お店にとって「見えやすい場所にあること」は大切です。
これは、立地についてそれほど詳しくない人でも、なんとなく想像できることだと思います。
ㅤ
駅から出てすぐ目の前にある店。 歩いていると自然に看板が目に入ってくる店。 遠くからでも「あそこに店がある」と分かる店。
ㅤ
こういうお店は、当然ながらお客さんに気づいてもらいやすくなります。
ㅤ
店舗立地の世界では、こうした「お客さんの視界に店舗がどのように入ってくるのか」を視界性として評価します。
ㅤ
ㅤ
では、この視界性。
ㅤ
同じような業種・業態であれば、同じくらい重要なのでしょうか?
ㅤ
実は、そうとも限りません。
ㅤ
私がこれまで様々な業態の売上予測モデルを作ってきた中でも、視界性が売上げに与える影響はかなり違います。
ㅤ
その違いが非常に分かりやすく表れるのが、居酒屋です。
同じ「お酒を飲み、食事をする店」であっても、客単価が比較的安い居酒屋と、高価格帯のお店では、視界性の重要度が変わってくるのです。
ㅤ
特に低価格居酒屋では、「お店が自然に見えること」が売上げに強く影響する傾向があります。
ㅤ
それは、なぜなのでしょうか。
ㅤ
ㅤ
ㅤ
ㅤ
<高価格なお店は「店を決めてから」向かう>
ㅤ
例えば、今日は大切な人との食事を思い浮かべてください。
ㅤ
「せっかくだからちょっといいお店に行こう」と考えて言える時に、駅を降りてから、「さて、どこにしようかな」と歩きながら適当に高価格なお店を探す人は、それほど多くないでしょう。
ㅤ
事前にインターネットで検索して、
口コミを見て、
料理や価格を確認して、
予約をしましす。
ㅤ
そして当日は、そのお店を目的地として向かいます。
ㅤ
つまり、来店する前から、「今日はこの店に行く」と決まっているわけです。
ㅤ
こうした来店動機のお客さんが多いお店では、多少分かりにくい場所にあっても、お客さんは地図を見ながら探して来てくれます。
路地裏でも、地下でも、ビルの上階でも、その店へ行きたいという動機が十分に強ければ来店できます。
ㅤ
もちろん、高価格なお店なら視界性が悪くても構わない、という意味ではありません。
同じ条件なら、見つけやすい方が良いに決まっています。
ㅤ
ただ、視界性が多少悪くても、それを乗り越えて来店してくれるだけの目的来店性を持ちやすい、ということです。
ㅤ
ㅤ
ㅤ
ㅤ
<安い居酒屋は「歩きながら決める」ことが多い>
ㅤ
では一方で、低価格の居酒屋はどうでしょうか。
ㅤ
例えば仕事帰りに同僚と、「ちょっと一杯飲んで帰ろうか」となった。
あるいは一次会が終わって、「もう一軒行く?」となった。
ㅤ
こういう時、必ずしも行く店が最初から決まっているとは限りません。
ㅤ
駅に向かって歩きながら、
「ここでいいんじゃない?」
「あ、あそこ安そうだよ」
「空いてそうだから入ろうか」
と、その場で決めることも多いでしょう。
ㅤ
つまり、「店を決めてから移動する」のではなく、「移動しながら店を決める」わけですね。
ㅤ
ㅤ
ここに、視界性が重要になる理由があります。
ㅤ
お客さんの選択肢に入るためには、まず店の存在に気づいてもらわなければなりません。
ㅤ
どれだけ料理がおいしくても。
どれだけ価格が安くても。
どれだけ店内の雰囲気が良くても。
ㅤ
その場で「どこに入ろうか」と考えている人の視界に入らなければ、そもそも比較対象にすら入れません。
ㅤ
逆に、TGや動線から自然に視界へ入ってくる店舗は、「ここに店がありますよ」と、お店を探している人に対して常に働きかけていることになります。
ㅤ
これが、衝動来店の多い低価格居酒屋における視界性の強さです。
ㅤ
ㅤ
ㅤ
ㅤ
<同じ「居酒屋」でも、価格帯が変われば立地の重要度が変わる>
ㅤ
今回の話で私が面白いと思うのは、まったく違う業態を比較しているわけではない、ということです。
ㅤ
例えば、スーパーマーケットと美容室を比べたら、お客さんの使い方も違えば、必要な店舗規模も違い、当然ながら重要になる立地条件も違います。
ㅤ
これは比較的分かりやすい話で、当たり前と考えられるかもしれません。
ㅤ
しかし、今回の記事に書いたようなケースは違います。
ㅤ
業態を大別すれば同じ「居酒屋」です。
どちらもお酒や料理を提供し、お客さんが店内で飲食するわけです。
ㅤ
それでも、価格帯が変わり、利用する場面が変わるだけで、立地に求められるものまで変わってくるのです。
ㅤ
ㅤ
高価格なお店になるほど、「この店に行きたい」という目的を持って来店する比率が高まりやすい。
一方、低価格居酒屋になるほど、「とりあえずどこかで飲みたい」という需要を拾うことが重要になります。
ㅤ
つまり、違うのは「提供している商品だけではない」ということなのです。
ㅤ
お客さんが「店を選ぶタイミング」までもが、そもそも違うのです。
ㅤ
高価格なお店では、街に到着する前に店選びが終わっていることが多い一方、低価格居酒屋では、街を歩いている最中にも店選びが行われると言えます。
ㅤ
そう考えると、後者にとって「歩いている時に自然に見えること」の価値が高くなるのは当然です。
ㅤ
ㅤ
私が過去に作成した数々の居酒屋の売上予測モデルの中でも、視界性評価は非常に重要な要因として表れました。
ㅤ
TGや動線から店舗が自然に見えるかどうかによって、売上げに大きな差が出ていたのです。
ㅤ
これは、「低価格居酒屋だから立地が大事」という単純な話ではありません。
ㅤ
価格帯が変わることで利用動機が変わり、利用動機が変わることで店の選び方が変わり、店の選び方が変わることで視界性の重要度が変わる。
そういう一連の構造として考える必要があります。
ㅤ
ㅤ
ㅤ
ㅤ
<まとめ――立地は「業態名」だけでは決められない>
ㅤ
店舗立地を分析する時、「これは居酒屋だから、こういう立地がいい」と業態名だけで考えてしまうことがあります。
ㅤ
しかし、本当はもう一段細かく見る必要があります。
ㅤ
同じ居酒屋でも、
ㅤ
客単価はいくらなのか。
どんな時に使われるのか。
一軒目なのか、二軒目なのか。
予約して来るのか、その場で決めるのか。
「この店に行きたい」と思って来るのか、「どこかで飲みたい」と思って店を探すのか。
ㅤ
こうした違いによって、同じ「居酒屋」という看板を掲げていても、求められる立地条件は変わります。
ㅤ
ㅤ
特に重要なのが、
「お客さんは、いつその店を選んでいるのか?」
という問いです。
ㅤ
店へ向かう前に選ばれているのであれば、多少見えにくくても来てもらえる可能性があります。
しかし、店の前を歩いているその瞬間に選ばれるのであれば、まず視界に入らなければ始まりません。
ㅤ
ですから、低価格居酒屋では視界性が売上げを大きく左右するのです。
ㅤ
ㅤ
これは単なる、「見える店の方が売れる」という話ではありません。(それ自体も確かにその通りではありますが)
ㅤ
価格帯が変われば、お客さんの行動が変わる。
お客さんの行動が変われば、同じような業態でも「良い立地」の条件が変わる。
ㅤ
それを撃踏まえ、店舗立地を考える時には、「何屋なのか」だけではなく、「そのお店をお客さんはどのように選ぶのか」まで考えてみてください。
ㅤ
そこまで細かく見て初めて、その店にとって本当に重要な立地要因が見えてくるのです。
ㅤ
ㅤ

