店舗開発の仕事は、非常に属人化しやすい仕事です。
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「この物件ならいけると思う」
「この商圏は少し弱い」
「数字は悪くないけれど、この場所はやめておいた方がいい」
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などなど、経験豊富な店舗開発担当者であれば、現地を見ただけでこうした判断ができることがあります。
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ここでの問題は、その判断が正しいかどうかではありません。
むしろ長年の経験から生まれた「経験と勘」は、非常に価値のあるものです。
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問題となるのは、なぜそう判断したのかを、その人以外が説明できないことの方なのです。
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その担当者が判断した理由・根拠が分からなければ、社内の他のメンバーにそれを共有することができません。
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ということは、その担当者の判断が正しければ正しいほど、店舗開発の業務がその担当者個人に依存してしまうことになりかねません。
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これが、「属人化」です。
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大なり小なりどんな企業でも属人化している部分はあれども、その領域が大きいほどに、企業にとってはリスクも大きいということになります。
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なぜなら、当然ですが、個人に依存しているということは、その人が退職してしまった場合に、代わりとなる人材がいなくなってしまうからです。
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店舗開発で言えば、ある担当者個人が独自のやり方で店舗開発をして成功していた場合、その人がいなくなってしまったら、その企業はその後出店を成功させることが非常に難しくなるでしょう。
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そのリスクを思えば、なるべく多くの技術・ノウハウが、属人化を解消して、社内に広く共有されるようになるべきです。
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なお、店舗開発の属人化を解消するために必要なのは、経験や勘をなくすことではありません。
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ベテラン担当者が経験の中で身につけてきた判断を言語化・数値化し、既存店舗のデータと照合しながら、会社として共有できる「出店判断の基準」に変えていくことなのです。
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<「経験と勘」で出店すること自体が悪いわけではない>
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店舗開発に長く携わっている人は、実に多くのことを見ています。
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それは、駅の乗降客数や商圏人口といった分かりやすい数字だけではありません。
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店がどこから見えるのか。
車や人がどのように店へ近づくのか。
道路の反対側から入りやすいのか。
周辺にはどんな施設があり、どんな人が動いているのか。
競合店はどこにあり、どのように商圏を分け合っているのか・・・・
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など、こうした情報を一つひとつ意識的に計算しているわけではなくても、長年多くの店舗を見てきた人ほど、複数の情報を瞬時に組み合わせて判断できるようになります。
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それが「経験と勘」と呼ばれているものの正体です。
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したがって、店舗開発を科学的にしようとして、
「これからは経験や勘に頼るのをやめて、すべてデータで判断しよう」
と考えるのも、私は少し違うと思っています。
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経験の中には、データだけでは簡単に捉えられない重要な情報が含まれているからです。
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一方で、会社が20店舗、30店舗、50店舗と拡大していけば、一人の優秀な担当者だけに出店判断を任せ続けることにも限界がきます。
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そこで必要になるのが、経験と勘の中身を明らかにすることなのです。
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<ベテランは「何を見て」良い立地と判断しているのか>
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例えば、ベテランの店舗開発担当者が、ある物件を見て、「ここは立地が良い」と判断したとします。
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大切なのは、ここで「そうなんだ、この人が言うならそうなんだろう」と終わらせてはいけないということです。
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そこから、「なぜこの人は良いと思ったのだろう」を分解していく作業が必要なのです。
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私たちの立地理論では、店舗の売上に影響する立地要因を大きく、
「商圏規模」
「商圏の質」
「接近容易性」
「知覚突出性」
「土地・建物制約」
「競合制約」
という6つの観点から考えています。
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例えば「なんとなく入りやすそうな店だ」と感じたのであれば、そこには道路から駐車場への進入のしやすさ、進行方向、交差点との位置関係など、「接近容易性」に関する何らかの要因が存在するかもしれません。
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また、「この店は目立つ」と感じたのであれば、単純な見え方だけではなく、看板の位置、建物の向き、道路から認識できる時間、周辺建物との関係など、「知覚突出性」に関する複数の要因が影響している可能性があります。
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つまり、「良いと思う」「悪いと思う」という判断を、そのままただの経験則として残すのではなく、「何を見て、何を根拠として、その判断に至ったのか」まで分解していくのです。
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ここまでできると、個人の感覚だったものが、会社として共有できる情報に変わり始めます。
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<既存店舗は会社にとって最大の「実証データ」である>
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そして、店舗数が増えてきた企業には、もう一つ大きな資産があります。
それが既存店舗そのものです。
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10店舗、20店舗、30店舗と出店してきたのであれば、その会社はすでに何度も「立地の実験」を行っていることになります。
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売れている店もあるでしょう。
平均的な店もあるでしょう。
期待ほど売れなかった店も、当然あるかもしれません。
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では・・・・それぞれの店舗について、
・どのくらいの商圏規模だったのか
・どんな人が住んでいたのか
・駅からどの程度離れていたのか
・どのような道路に面していたのか
・お店はどの程度認識しやすかったのか
・競合店はどこに存在していたのか
といったことは、どれくらい検証できているでしょうか。
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こうした立地条件と実際の売上を照らし合わせていけば、その会社の店舗が売れるときに共通している条件が見えてきます。
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ここが非常に重要です。
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「一般的に良い立地」と「自社にとって良い立地」は、必ずしも同じではありません。
同じ業態であっても、企業によってブランド力も違えば、客単価も違います。商品の構成も違いますし、来店目的や利用頻度も違います。
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したがって、A社の繁盛店と同じような場所へ出店すれば、B社も繁盛するとは限らないのです。
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もちろん、店舗数が少ない段階では、一般的な立地理論や経営者・店舗開発担当者の経験に頼らざるを得ない部分があります。
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しかし店舗数が増えてくれば、自社の既存店データから、「自社の場合、何が売上を左右しているのか」を分析できるようになります。
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経験と勘を言語化することに加えて、そうやって実際の既存店データによる検証を組み合わせることで、出店判断は初めて「会社のノウハウ」になっていきくのです。
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<属人化解消のゴールは「誰でも同じ判断をすること」ではない>
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店舗開発の属人化を解消するというと、「誰が担当しても同じ答えが出る仕組みを作る」ことだと思われるかもしれません。
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もちろん、担当者によってあまりにも大きく判断がバラついてしまうようではいけませんが、しかし、私はそれが最終的なゴールだとは考えていません。
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立地には、数字だけでは判断できないことがたくさんあります。
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同じ商圏人口でも、人の動き方は違います。
同じ道路交通量でも、店舗への入りやすさは違います。
同じ駅乗降客数でも、自店の前を通る人の量や性質は違います。
現地へ行かなければ分からないこともあります。
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どんなに高精度に、数字上の基準を作ったとしても、必ず現実はそれを超えてきます。
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そんな時に、「社内の基準ではこうなっているんだから」と一律に合わせようとするのではなく、「売上予測モデルではこう算出されたけど何か見落としがあるような気がする」と言えるのは、個々人の経験によるところです。
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だからこそ、優秀な店舗開発担当者は必要なのです。
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ただし、その担当者が会社独自の判断基準を持ち、データを正しく読み、現地で確認すべきポイントを理解している状態と、
ただ「Aさんは経験豊富だから、Aさんに聞けば分かる」と依存してしまっている状態はまったく違います。
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前者であれば、新しい店舗開発担当者を育てることができます。
担当者同士で物件について議論することもできます。
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「私は良いと思う」「私は悪いと思う」という感覚のぶつけ合いではなく、
「この物件は接近容易性では優れているが、知覚突出性に問題がある」
「商圏規模は十分だが、自社の既存店データを見る限り、このタイプの競合環境では売上が伸びにくい」
といった形で議論できるようになります。
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そして何より、優秀な店舗開発担当者が異動したり退職したりしても、その人が長年蓄積してきた知識まで会社から消えてしまうことを防げます。
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店舗開発の属人化を解消する本当の目的は、人を不要にすることではなく、人が持っている優れた判断力を会社の資産に変えることなのです。
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これまで出店してきた店舗は、単なる過去の実績ではありません。
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その一店舗一店舗に、「なぜ売れたのか」「なぜ売れなかったのか」という情報が蓄積されています。
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そこにベテラン担当者が培ってきた経験を重ね、言葉にし、数字にし、検証することで、個人の「経験と勘」は失われるのではなく、より再現性の高い会社独自の出店ノウハウへと進化していくのです。
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