでに、B南商圏は激戦に加えて、需要人口の大きな減少というダブルパンチをA北側より強く受けることを意味している。
6.その他の比較(図8)
統計をさらに調べていくと、A北商圏は、B南商圏に比べ持ち家世帯の比率が8%近く高く、また一戸建て世帯の割合も10%近く高い。古くからの住人が割合多いことを示している。その反対に、A北商圏にくらべB南商圏では共同住宅(アパート、マンション)に住む割合が10%以上高い。これもB南商圏においては、転入居住者が多いことを示唆している。このことは、居住期間別世帯数(図9)を調べることによって裏付けられる。
すなわち、20年以上居住世帯がA北商圏の33%に対してB南商圏では29%、反対に、5年未満はA南商圏で21%、B北商圏で25%である。
こうしたことから、A北商圏での出店は、すでに購買行動が定着している住民が多い中での出店であるから、その成功のためにはよほどのインパクトを与える必要があろう。
あるいは、A北商圏内にとどまらず、より広い地域からの集客ができることが不可欠と思われる。
A北商圏における各店の立地状況
とりわけ店間距離が近い、または、同一の幹線道路上にある5店舗について実査を行い、その立地を分析した。
ベルク深谷稲荷町店
最も深谷駅に近い店であるが、店前道路は、1kmも進まないうちに切れてしまう延伸性がない生活道路である。そのために地元の住人しか認知、利用することができない。しかしながら、車での進入退出は容易であり、自転車、徒歩での来店もきわめて容易であり、地元での利便性はきわめて良好と見ることができる。
ヤオコー深谷国済寺店
深谷駅から行くと一度、国道17号線を渡った後の側道になる生活道路沿いに位置している。片側1車線ながら反対側車線からの看板に対する視界性はきわめて良い。
これに対して、店側車線からの視界性はきわめて難がある。加えて、せっかくの駐車場も、その中に並木のように樹木が配置されている。これは広さに制約を与えるうえ、ドラッグストアとの併設によって店舗自体の視界性をきわめて悪くしている。土地利用の方法に改善の余地がある。
ベイシアマート深谷東方店
そのヤオコーからほぼ1km、交差点の角地にある。しかし、駐車場はほかのSMと比べ少なくいかにも見劣りがする。交通量の多い南北の道路は、中央分離帯があり反対側車線からの直接INはできない。土地がやや変形であることも手伝って、駐車場を増やすことが難しい立地である。
ベルクフォルテ
国道17号線に面しており、かつ駐車場が375台と最も広く、同じ棟続きに、ドラッグストア、衣料品店がある。
およそA北商圏で繁盛する条件をすべて兼ね備えている。すなわち、車来店のための駐車場が広いこと、国道に面しているために他の地域からの吸引も可能であることなどだ。
建物の間口が広いことは、その広さを実際以上に大きく見せる効果も果たしており、客観的に、この店が地域No1店舗と受け止められていると推定される。
最後まで、この店は勝てるだけの立地上の優位点を持っている。
スーパーマーケット深谷国済寺店
ベルク深谷稲荷町店とヤオコー深谷国済寺店の間に、本年9月にオープンした。
残念ながら、この店は国道17号線から直接入ることはできない。
もちろん、国道沿いには「次の信号左折」と大きな野立看板が設置されてはいるが、これだけで、果たして、地元の住民はともかく遠方よりの顧客獲得が可能であるかについては疑問が残る。ただし、売場面積は2303㎡と、単独店舗としてはA北商圏で最も大きく、その吸引力に期待したい。
近未来予測
B南商圏はすでにSM過剰は明らかである。そのためすでに1店舗は別のスーパーマーケットに転換した。これからも再編は必至である。
そして、S北商圏も同様に過激な再編が始まろうとしている。
スーパーマーケット深谷国済寺店がオープンすることによって、立地上もっともインパクトを受けるのはヤオコーであろう。最も近距離にあるばかりでなく、もともとベイシアマートとベルクの間にあって、商圏は大きな制約を受けていたからである。この店のためにとどめを刺されるのは時間の問題である。
次に影響を受けるのは、街中にあるベルクであろう。互いに17号線の内側、JR線の北側の住民が主たる顧客となり、商圏が完全に重複しているからである。
とはいえ、両者は競い合いながらも当面は両立すると考えられる。
先発優位の原則からいけば、この新店のほうが償却器材、構築物が大きい分だけ危ういこともじゅうぶん考えられる。
本文2909字
注1.考えられる直接競合する商圏の総人口を店数で除した数値。
注2.人口予測には、コーホート変化率法を用いた。