有限会社ソルブ

お問い合わせ

BLOG なぜ立地分析は社内に浸透しない?店舗開発で分析技術が定着しない理由

更新日:2026.09.07

「立地戦略」「立地分析」「売上予測」。

ショップビジネスに携わっている人であれば、どれも重要そうに聞こえる言葉だと思います。

実際、お店を出す時に、立地をまったく考えない企業はほとんどないでしょう。

駅から近いのか。

周辺にターゲットとなる人々はいるのか。

店舗は見つけやすいのか。

競合店はどこにあるのか。

どこまで詳しく調べるかは企業によって違っても、何らかの形で「この場所で本当に大丈夫なのか」は考えるはずです。

ただ、それなら「立地を正しく分析する」という技術は、もっと多くの企業で当たり前のように導入されていてもよさそうなものです。

しかし、長年この仕事をしてきた私の実感としては、必ずしもそうなっていません。

思った以上に多くの企業が、立地の正しい見方・分析の仕方を知らないのです。

これは、なぜなのでしょうか。

以前から私の中にあった疑問なのですが、そこには、一つの仮説があります。

それは、

「売れるか売れないか」を考える立地分析と、「どうやって売るか」を考えるビジネスの基本姿勢は、実はあまり相性が良くないのではないか

というものです。

<「売れるか」ではなく「どうやって売るか」を考える>

ビジネスの世界では、

「できるか、できないかではない。どうしたらできるかを考えよう」

という考え方がよくあります。

これは基本的には、とても大切な姿勢だと思います。

できない理由を並べて何もしないより、どうすれば実現できるかを考え、試行錯誤する。

売上げが足りないなら、商品を改善する。

販促を強化する。

接客を改善する。

WebやSNSを活用する。

そうやって現状を変えようとする姿勢が、ビジネスには必要です。

ところが、立地分析では少し違う角度から物事を見ます。

例えば、ある物件についてさまざまなデータを調べ、既存店との比較などから、

「この立地なら月商700万円程度になる可能性が高い」

という予測が出たとします。

しかし、その物件の損益分岐点が月商1,000万円だったらどうでしょう。

立地分析の立場から考えれば、

「必要売上げが1,000万円なのに、700万円程度しか期待できないのであれば、出店を見送った方がいいのではないか」

という判断になります。

ところが、先述の基本的なビジネス発想からすると、

「700万円しか売れないと考えるのではなく、どうやったら1,000万円売れるかを考えよう」

となることがあるわけですね。

この考え方自体がおかしいわけではありません。

実際、商品力や営業努力、マーケティングなどによって、立地から想定される以上の売上げを出せることはあります。

ただ、ここに立地分析特有の難しさがあります。

<立地分析は「できない理由」を探しているように見えやすい>

立地分析の役割の一つは、出店前にリスクを明らかにすることです。

この場所ならどれくらいの売上げが期待できるのか。

どんな弱点があるのか。

どのくらい売上げが下振れする可能性があるのか。

そうしたことを、できるだけ客観的に明らかにします。

つまり、場合によっては、

「この物件はやめた方がいい」

「このエリアでは難しい」

という結論を出すことも、立地分析の重要な仕事です。

しかし、常に「どうすればできるか」を考える組織から見ると、この仕事は時として、

「できない理由を探している」

ように見えてしまうのかもしれません。

例えば分析担当者が700万円と予測した店舗で、現場が努力して1,000万円を売ったとします。

このこと自体は、会社にとっては素晴らしいことでしょう。

しかし同時に、

「700万円しか売れないと言っていたけれど、実際には1,000万円売れた。だったら売上予測なんて意味がないのでは?」

という話にもなり得てしまいます。

逆に、本当に700万円しか売れなかった場合でも、

「予測が当たった」

ではなく、

「もっと現場が努力すれば売れたのではないか」

と評価されることもあるでしょう。

もちろん、すべての企業がこのように考えるわけではありません。

ただ、もしこうした文化が組織の中に強く存在しているなら、立地分析の価値が評価されにくくなるのは十分にあり得ると思います。

そもそも立地分析は、未来の売上げを固定するものではありません。

「700万円」という予測は、

「何をやっても絶対に700万円までしか売れない」

という意味ではないのです。

むしろ、

「通常の営業活動を前提とした時、この立地にはこの程度のポテンシャルがある可能性が高い」

という基準値です。

そこが分かっていれば、「1,000万円売るためには、立地以外の部分で300万円分を上積みする必要がある」という戦略を立てることもできます。

<立地分析は「勝ちやすい場所を選ぶため」にある>

私は、ここに立地分析の伝え方の難しさもあるのではないかと思っています。

立地分析を、「この物件で売れるか、売れないかを判定するもの」だけとして捉えると、どうしても守りの仕事に見えます。

しかし本来は、それだけではありません。

出店候補が10物件あるなら、その中からより勝ちやすい場所を選ぶ。

必要な売上げに対して立地ポテンシャルが足りないのであれば、無理に出店せず次の物件を探す。

既存店を分析して、自社が強い立地条件を明らかにする。

その条件を満たす場所を積極的に探していく。

こうした使い方をすれば、立地分析はむしろ、「どうすれば売れるのか」を考えるための一つの手段になります。

先ほどの例でも、

A物件なら通常700万円程度。

B物件なら900万円程度。

C物件なら1,100万円程度。

と予測できるのであれば、同じ営業努力をするにしても、最初からC物件を選んだ方が1,000万円という目標を達成しやすいでしょう。

もちろん、予測には誤差がありますし、立地だけで売上げのすべてが決まるわけでもありません。

だからこそ重要なのは、「立地か、努力か」という二者択一にしないことです。

良い立地を選んだうえで努力する。ㅤ

立地上の弱点を把握したうえで、それを補う施策を考える。

その方が、最初から不利な条件を背負って「努力で何とかしよう」とするより、合理的ではないでしょうか。

<まとめ:「売る」という思想と立地分析は、本当に対立するのか>

なぜ、店舗ビジネスにとってこれほど重要なはずの「立地分析」が、思ったほど広く浸透していないのか。

もちろん、理由は一つではないでしょう。

分析するためのデータがない。

専門人材がいない。

売上予測モデルを作るほど店舗数がない。

分析に時間や費用をかけられない。

さまざまな理由が考えられます。

そのうえで私が一つの仮説として感じているのが、

「売れるかどうかを事前に見極める」という立地分析の思想と、「売れるかではなく、どうやって売るかを考える」というビジネスの思想との間に、少しズレがあるのではないか

ということです。

ただし、本来この二つは対立するものではありません。

立地分析が700万円と予測したなら、

「700万円しか売れないから諦める」

だけではなく、

「では1,000万円を売るためには、あと何が必要なのか」

と考えることもできます。

あるいは、

「そこまで大きな努力が必要なら、最初から1,000万円を狙いやすい別の立地を探そう」

という判断もできます。

立地分析とは、人間の努力を否定するためのものではありません。

努力しなければならない量を、できるだけ小さくするためのものでもあるのです。

そして、同じ努力をするのであれば、最初から勝ちやすい場所を選ぶことが大切なのは当然のことです。

そう考えると、「売れるかを分析すること」と「どうやって売るかを考えること」は、決して矛盾しません。

むしろ、「売る」ためにこそ、「売れやすい場所」を知っておくという視点立地分析の価値を伝えていくうえでは重要なのではないかと思っています。

CONTACT

お問い合わせ

まずはお問い合わせフォームまたはお電話にてご連絡ください。 ご依頼の目的(新規出店・既存店改善・研修など)と、簡単なご状況をお聞かせいただきます。 初回のご相談は無料です。

お問い合わせ