店舗開発をしていると、日々さまざまな物件情報が入ってきます。
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「駅前に空き物件が出ました」 「ロードサイドで駐車場付きの物件があります」 「以前から狙っていた商業施設に空きが出ました」
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そして、その物件が自社の業態の運用条件に合いそうであれば、現地を見に行き、商圏を調べ、売上げを予測して、出店するかどうかを検討するわけですね。
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もちろん、こうした流れ自体は店舗開発に必要な仕事です。
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しかし、私はその前に、もう一つ考えておくべきことがあると思っています。
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それは、その場所は「出店できる場所」なのか、それとも自社が「出店するべき場所」なのかを考えることです。
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この2つは、似ているようでまったく違います。
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目の前にある物件をひとつずつ評価するだけでは、とりあえずの店舗開発はできても、必ずしも「出店戦略」と言えるようにはなりません。
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本来の出店戦略では、物件を探し始める前に、「自社業態はどんな場所に出店すると成功しやすいのか」を明らかにしておく必要があるのです。
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<「良い物件が出た」から考え始めていないか>
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例えば、不動産会社からこんな物件を紹介されたとします。
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駅から近い。 1階にある。 間口も広い。 建物の形も悪くない。 家賃も想定範囲内。
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これだけ見ると、かなり魅力的な物件に思えます。
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すると当然、「これは良い物件だから出店できないだろうか」というところから検討が始まりますね。
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しかし、ここにはひとつ大きな問題があります。
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それは、その物件が存在している(出てきた)ことを起点に、出店を考えていることです。
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少し分かりにくいかもしれないのですが、本来は「逆」が理想です。
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まず、
「自社の業態は、どんなマーケットで成立するのか」
「どんなお客さんがいる場所で強いのか」
「どんなTGや動線との関係が重要なのか」
「どの程度の接近容易性や知覚突出性が必要なのか」
「どんな競合環境なら戦いやすいのか」
といった、自社の業態にとって必要な立地条件を捉えます。
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そして、その条件に合うエリアを探し、その中から物件を探していくのです
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こちらが本来・・・・というよりも、戦略的に店舗を増やしていくために外せない順序です。
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つまり、
物件 → 出店を考える
ではなく、
出店戦略 → エリア → 物件
という順番で考える必要があるということです。
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目の前にある物件の中から選んでいる限り、どれだけ丁寧に物件を比較しても、それは結局「出てきた選択肢の中で一番良いもの」を選んでいるにすぎません。
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自社にとって本当に出すべき場所が、その選択肢の外側にある可能性もあるのです。
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<まず「自社業態が勝ちやすい立地」を定義する>
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では、物件を見る前に何を考えればいいのでしょうか。
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ここで立地理論が役に立ちます。
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弊社では、店舗立地を考える際、大きく、
①商圏規模
②商圏の質
③接近容易性
④知覚突出性
⑤土地・建物制約
⑥競合制約
という六大立地要因で捉えています。
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重要なのは、この6項目を使って「自社の業態では、どの立地要因がどの程度必要なのか」を考えることです。
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例えば、「マーケットサイズ」を考えてみましょう。
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ここで言う「マーケットサイズ」とは、単純な人口の多さではなく、その街にどの程度の商業集積があり、どれだけの購買力が存在するのかという「商圏規模」の話です。
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ある業態では、流入の大きいマーケットでなければ十分な売上げを確保しにくいかもしれません。
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それなのに、住宅街のような小さなマーケットの駅前に、「1階・駅近・間口も広い・家賃も安い」という物件が出たとしても、どうでしょうか。
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確かに、物件単体では非常に魅力的です。
しかし、そもそもその街のマーケットサイズが自社業態の成立条件を満たしていないのであれば、「良い物件だから出す」という発想自体を疑った方がいいわけです。
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これは当然、その反対もあります。
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小さなマーケットでも十分成立する業態なのに、
「乗降客数が多い駅」 「大きな繁華街」 「駅前一等地」
ばかりを探していたら、必要以上に高い家賃を払い続けることになるかもしれません。
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「商圏の質」についても同じです。
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オフィスワーカーとの相性が良いのか。
住宅地のファミリー層との相性が良いのか。
広域から集まる買い物客との相性が良いのか。
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業態によって、マッチする商圏は違います。
どんな質が、売上げにどんな影響を与えるのか、押さえておく必要があります。
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さらに、接近容易性や知覚突出性、競合制約などについても、同様に自社業態ごとに重要度は異なります。
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つまり、「良い立地」という絶対的な場所が存在するのではなく、自社業態にとって必要な条件を満たしている場所が、「出すべき立地」と言えるわけなのです。
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このことを軽視して、一般的な発想での「良い立地」ばかりを追い求めてしまうと、失敗を繰り返したり機会損失に繋がってしまったりということになります。
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<成功店と失敗店から「出すべき場所」を見つける>
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では、自社にとって必要な立地条件をどうやって見つければいいのでしょうか。
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すでに複数店舗を展開している企業であれば、非常に重要な材料があります。
それは、それまでに出店してきた「既存店」の存在です。
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これだけ聞くと、何を当たり前のことを言っているのかと思われるかもしれませんが・・・・
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では、例えばですが、
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売れている店舗は、どんなマーケットにあるのか。
売れていない店舗は、どんなマーケットにあるのか。
商圏規模はどう違うのか。
商圏の質はどう違うのか。
TGや動線との関係はどう違うのか。
接近容易性や知覚突出性に共通点はないか。
競合店との関係はどうなっているのか。
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こうしたことを、しっかり把握しているでしょうか。
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こうして既存店を比較していくと、「自社はこういう立地では強い」という傾向が見えてきます。
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なお、ここで大切なのは、繁盛店だけを見ることではありません。
失敗した店舗(不振店)も、見て見ぬふりをしないことが重要です。
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例えば、
「マーケットサイズがこの水準を下回ると急に売上げが厳しくなる」
「このタイプのTGとの関係が弱い店舗は売れにくい」
「競合がこの条件になると売上げへの影響が大きい」
といったことは、成功店と失敗店の両方を比較することで初めて見えてくるものだからです。
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つまり、既存店の成功と失敗は、単なる過去の結果ではありません。
次の出店先を決めるためのデータなのです。
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<出店戦略とは「探さない場所」を決めることでもある>
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出店戦略を作ることには、もうひとつ大きな意味があります。
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それは、「検討しなくていい物件を増やせること」です。
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店舗開発というと、「より多くの物件情報を集めること」が重要だと思われがちです。
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もちろん情報量は必要です。
しかし、100件の物件情報が来て、その100件すべてを詳しく調べなければならない状況では、あまりに非効率すぎます。
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しかし、
「このマーケットサイズでは出さない」
「このタイプの商圏では出さない」
「この立地条件を満たさない物件は検討しない」
というような基準があり、100件のうち80件を早い段階で除外できるようになったら、店舗開発の生産性が大きく変わることになります。
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このことを踏まえると、出店戦略とは、「どこに出すか」を決めることと同時に、「どこには出さないか」を決めることでもあるのです。
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なお、これは、単に店舗開発担当者の手間を減らすというだけの話ではありません。
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個人の労力削減としての価値だけでなく、会社組織として判断基準が明確になるという価値もあるのです。
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なぜこの物件を見送ったのか。
なぜこのエリアを重点的に探しているのか。
なぜ一見良さそうな駅前物件に出店しないのか。
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それを、「担当者の感覚」ではなく、「自社の成功確率を高めるための出店戦略」として共有できるようになります。
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さらに、自社が狙うべきエリアが分かっていれば、店舗開発そのものも「待ち」から「攻め」に変えることができます。
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つまり、空き物件の情報が来るのを待つのではなく、
「このエリアに出したい」
「この動線上を狙いたい」
「この条件を満たす物件が出たら検討したい」
と、先に狙いを定められるからです。
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物件情報に振り回される店舗開発から、自社の戦略に合わせて物件を探す店舗開発へ変わるわけです。
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<まとめ―「良い物件」ではなく「自社が出すべき物件」を探す>
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店舗開発では、どうしても目の前の物件に意識が向きます。
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駅から近い。
1階である。
間口が広い。
家賃が安い。
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こうしたことは、確かにどれも重要な情報です。
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しかし、それらはすべて、「そもそもこの場所は、自社が出すべき場所なのか」という問いの後に来るものです。
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各種の立地要因を既存店の成功・失敗と照らし合わせながら、自社が勝ちやすい立地条件を明らかにしてあることが前提です。
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そして、
出店戦略 → エリア → 物件
という順番で考えるようにしてください。
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そうすれば、物件情報が来るたびに、「この物件、出せるかな?」と考える必要はなくなります。
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なぜなら、先に「出すべき場所」が分かっているからです。
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「出せる場所」と「出すべき場所」は違います。
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良い物件をたくさん探すことが、出店戦略なのではありません。
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自社にとって探すべき場所と、探さなくていい場所を先に決めることこそが、立地から考える出店戦略の第一歩なのです。
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