「この場所は、1日に1万人もの人が通ります」
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店舗物件を探していると、こんな説明を受けることがあります。
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1万人と聞けば、かなり人通りが多い場所に感じるでしょう。
実際、店舗立地を考えるうえで、物件周辺をどれだけ多くの人が行き来しているかは重要な要素のひとつです。
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しかし、ここでひとつ考えてみてください。
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その1万人は、毎日ほとんど同じ1万人なのでしょうか。それとも、毎日かなり違う1万人なのでしょうか。
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例えば、住宅地の駅前を毎朝通る1万人と、観光地を訪れる1万人をイメージしてください。
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1日の通行量だけを見れば、どちらも同じ「1万人」です。
しかし、その人たちとお店との関係はまったく違うものになってきます。
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そして、この違いは単に「リピーターを取りやすいか、新規客を取りやすいか」という商売上の違いだけではありません。
人の入れ替わり方が違えば、重要になる立地要因そのものが変わってくるのです。
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<毎日1万人いても「同じ1万人」と「違う1万人」は違う>
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例えば、オフィス街を考えてみましょう。
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そこを歩いている人の多くが周辺企業の従業員であれば、平日はかなりの人通りがあったとしても、毎日通っているのはおおむね同じ人たちです。
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住宅地の駅前も似ています。
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朝になれば住民が駅へ向かい、夕方になれば駅から自宅へ帰っていく。同じ生活動線を、同じ人たちが繰り返し利用します。
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一方、観光地や繁華街ではどうでしょうか。
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もちろんリピーターもいますが、昨日来た観光客と今日来る観光客はかなり入れ替わります。
大規模なターミナル駅や、広域から人を集める繁華街なども、住宅地に比べれば人の入れ替わりは大きくなるでしょう。
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ここでお伝えしたいのは、どれが「最も良い立地」かという話ではありません。
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人が固定されている場所と、人が入れ替わる場所では、売上げを作る構造が違うということです。
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例えば、毎日1万人の通行量がある場所が2つあったとします。
A地点では、毎日ほぼ同じ1万人が通る。
B地点では、人がどんどん入れ替わり、多くの異なる人が通る。
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この2つの地点は、1日だけ通行量調査をすれば、どちらも「1万人」です。
しかし、お店が1ヶ月間に接触できる実人数はまったく違います。
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毎日同じ人が通る場所では1ヶ月経っても同じ1万人ですが、毎日違う人が通る場所ならば、(単純計算で)30万人と接触できるということです。
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なお、ここでさらに重要視しておきたいのは、その違いによってお店が立地に求めるべき条件まで変わってくるということです。
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<同じ人が繰り返し来る立地では「再来店のしやすさ」を見る>
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毎日ほぼ同じ人たちが行き来する場所では、一度利用したお客さんに、繰り返し利用してもらうことが売上げを作るうえで重要になります。
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住宅地の飲食店やスーパー、クリーニング店などを考えると分かりやすいでしょう。
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商圏内にいる人の数には限りがあります。
そのため、一度だけ利用してもらって終わるのではなく、「また来よう」と思ってもらうことが重要であるわけです。
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ただし、ここで話を「だからリピーターを増やしましょう」で終わらせてしまうと、これはマーケティングや店舗運営の話になってしまいます。
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立地の観点から考えるなら、もう一歩先まで考える必要があります。
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つまり、そのお客さんが「また来よう」と思ったときに、本当にまた来やすい場所に店があるのかというところが、立地からの観点です。
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ここで重要になるのが、立地要因でいう接近容易性です。
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例えば駅から自宅へ帰る途中にある店なら、仕事帰りに自然に立ち寄ることができます。
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反対に、駅から自宅への動線とは逆方向にあり、わざわざ道路を渡り、少し遠回りしなければならない店だったらどうでしょうか。
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料理がおいしかった。
接客も良かった。
「また行きたい」と思っている。
それでも、日常生活の中で利用するには少し面倒です。
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一回なら「わざわざ行く」ことができても、それを週に何度も、月に何度も繰り返すとなると、その小さな面倒が効いてきます。
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これは車で利用する店でも同じです。
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駐車場に入りにくい。
反対車線から右折しなければならない。
店から出た後、目的地とは逆方向にしか出られない。
こうした小さな不便は、一度きりの利用ではそれほど大きな問題にならなくても、利用回数が増えるほど積み重なります。
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つまり、リピーターが重要な商売ほど、「繰り返し接近しやすいこと」の価値が高くなるということです。
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同じ人が何度もその地域を利用する立地を見るなら、「人が多いか」だけではなく、その人たちの日常の動線の中に、無理なく店が組み込まれているかという視点が重要になるのです。
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<違う人が次々に来る立地では「一回で気づかれるか」を見る>
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では、大きな繁華街や観光地など、人が次々に入れ替わる場所ではどうでしょうか。
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こちらでは、立地を見るポイントが変わります。
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昨日店の前を通った人が、今日も通ってくれるとは限りません。
観光客なら、その場所を訪れるのは今日一日だけかもしれません。
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その人がお店の存在に気づかなかったとしても、「明日また通るから、そのとき気づいてもらえばいい」とはいかないのです。
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つまり、人の入れ替わりが大きい立地では、一回の接触機会を取りこぼさないことの重要性が高くなります。
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ここで重要になってくるのが、視界性や知覚突出性です。
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例えば、観光客があるTG(観光スポット等)から発生し、自店の前を通る動線ができていたとします。
それだけを見れば、一見すると良い立地です。
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しかし、その人たちからお店が見えていなかったらどうでしょう。
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建物の陰に隠れている。
看板が周囲の看板に埋もれている。
店舗の間口が小さく、存在に気づきにくい。
看板は見えているけれど、一瞬では何の店なのか分からない。
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こうした状態では、せっかくお店の前を大勢の人が通っていても、その人たちを十分に取り込むことができません。
しかも、その人たちが毎日違う人であるほど、「次のチャンス」は期待しにくくなります。
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毎日同じ人が通る場所なら、今日気づかなかった人が明日気づく可能性があります。
一週間後に「あそこに店があったな」と思い出してもらえるかもしれません。
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しかし、一度しか来ない人に対しては、その一回が勝負です。
だからこそ、人が次々に入れ替わる立地ほど、「その場で知覚されること」の価値が高くなるというわけです。
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これは、先ほどの接近容易性との対比で考えると分かりやすいでしょう。
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同じ人が繰り返し来る場所では、「また利用しようと思ったときに、繰り返し接近しやすいか」を見る。
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人が次々に入れ替わる場所では、「初めて通ったその一回で、店の存在に気づいてもらえるか」を見る。
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人通りの性質が変わることで、立地を見るときの重点も変わってくるのです。
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<「人通りが多い」だけでは、その立地を評価できない>
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店舗立地について相談を受けていると、「人通り」という数字が一人歩きしていることがよくあります。
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確かに、人通りは分かりやすい数字です。
500人より5,000人、5,000人より1万人の方が、なんとなく良い場所に感じます。
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しかし、本来考えるべきなのは、その人たちはどこから発生し、なぜそこを通り、どこへ向かい、どのくらいの頻度で同じ場所を訪れているのかということです。
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ここで、TGや動線という考え方が重要になってきます。
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例えば駅というTG(交通発生源)から発生した人々が店前の動線を通っていたとしても、それが毎日通勤する周辺住民なのか、広域からやってくる買い物客なのか、観光客なのかによって、店との接触の仕方は違います。
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そして、ここまで考えると、「通行量1万人」という数字だけでは、その立地の価値を十分に説明できないことが分かるでしょう。
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毎日ほぼ同じ1万人なら、その人たちが繰り返し利用しやすい立地なのかを見る。
毎日かなり違う1万人なら、その人たちに一度の接触で気づいてもらえる立地なのかを見る。
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つまり、人の入れ替わり方を知ることは、単に客層を理解するためではありません。
「その立地では、何を重点的に評価するべきなのか」を決める材料になるのです。
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<まとめ――人の入れ替わり方で「重要な立地要因」も変わる>
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店舗立地を考えるとき、人口や通行量など「人数」に目が向くのは当然です。
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しかし、同じ1万人でも、その1万人が毎日ほぼ同じ人なのか、次々と違う人に入れ替わっているのかでは、意味が違います。
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そして、その違いは商売の仕方だけではなく、重要になる立地要因の違いにもつながります。
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同じ人が繰り返し利用する地域なら、リピーターになってもらうことが重要になる。
だからこそ立地を見るときには、日常の動線に自然に組み込まれ、何度でも利用しやすい接近容易性が重要になります。
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一方、人が次々に入れ替わる地域なら、一度しかないかもしれない接触機会を取りこぼさないことが重要になる。
だからこそ、店が自然に視界に入り、その存在をきちんと知覚してもらえる視界性や知覚突出性の重要度が高くなります。
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もちろん、実際の店舗立地は一つの要因だけで決まるものではありません。
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住宅地だから視界性を考えなくていいわけでもありませんし、観光地なら接近容易性を無視していいわけでもありません。
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大切なのは、立地によって、それぞれの要因の「重み」が変わるということです。
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これらを踏まえ、今後、人通りを見るときには、
「ここには何人いるのか?」
だけで終わらせないようにすることをお勧めいたします。
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その次に、
「その人たちは、毎日同じ人なのか?」
と考えてみる。
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そしてさらに、
「その人たちの動き方なら、この店ではどの立地要因がより重要になるのか?」
まで考えてみる。
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同じ「人通り1万人」という数字でも、そこまで分解して見れば、まったく違う立地に見えてくるはずです。
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