スモールビジネスについての本や記事を読んでいると、
「自宅の一部を改装してカフェを始めよう」
「自宅のガレージをショップにすれば、低コストで開業できる」
「軒先を使えば、小さな飲食店なら大きな初期投資をせずに始められる」
といった話を見かけることがあります。
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私は、この考え方そのものが間違っているとは思いません。
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店舗ビジネスを始めるとき、大きなハードルになるのが初期投資です。
物件を借り、保証金を払い、内装工事をして、設備を入れるということは、それだけで相当な金額になることがあります。
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その点、自宅の一部やガレージなどを利用できるのであれば、初期投資をかなり抑えられる可能性があります。
これは個人で小さく商売を始めるうえで、大きなメリットでしょう。
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ただし、立地コンサルタントとしては、ひとつだけ強く言っておきたいことがあります。
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それは、「そこで店を作れる」ことと「そこで商売が成立する」ことは、まったく別の話だということです。
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自宅で開業できる業態だからといって、「では自宅で開業しよう」と、そのまま考えてしまうのは危険なのです。
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<初期費用を抑えられるのは「土地・建物制約」のメリット>
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これまでにも何度もお伝えしているように、店舗立地には、売上げに影響する様々な要因があります。
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弊社ではそれを大きく、
「商圏規模」
「商圏の質」
「接近容易性」
「知覚突出性」
「土地・建物制約」
「競合制約」
という六大立地要因に分けて考えています。
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この中で、
「自宅を改装すれば開業できる」
「ガレージをそのまま使える」
「大掛かりな内装工事をしなくても営業できる」
といったメリットは、主として「土地・建物制約」に関わる話です。
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店舗には、業態によって必要な広さや形があります。
その観点で見ると、物件の間口や建物の形状、階層、看板を設置できる場所などは、店舗として使えるかどうかに影響します。
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その点で、あまり物件を選ばず、小さなスペースでも営業できる業態は有利です。
これは間違いありません。
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しかし、ここで気を付けていただきたいのは、
「土地・建物制約のハードルが低い」=「立地条件が良い」
ということではないという話です。
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ただ、六大立地要因の1つについて条件をクリアしやすい、というだけなのです。
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ところが自宅開業を考えるときには、ここが混同されやすいように思います。
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「ここなら店を作れる」ということが、いつの間にか「ここで店をやればいい」に変わってしまう流れを、時折見かけてしまうのです。
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<そもそも「住宅」は店舗のために場所を選んでいない>
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ここで、少し当たり前のことを考えてみましょう。
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普通、自宅を購入したり借りたりするとき、
「この場所なら店舗を出したときに売上げが上がるだろうか?」
とは考えませんよね。
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通勤しやすい。
学校が近い。
静かで暮らしやすい。
スーパーが近い。
家族にとって住みやすい。
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そういった「住宅としての条件」で場所を選ぶはずです。
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つまり、自宅はそもそも、店舗立地として選ばれた場所ではないのです。
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何を当たり前のことを、とお感じになるかもしれませんが、この認識がしっかりできていないと落とし穴に陥ってしまう恐れがあります。
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もちろん、結果として店舗立地にも恵まれている住宅はあります。
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駅の近くにある。
大きな交差点の角にある。
商店街に面している。
近くに強いTGがあり、そこから発生した人々の動線上にある。
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そうした物件であるならば、自宅であっても話は別です。
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しかしながら、基本的に多くの住宅はそうではありません。
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住宅街の中にあり、家の前を通るのは近隣住民が中心。
人々が継続的に発生・集中するTGが近くにない。
TGがあったとしても、そこから発生した人々の主要な動線が家の前を通っていない。
さらに、道路から建物がセットバックしていたり、塀や植栽があったりする。
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つまり、「家賃がかからない」「改装費が安い」というメリットとは別のところで、店舗立地として大きなハンデを抱えている可能性があるのです。
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<「家賃ゼロ」でもお客さんが来なければ意味がない>
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仮に、自宅を改装して非常に安くカフェを開業できたとしましょう。
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新たに店舗物件を借りる必要がない。
高額な保証金も必要ない。
内装工事も最小限。
開業資金だけを考えれば、かなり魅力的です。
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しかし、店舗を出した後に必要なのは、当然ながらお客さんに来てもらうことです。
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ここで改めて立地を見てみます。
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その商圏には、自分の店を利用してくれるだけのマーケットがあるでしょうか。
その商圏にいる人々と、自分の業態は合っているでしょうか。
お客さんになり得る人々が発生するTGはあるでしょうか。
そこから発生した人々は、自宅の前を通るでしょうか。
道路を歩いたり車で走ったりしている人から、店舗の存在に自然に気づいてもらえるでしょうか。
そして、気づいた人が抵抗なく店舗まで接近できるでしょうか。
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このようにしてひとつずつ見ていくと、「自宅で営業できるか?」と「自宅でお客さんを集められるか?」は、まったく違う問題だということが分かります。
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仮に家賃がゼロだったとしても、店舗の存在に誰も気づかず、お客さんもほとんど来ないのであれば、それだけで商売が成立するわけではありません。
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もちろん現在は、SNSやGoogleマップなどを使って、立地上の弱点をある程度補える業態もあります。
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完全予約制で、最初からその店を目的に訪れるお客さんが中心なら、通行人を吸引する必要性も低くなるでしょう。
テイクアウト、デリバリー、ネット販売などを組み合わせる方法もあります。
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ですから、「住宅街では絶対に商売ができない」という話ではありません。
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重要なのは、自分のビジネスがどのようにお客さんを集める構造になっているのかを考えたうえで、自宅という立地でも成立するのかを判断することです。
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<「自宅だと楽だから出す」のではなく「自宅でも成立するか」を考える>
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なお、自宅で店舗を営業する場合には、用途地域をはじめ、業種によって営業許可や建築、消防など、さまざまな条件を確認する必要があります。
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ただ、今回はそれらをいったん横に置いて、純粋に店舗立地として考えてみました。
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私は決して、自宅開業そのものを否定したいわけではありません。
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むしろ、たまたま自宅が店舗としても良い立地にあり、なおかつ物件取得費や改装費まで抑えられるのであれば、非常に有利な条件だと思います。
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ただ、問題なのは、「自宅を使えば安く始められる」ことを、その場所で店を出す理由にしてしまうことです。
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自宅を使えるとコストが安く済むというのは、あくまで出店側の都合です。
しかし、店舗の売上げを作ってくれるのは、お客さんです。
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ですから、順番を逆にしてはいけません。
まず、「この場所で自分の業態は成立するのか?」を考えてください。
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商圏規模はどうか。
商圏の質は自分の業態に合っているか。
TGはどこにあるのか。
そこからどんな動線が発生しているのか。
視界性は確保できるのか。
お客さんは店舗まで接近しやすいのか。
競合との関係はどうか。
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そして、その上で物件としての使いやすさやハードルの低さも含めて総合的に考えた結果、「この自宅なら店舗としても成立する」となるのであれば、そこで初めて「自宅を使える」というコスト面のメリットが生きてきます。
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「自宅を改装すれば開業できる」と、「自宅で開業すべき」は全く違います。
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初期費用が安いことは、確かに大きなメリットです。
しかしそれは、店舗立地を構成する条件の一部にすぎません。
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店を作りやすい場所と、店を出すべき場所は違う。
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小さくショップビジネスを始めようと考えている人ほど、この二つを分けて考えてほしいと思います。
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