スーパーマーケットと農産物直売所。
どちらも野菜や果物を中心とした食品を販売する小売業ですが、その立地には興味深い違いがあります。
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スーパーマーケットは、住宅地の中や駅前、幹線道路沿いなど、周辺住民が日常的に利用しやすい場所に出店するのが一般的です。
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一方、農産物直売所の中には、市街地から離れた農村部や、周辺人口が決して多くない場所にありながら、多くの買い物客を集めている店舗があります。
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普通のスーパーマーケットなら出店をためらうような場所でも、農産物直売所なら商売が成り立つことがあるのです。
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これは単に、農産物直売所の方が立地条件に恵まれなくてもよい、という話ではありません。
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両者では、消費者がその店を利用する理由、すなわち「来店動機」が異なるため、求められる立地条件の優先順位も変わってくるのです。
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今回は、スーパーマーケットと農産物直売所のビジネスの違いを踏まえながら、それぞれに適した立地の考え方を解説します。
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<スーパーマーケットは「日常の買い物」を支える業態>
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スーパーマーケットの大きな特徴は、日常的に必要となる食品を、まとめて購入できることです。
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野菜や果物、肉、魚、加工食品、調味料、日用品など、幅広い商品を取り揃えています。
消費者にとっては、日々の生活に必要なものを効率よく調達できることが、スーパーマーケットを利用する大きな理由のひとつになります。
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こうした業態では、商品の品揃えや価格と並んで、「利用しやすさ」が重要な競争要因になります。
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例えば、同じような品揃えと価格のスーパーが2店舗あったとしましょう。
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一方は自宅から徒歩5分、もう一方は徒歩15分の場所にあるとすれば、日常的に利用するのは前者になりやすいでしょう。
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もちろん、品揃えや価格、品質などに大きな違いがあれば、多少遠い店が選ばれることもあります。
しかし、食品の買い物は繰り返し発生するものですから、週に何度も利用する店舗であれば、移動にかかる時間や労力の差は、積み重なるほど大きくなります。
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したがって、スーパーマーケットの立地では、周辺人口の規模だけでなく、住宅地との位置関係や、住民の日常的な行動方向を把握することが重要です。
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駅から住宅地へ帰る途中にあるのか。
周辺住民が普段から利用する道路沿いにあるのか。
自転車や自動車で無理なくアクセスできるのか。
こうした条件が、店舗の利用頻度に大きく影響するのです。
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ただし、すべてのスーパーが近隣住民だけを対象としているわけではありません。
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大型店や低価格を強みとする店舗などは、広い商圏から目的来店を集めることもあります。
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それでも、日常的な買い物を支えるという業態の基本的な性格から、生活圏との関係を無視することはできないというのが、長年スーパーマーケットの立地を分析してきての私たちの所見です。
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<農産物直売所は「そこで買う理由」を作りやすい>
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では、農産物直売所はどうでしょうか。
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農産物直売所の大きな特徴は、販売する商品そのものに、一般的なスーパーとは異なる魅力を持たせやすいことです。
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例えば、収穫したばかりの新鮮な野菜。
地元の農家が育てた、その地域ならではの農産物。
季節によって変わる旬の商品や、一般的なスーパーではあまり見かけない品種。
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こうした商品を求める消費者にとって、農産物直売所は単なる食品の購入場所ではなく、「そこに行かなければ買えないものがある場所」になり得ます。
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それを踏まえ、立地を考えるにあたって重要になるのが、「目的来店」という考え方です。
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目的来店とは、他の用事がなくても、その店舗を利用すること自体を目的として訪れることです。
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農産物直売所が独自の商品や魅力を持ち、消費者に強い来店動機を与えることができれば、多少遠くても、わざわざ訪れる人が現れる可能性があるということになります。
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つまり、周辺人口が少ない場所であっても、より広い地域から顧客を集めることで商売が成立する余地があるのです。
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もっとも、農産物直売所ならどこでも広域から集客できるわけではありません。
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販売している商品が近隣のスーパーとほとんど変わらず、価格や鮮度などにも目立った違いがなければ、消費者が遠くから訪れる理由は弱くなります。
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また、魅力的な商品があったとしても、道路から入りにくい、駐車場が不足している、店舗の存在が分かりにくいといった問題があれば、集客機会を失うでしょう。
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農産物直売所は立地が悪くても大丈夫という意味なのではなく、商品や店舗の魅力によって、立地上の不利を補える可能性がある業態であると考えるべきです。
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<同じ農産物直売所でも繁盛立地は二つに分かれる>
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なお、ここで注意したいのは、農産物直売所のすべてを同一の業態として扱ってしまうことです。
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実際には、農産物直売所の中でも異なる集客構造があります。
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1つは、近隣住民が日常的に利用する「日常利用型」の直売所です。
住宅地に近く、地元住民が普段の食事に使う野菜や果物を買いに来る店舗がこれに当たります。
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このタイプでは、スーパーと同じように、日常生活の中での利用しやすさが重要です。
いくら新鮮な野菜を扱っていても、毎日のように利用するには不便な場所であれば、顧客はより便利な店舗を選ぶ可能性があります。
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したがって、周辺住民の生活動線や、住宅地からのアクセスが立地評価の中心になります。
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もう1つは、広い地域から顧客を集める「広域集客型」の直売所です。
大型の農産物直売所や、地域の特産品を豊富に取り揃えた店舗などが代表的です。
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こちらでは、店舗そのものが買い物の目的地になります。
週末に自動車で訪れ、旬の野菜や果物をまとめ買いしたり、地域ならではの商品を探したりするような利用です。
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この場合、店舗の周辺に多くの住民がいることよりも、広域からアクセスしやすい道路環境や、十分な駐車場を確保できることが重要になる場合があります。
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また、観光施設や道の駅など、ほかの目的地との位置関係によって、来店機会が増えることも考えられます。
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このように、同じ農産物直売所であっても、近隣住民の繰り返し利用を中心とするのか、広域からの目的来店を中心とするのかによって、適した立地は変わるのです。
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<スーパーと直売所は競合するだけでなく共存できる>
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スーパーと農産物直売所は、どちらも野菜や果物を販売しているため、競合関係にあるように見えます。
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実際、同じ地域の消費者が食品に使うお金を取り合うという意味では、競合する部分があります。
しかし、消費者の買い物行動を考えると、必ずしも一方が選ばれれば、もう一方が選ばれなくなるわけではありません。
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例えば、日常的な食料品はスーパーでまとめて購入し、野菜や果物だけは直売所で購入する人もいるでしょう。
あるいは、平日は近所のスーパーを利用し、週末には少し遠くの直売所へ出かけるという使い分けも考えられます。
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こうした利用が成立するのであれば、両者は異なる来店動機に対応することで、同じ地域に共存できる可能性があります。
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さらに、立地の観点から興味深いのは、両者が近接することによる効果です。
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立地理論には、複数の商業施設を行き来する人々によって形成される「購買動線」という考え方があります。
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スーパーと農産物直売所が近くにあり、両方を利用する消費者が一定数存在するならば、その間に購買動線が形成される可能性があります。
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この場合、スーパーの集客力が直売所の来店機会を増やし、直売所の独自性が周辺の買い物環境の魅力を高めることも考えられます。
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ただし、近くに出店すれば必ず相乗効果が生まれるわけではありません。
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商品の違いが乏しければ、単に競争が激しくなるだけかもしれません。
また、道路の構造や駐車場の位置関係によっては、近くにあっても両店を行き来しにくいことがあります。
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大切なのは、店舗同士の距離だけではなく、消費者が両方の店舗を利用する理由があるか、そして実際に利用しやすい位置関係にあるかということです。
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<まとめ――業態が違えば、立地の良し悪しも変わる>
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スーパーマーケットと農産物直売所は、どちらも食品を販売する小売業です。
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しかし、消費者が店舗を選ぶ理由には違いがあります。
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日常の食料品を効率よく調達するための店舗では、生活圏からの近さや利用しやすさが大きな意味を持ちます。
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一方、独自の商品や買い物体験を求めて訪れる店舗では、多少の距離があっても、広域から顧客を集められる可能性があります。
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そして、農産物直売所であっても、日常利用型ならスーパーに近い立地条件が求められ、広域集客型なら目的地としての魅力とアクセス条件が重要になります。
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改めてこうしたことから分かるのは、立地の良し悪しは、単に人口が多いか、交通量が多いか、駅に近いかだけでは決まらないということです。
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その店舗が、誰に、何を、どのような理由で買ってもらうのか。
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その集客構造によって、同じ場所でも立地の評価は変わります。
スーパーにとっては不利な場所が、広域集客型の農産物直売所にとっては十分に検討できる場所になることもあるでしょう。
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反対に、人気の直売所が成立している場所だからといって、そこに一般的なスーパーを出店しても同じように集客できるとは限りません。
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店舗の立地を評価する際には、業種業態という大きな分類だけでなく、実際の来店動機や利用頻度、商圏の広がりまで踏み込んで考えることが重要なのです。
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