店舗の立地を評価する際、「お店がよく見えるかどうか」は、売上を左右する重要なポイントです。
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しかし、この「見える」という言葉には、大きな落とし穴があります。
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例えば、出店候補物件を見に行ったとき、道路から建物がはっきり見え、看板を設置するスペースも十分にあったとします。
周囲に視界を遮る建物や樹木もありません。
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これなら、視界性は良好だと判断しても問題ないでしょうか?
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実は、そうとは限りません。
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物理的には見えているのに、通行人にはお店として認識されない。
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そんな現象が起こることがあるのです。
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今回は、店舗立地における視界性の重要な概念のひとつ、「視界融合」について解説します。
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<「見える」と「認識される」は違う>
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そもそも、立地判定における「視界性」とは、単純にお店が見えるかどうかを意味するものではありません。
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重要なのは、通行人やドライバーが、特に意識して探さなくても、自然にお店の存在を認識できるかどうかです。
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お店の前に立ち、建物の方を向いてみれば、そこにお店があることは分かるでしょう。
しかし、実際の通行人は、お店を探すために歩いているとは限りません。
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駅に向かっていたり、買い物を終えて帰宅する途中だったり、あるいは車を運転していたりします。
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そうした人々が、普通に移動しているだけでお店の存在に気付くかどうか。
これが、立地判定で考えるべき視界性です。
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そして、人間の目と脳には、ある特徴があります。
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それは、目に映っているものを、必ずしも一つひとつ独立した対象として認識しているわけではないということです。
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例えば、同じような色や形のものが並んでいると、それらをまとめて一つのまとまりとして知覚することがあります。
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店舗の看板も例外ではありません。
看板そのものは視野に入っているのに、周囲の建物や他の看板と一体化してしまい、個別の店舗として認識されなくなることがあるのです。
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この現象を、立地判定では「視界融合」と呼びます。
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<背景の色に埋もれてしまう「色彩融合」>
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視界融合には、大きく分けて2つの種類があります。
そのひとつが「色彩融合」です。
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これは、店舗や看板の色が周囲の背景と似ているために、個別の対象として認識されにくくなる現象です。
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例えば、赤や黄色などの暖色系の看板が数多く並んでいる場所を想像してください。
そこに新しく、同じような赤や黄色の看板を設置したらどうなるでしょうか。
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看板自体は十分な大きさがあり、道路からも見えているかもしれません。
しかし、周囲に似た色の看板が多いため、ひとつの看板として際立ちにくくなります。
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反対に、黒やグレーなどの落ち着いた色が多い街並みであれば、鮮やかな色の看板が目に入りやすくなることもあります。
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もうひとつ、見落としやすい例があります。
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それは、白い看板と空の関係です。
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建物から道路に向かって突き出す「袖看板」は、歩行者やドライバーから見つけてもらうために有効なものです。
ところが、白地の袖看板を設置した場合、見る角度によっては背景が白っぽい空になり、看板が背景に溶け込んでしまうことがあります。
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つまり、看板の色が目立つかどうかは、看板単体で決まるのではなく、背景との関係で決まるのです。
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看板のデザインを考えるとき、白い紙の上やパソコンの画面上で「目立つデザインだ」と判断するだけでは不十分です。
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実際に設置する場所では、何が背景になるのか。
そこまで考えなければ、本当に見える看板にはなりません。
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<同じ形の看板に紛れてしまう「フォルム融合」>
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もうひとつが「フォルム融合」です。
フォルムとは形のことです。
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例えば、道路沿いに長方形の看板が10枚並んでいる場面を想像してみてください。
その中に、同じような大きさの長方形の看板をもう1枚追加したとします。
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新しい看板は、他の看板と似た形をしているため、看板群の一部として認識されやすくなります。
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ところが、その中に丸い看板や三角形の看板がひとつあったらどうでしょうか。
周囲と形が違うため、その看板だけが際立って見える可能性が高くなります。
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これがフォルム融合を考えるうえでの基本的な考え方です。
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ただし、丸い看板にすれば必ず目立つ、という話ではありません。
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例えば、丸い道路標識が並んでいる場所に、同じような丸い看板を設置すれば、今度は道路標識と一体化してしまう可能性があります。
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大切なのは、特定の形が優れているということではなく、周囲にあるものと同じ形になっていないかという点です。
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商業施設の共同看板なども、考えてみる価値があります。
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同じ大きさ、同じ形の看板が縦に何枚も並んでいる場合、それぞれの店舗名が書かれていても、通行人には看板全体がひとつのまとまりとして映ることがあります。
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こうした場合、看板を設置しているという事実だけで、十分な視界性が確保されていると考えるのは危険です。
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<出店候補物件ではどこを確認すべきか>
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では、実際の立地調査では、どのように視界融合を確認すればよいのでしょうか。
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まず重要なのは、店舗の前を歩いただけで判断しないことです。
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立地判定における視界性には、店前で見る場合以外に「TG視界性」と「動線視界性」という2つの視点があります。
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「TG」とは、多くの人が集まる場所のことで、駅の出入口や交差点などが代表的です。
また、「動線」とは、人々がそうした場所の間を移動する際に形成される、人の流れのことです。
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お店の視界性を評価する際には、こうしたTGや動線から、店舗や看板がどのように見えるかを確認する必要があります。
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そして、視界融合を確認する際には、次のような点に注目します。
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- 看板の背景には何があるか。 建物の壁面、空、他の看板などと色が似ていないか。
- 周囲にはどんな形の看板があるか。 同じような形状の看板が並び、その中に埋もれていないか。
- 通行人の進行方向からどう見えるか。 店舗を正面から見るのではなく、実際の移動方向から自然に認識できるか。
- 店舗を知らない人でも気付けるか。 すでにお店の存在を知っている人が、意識して探したときだけ見える状態になっていないか。
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特に注意したいのは、出店候補物件を調査する人は、「最初からその物件を知っていて探している」という点です。
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住所も分かっていますし、どの辺りにあるかも地図を見ながらアタリをつけているでしょう。
そのため、一般の通行人よりもはるかに簡単に店舗を発見できてしまいます。
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しかし、店舗を出す側の人間が、自分にははっきり見えているからといって、お客さんとなる通行人にも同じように見えているとは限りません。
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「お店がどこにあるか知っている自分の視界」と、「お店の存在を知らない通行人の視界」を区別すること。
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これが、視界性を正しく評価するための重要なポイントです。
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<視界融合は看板の工夫で改善できる>
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視界融合の問題は、出店前に確認するだけでなく、既存店の改善にも役立てることができます。
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例えば、店舗の周囲に同じような色の看板が多ければ、それらと異なる色彩を採用することが考えられます。
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四角い看板が並んでいる場所なら、形状を変えることで、周囲との差別化を図る方法もあります。
また、看板を設置する位置や向きを変えることで、背景との関係が変わり、視界融合を避けられる可能性もあります。
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ただし、ここで重要なのは、単に派手な色や奇抜な形にすればよいわけではないということです。
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看板には、お店の存在を知らせるだけでなく、何のお店なのかを伝える役割もあります。
いくら目立っていても、何を売っているお店なのか分からなければ、集客につながりにくくなります。
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したがって、看板の改善では、まず周囲の景色に埋もれないことを考え、そのうえで業種業態が伝わるデザインを検討する必要があります。
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<まとめ:物理的に見えるからと言って油断してはならない>
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店舗の視界性を考える際、最も注意したいのは、「物理的に見えていること」と「通行人に認識されること」は同じではないという点です。
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特に「視界融合」は、看板や店舗が周囲の色や形と一体化してしまうため、障害物が何もなくても起こり得る現象です。
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色彩融合とフォルム融合という2つの仕組みを理解することで、これまで気付かなかった視界性の問題を発見できるかもしれません。
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そして、視界性は立地要因の中でも、出店後にある程度改善できる余地があるものです。
TGや動線そのものを店舗側の努力で変えることは容易ではありません。しかし、看板の色や形、設置位置などは工夫できる場合があります。
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新規出店の物件選びはもちろん、既存店の売上改善を考える際にも、一度、通行人の目線でお店を観察してみてください。
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そこにお店があることを知っている人ではなく、まだそのお店の存在を知らない人に、自然と見つけてもらえるかどうか。
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それが、繁盛立地を考えるうえでの重要な視点なのです。
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