新規出店をする際、基本的には「売上予測」を行います。
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既存店の実績や商圏データ、物件の条件などをもとに、「この場所なら月商○○万円くらいだろう」と予測するわけです。
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ただ、実際に出店してみると、予測に近い売上げになる店舗もあれば、大きく上振れする店舗も、反対に大きく下振れする店舗もあります。
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たとえば、
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・予測月商⇒1,000万円
で、
・実績月商⇒600万円
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であれば、つまり「400万円も外れてしまった」ということになります。
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そして、こうなると、
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「売上予測の精度が低かった」
「分析を間違えたのではないか」
「誰がこの数字を出したんだ」
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という話になりがちです。
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もちろん、予測が外れた原因を検証することは必要です。
しかし私は、こうした店舗を単なる「予測の失敗」として処理してしまうのは、非常にもったいないと思っています。
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なぜなら、売上予測が大きく外れた店舗には、「自社がまだ理解できていない売上要因」が隠れている可能性があるからです。
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<「当たった店」より「大きく外れた店」に注目する>
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概ね30店舗を超えたチェーン企業で作ることが推奨される「売上予測モデル」は、基本的には既存店の売上げと立地条件との関係から作っていきます。
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たとえば、商圏規模が大きいほど売上げが高くなる。
あるいは、特定のTGとの位置関係が売上げに影響する。
競合店が一定の条件で存在すると売上げが下がる。
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そうした既存店の傾向を分析し、新しい物件の立地条件を当てはめることで、「この店ならこれくらい売れるだろう」という予測値を出すのです。
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もちろん、売上げというものは立地だけで100%決まるわけではありません。
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商品、価格、サービス、販促、オペレーションなど、さまざまな要因が影響します。
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本来、チェーン企業においてはこうしたお店の営業内容についてはフォーマットが統一されていることが望ましいとされますが、現実には、個店ごとに少しずつ調整をすることが多いと考えられます。
(地域のニーズに応じて品揃えや単価を変える等)
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そういうこともあり、どんな精度の高いモデルを作っても、売上予測が完全に一致することはなかなか難しいと言えます。
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ただそれでも、しっかり理に適った分析を実施すれば、大きく外れることはほとんどなくなります。
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ただ、それでも百発百中とは言えません。
必ずどこかで、大きく外れることがあります。
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たとえば、
A店 予測980万円 → 実績1,010万円
B店 予測1,020万円 → 実績990万円
C店 予測1,000万円 → 実績600万円
だったとします。
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A店やB店については、現在使っている立地要因によって、かなりうまく売上げを説明できていると言えます。
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しかし、C店だけは違うようです。
現在把握している立地条件から考えれば1,000万円程度売れるはずなのに、実際には600万円しか売れていないという結果になっています。
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ということは、
「今の分析では捉えられていない何かが、この店舗にはあるのではないか?」
と考えることができます。
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売上予測モデルを運用していると、こうした大きな予測外れはどうしても発生します。
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しかし、その外れを単なる「失敗」と見るのか、それとも新しい立地要因を発見する手がかりと見るのか。
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ここで、その後の立地分析力に大きな差が生まれます。
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<予測と実績の「差」に、まだ知らない立地要因が隠れている>
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予測では1,000万円だったのに、実績が600万円だった。
逆に、予測800万円だった店舗が、実際には1,200万円売れた。
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中長期的に盤石な立地戦略を構築するためには、こうした予測と実績の差が大きい店舗に注目することが重要です。
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なぜ、この店だけ予測より大幅に売れなかったのか。
あるいは、
なぜ、この店だけ予測以上に売れたのか。
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そこで改めて現地を見たり、地図や写真を確認したり、他店と立地条件を比較したりしていくと、これまで分析項目として扱っていなかった要因が見つかることがあります。
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たとえば、視界性の評価が十分ではなかったのかもしれない。
TGとの関係について、これまでとは違う見方が必要なのかもしれない。
あるいは、競合制約について、それまで考慮していなかった条件が影響している可能性もあります。
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なお、重要なのは、最初から答えを決めつけないことです。
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「きっとこうだったのだろう」と思い込まず、「現在の立地分析では説明できない差がある」という事実を出発点にして、その理由を探していくのです。
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私たちが使っている立地理論も、もちろん、最初からすべての要因が分かっていたわけではありません。
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実際の店舗を分析し、「なぜこの店だけ外れたのだろう?」という疑問を積み重ねることで、新しい要因が見つかり、それを繰り返してノウハウを深耕してきたのです。
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つまり、予測と実績の大きな差というのは、今までの立地理論では説明できていない部分を教えてくれるサインであり、自社業態のさらなる可能性を拡げてくれるものなのです。
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<売上予測は「完成させるもの」ではなく「育てるもの」>
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売上予測モデルというと、一度精度の高いものを作れば、それをずっと使えるような印象を持つかもしれません。
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そのように誤解されている方を時々見かけますし、大手企業においても、「10年以上前に作ったモデルを未だに使用している」という場合があります。
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しかし、実際にはそれは難しいことです。
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なぜならば、立地も社会情勢も自社の状況も変化していくからです。
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商圏は流出と流入を繰り返して変動します。
新しい競合店もできます。
TGが新しくできることもあれば、なくなることもあります。
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そして何より、新しい店舗を出店すれば、その店舗の実績という新しいデータが増えていきます。
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そういったことを思えば当然、一度作った売上予測モデルをそのまま何年も使い続けるべきではありません。
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既存店の売上げが変化しているのであれば、モデルの元になっているデータも更新する必要があります。
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それこそ、「チェーン全体の売上げが平均して10%以上増えた」という時に、それ以前の売上データを使って作ったモデルで精緻な予測ができるはずもありませんね。
かといって、「平均して10%」なのであって個店ごとに上がり幅は異なりますので、古いモデルで算出された予測値に単純に10%上乗せすればいいというものでもありません。
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そういったことを鑑みて、定期的にモデルはブラッシュアップしていく必要があるわけです。
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店舗数が増えれば、その店舗も新しいサンプルとして加えることができます。
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そして、大きく予測が外れた店舗が出てきたのであれば、「なぜ外れたのか?」を調べ、新しい説明変数の可能性を検討することもできます。
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つまり、
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予測する
↓
出店する
↓
実績が出る
↓
予測との差を見る
↓
大きく外れた店舗を調べる
↓
新しい要因を検討する
↓
モデルを更新する
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というサイクルです。
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こう考えると、売上予測モデルというものの見え方も少し変わってきます。
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モデルとは、単に「新しい店の売上げを当てるための計算式」ではないのです。
出店するたびに新しい実績が増え、その結果を使って、自社の立地についての理解を深めていくための仕組みでもあります。
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<まとめ――予測が外れた店ほど、会社を賢くする可能性がある>
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売上予測は、もちろん当たるに越したことはありません。
出店には大きな投資が伴いますから、予測精度を高めることは非常に重要です。
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しかし、「予測が外れた=失敗」だけで終わらせてしまうと、その店舗から得られるはずだった重要な情報を捨てることになります。
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なぜ、予測より売れなかったのか。
なぜ、予測以上に売れたのか。
現在使っている立地要因では、何を説明できていないのか。
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その「ズレ」を追いかけていくことで、それまで気づいていなかった売上要因が見つかることがあります。
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そして、その発見を次の分析に取り入れていく。
そうやって売上予測モデルを更新していけば、出店するたびに、自社がどんな立地で売れるのかについての理解も深まっていきます。
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ですから、売上予測が大きく外れたとき、「なぜこんなに外したんだ」だけで終わらせないでほしいのです。
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むしろ、本気になって「なぜこの店だけ予測から大きく外れたのだろう?」と考え、分析をしてみてください。
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その一店舗の実績が、自社がまだ知らなかった立地の法則を教えてくれる「宝の山」になるかもしれないのです。
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