お店を出店したいと思っても、希望する場所に都合よく空き物件があるとは限りません。
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しかし、だからといって、今空いている物件の中から無理に出店先を決めるべきではありません。
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なぜならば、「出店できる物件」と「出店すべき物件」は、まったく別のものだからです。
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店舗を増やすことは事業拡大の手段であって、目的そのものではありません。
立地条件が悪く、十分な売上が見込めないのであれば、出店しないという判断も必要です。
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そして、本来の店舗開発とは、空いている物件の中から選ぶことではなく、自社が出店すべき場所を主体的に探していくことなのだということを、忘れないでください。
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<「空いている物件」から選ぶことの落とし穴>
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店舗を出店しようとするとき、多くの人が最初に行うのは、インターネットや不動産業者を通じた物件探しではないでしょうか。
希望するエリアや賃料、面積などの条件を伝え、紹介された物件を見に行くといったプロセスですね。
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もちろん、それ自体が悪いわけではありません。
ただし、ここには一つ、大きな落とし穴があるのです。
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それは、紹介される物件は、基本的に「今、借りることができる物件」だということです。
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そもそも、商売に適した立地条件の良い物件は、すでに他の店舗が営業していることも多く、なかなか空きません。
空いたとしても、一般に情報が出回る前に次の借り手が決まってしまうこともあります。
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そのため、現在募集されている物件だけを見ていても、本当に出店したい場所が候補に入ってこない可能性があるのです。
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そして、もう一つ問題があります。
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それは、紹介された物件の中から選ぼうとすると、いつの間にか判断基準が変わってしまうことです。
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本来であれば、
「この物件は、自社が出店すべき立地なのか?」
といった考え方で判断をする必要があります。
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ところが、紹介された物件をいくつも見ているうちに、
「この中だったら、どれが一番良いだろう?」
という相対的な比較になってしまうのです。
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例えば、紹介された5件の物件が、立地条件としてそれぞれ30点、40点、50点、55点、60点だったとします。
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この場合、5件の中では60点の物件が一番良いでしょう。
しかし、だからといって、その60点の物件が本当に出店に適しているとは限りません。
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仮に、その業態で十分な売上を確保するには70点以上の立地条件が必要だと分かっているのであれば、本来は5件とも出店を見送るべき候補です。
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それにもかかわらず、紹介された物件の中で最も良いという理由だけで60点の物件を選んでしまうことが、実際の店舗開発の現場ではよく発生してしまいます。
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それは、「候補物件の中で最も良いこと」と「出店する価値があること」を混同しているのです。
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(※ここでの点数は考え方を説明するための例示であり、実際の出店基準を示すものではありません。)
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<出店すること自体が目的になっていないか>
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特にチェーン企業の場合、出店を進めなければならない事情もあるでしょう。
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年間の出店目標が決まっている。
新しいエリアへの進出計画がある。
事業を成長させるために、店舗数を増やしていきたい・・・・
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など、そうした事情は十分に理解できます。
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しかし、ここで考えていただきたいことがあります。
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それは、店舗数を増やすことと、会社の利益を増やすことは、必ずしも同じではないということです。
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業種業態にもよりますが、新規出店には、多額の初期投資が必要です。
物件取得費用、内装工事費、設備費、採用費、開業準備費など、さまざまなコストがかかります。
そして出店後にもまた、家賃や人件費などの継続的な費用が発生します。
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当然ながら、それらのコストを回収できるだけの売上と利益を確保できなければ、出店した意味がありません。
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むしろ、赤字店舗を一つ増やしてしまえば、会社全体の経営を圧迫することにもなります。
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それなのに、
「今期はあと3店舗出店しなければならない」
「なかなか良い物件が見つからない」
「もうこの物件で決めてしまおう」
というような流れで出店を決めてしまったら、どうでしょうか。
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本来、出店するかどうかを判断するために立地調査や売上予測を行うはずなのに、出店することが先に決まってしまっているというのでは、順序が逆になってしまっています。
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基本的に私は、出店して赤字になる可能性が高いのであれば、出店しない方がよいと考えています。
(一部例外的に、赤字を覚悟で出店するべき時もあります。それは「出店戦略」というより長期的・マクロ的視点で見た時に発生します)
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もちろん、すべての店舗が開業直後から黒字になるとは限りませんし、戦略的な出店には短期的な利益以外の目的がある場合もあるでしょう。
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しかし、そうした事情を踏まえたうえでも、十分な売上が見込めない立地に無理をして出店することを正当化してよいわけではありません。
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出店目標を達成することよりも、出店した店舗を成功させることの方が重要なのです。
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当たり前と言えば当たり前に聞こえるかもしれませんが、これが意外と見落とされてしまうのが、現実の店舗開発です。
全国チェーンであっても個人での開業であっても起き得る落とし穴なのです。
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<100点満点の物件を待つのではなく許容条件を明確にする>
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では、理想的な物件が空くまで、いつまでも待ち続ければよいのかというと、もちろん、そういう話でもありません。
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そもそも、自分にとって100点満点の物件に出店できる機会など、そう簡単に訪れるものではないですから。
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だからこそ大切なのは、どこまでなら妥協できて、どこから先は妥協してはいけないのかを、あらかじめ明確にしておくことです。
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私が物件探しについていつもお伝えしているのは、まず出店したい街を自分の足で歩き、空いているかどうかに関係なく、理想的な立地条件を考えてみるということです。
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例えば、
「この通りの、この動線上に出店したい」
「この交差点付近なら、車での接近容易性が高い」
「この範囲なら、店前の人通りを十分に取り込める可能性がある」
といった具合です。
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その上で、理想の条件をすべて満たせない場合に、何を優先し、何を譲れるのかを考えるのです。
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例えば、
「主要な動線から多少外れても、十分な視界性を確保できるなら検討する」
「この範囲の動線上なら空中階でもよいが、それ以外なら路面店でなければ出店しない」
といった判断ですね。
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こうして条件を明確にしておけば、紹介された物件を見た時に、単になんとなく良さそうかどうかではなく、自分の出店基準に合っているかどうかで判断できます。
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そして、立地条件だけでなく、その物件でどれくらいの売上が見込めるのか、賃料やその他のコストを踏まえて採算が成立するのかまで検討することできます。
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立地条件が理想より劣っていても、賃料などの条件によっては出店を検討できる場合があるでしょう。
逆に、いくら賃料が安くても、必要な売上が見込めない立地であれば、安さだけを理由に出店すべきではありません。
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重要なのは、妥協すること自体が悪いのではなく、何を妥協してよいのか分からないまま、出店を決めてしまうことが問題だということです。
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<「受け」の店舗開発から「攻め」の店舗開発へ>
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私は以前から、店舗開発には「受け」と「攻め」の2つの考え方があると説明しています。
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「受け」の店舗開発とは、不動産業者などから提示された空き物件を一つひとつ検討し、その中から出店先を選ぶ方法です。
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この方法では、どうしても現在空いている物件が出店候補の中心になります。
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一方、「攻め」の店舗開発とは、自社が出店したいエリアや物件を先に明確にし、そこへ出店できる機会を主体的に探していく方法です。
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例えば、出店したいエリアを実際に調査し、現在営業している店舗も含めて、立地条件の良い場所を把握しておきます。
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その上で、
「この物件が空いたら出店を検討したい」
「この通りの、この範囲で物件を探している」
という情報を不動産業者へ伝えておくのです。
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もちろん、希望する物件が必ず空くとは限りません。
しかし、最初から狙うべき立地を明確にしておけば、条件に合わない物件に時間を費やす必要も減りますし、希望する物件が空いたときには、速やかに出店の検討を進めることができます。
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そして、チェーン企業であれば、既存店舗の売上と立地条件を分析することで、さらに踏み込んだ出店戦略を立てることも可能になります。
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自社の店舗がどのような立地条件で売れるのか。
どのエリアに出店余地があるのか。
どのような条件の物件なら、どの程度の売上が期待できるのか。
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こうしたことが分かっていれば、単に空き物件を待つのではなく、利益を生み出せる可能性の高い場所を計画的に狙っていくことができます。
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これこそが「攻め」の店舗開発です。
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<出店しないという判断も立派な店舗開発である>
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店舗開発の仕事というと、新しい店舗を出店させることに目が向きがちです。
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しかし、私はそれだけが店舗開発の仕事だとは考えていません。
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出店すべき物件を見つけることと同じくらい、出店してはいけない物件を見極めることも重要な仕事です。
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立地調査をした結果、
「この物件では必要な売上が見込めない」
「この条件では採算が成立しない」
という結論になったのであれば、その物件への出店を見送ることにも十分な価値があります。
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なぜなら、その判断によって、将来の赤字や多額の投資損失を回避できる可能性があるからです。
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良い物件が空いていないからといって、悪い物件に出店しなければならない理由はありません。
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そもそも、空いているかどうかは物件の募集状況であって、その立地で商売が成立するかどうかとは別の問題です。
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「空いているから出店する」のではなく、「出店すべき立地だから、空く機会を探す」。
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この順序を間違えないことが、出店失敗のリスクを減らし、長期的に店舗数を増やしていくための重要な考え方なのです。
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