店舗を出店するとき、非常に大きな問題になるのが「家賃」です。
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たとえば、非常に魅力的な物件が見つかったものの、提示された賃料は月100万円だとします。
しかし、出店側の企業としては、「80万円なら採算が合う。でも100万円では厳しい」というようなことは、よくあります。
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一方で、物件を貸す大家さんからすれば、当然ながら少しでも高い賃料で貸したいわけです。
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最近では、物価上昇や不動産価格、維持管理コストなどの変化もあり、既存店舗の契約更新時に賃料の増額を求められるケースも聞くようになりました。
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このように、借りる側には借りる側の事情があり、貸す側には貸す側の事情があります。
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では、双方にとって「良い賃料」とは、いくらなのでしょうか?
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私は立地分析の専門家なので、不動産そのものの価格査定を専門としているわけではありません。
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しかし、この問題には「店舗立地」という観点から考えられることもあると考えています。
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<家賃が「高い・安い」ではなく「その場所でいくら売れるのか」>
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出店する側の企業にとって重要なのは、家賃が絶対額として高いか安いかではありません。
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重要なのは、「その立地で見込める売上げに対して、その家賃を負担できるか」です。
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仮に家賃が月100万円の物件でも、十分な売上げが見込めるなら安いと言えるかもしれません。
一方で、月30万円でも、その立地で十分な売上げが期待できなければ、高いと言えます。
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ですから新規出店の場合、当然ながらするべきことは、まずその物件の「売上ポテンシャル」を考えること、すなわち「売上予測」です。
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商圏はどれくらいの広さなのか。
そこにいる人々の属性は自社の業態と合っているのか。
どこにTGがあり、そこから発生した人々はどのような動線を通っているのか。
店舗への入りやすさはどうか。
往来する人からちゃんと見つけられるのか。
物件の構造は変形していないか。
周辺の競合店の状況はどうか・・・・
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こうした様々な立地条件を、自社の既存店データなどと照らし合わせることで、その物件で期待できる売上げを考えていきます。
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仮に、その結果として月商1,000万円程度が妥当だと分かり、自社の事業モデル上、賃料として負担できるのが売上げの8%までなら、支払える家賃は80万円となります。
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なお、ここで誤解していただきたくないの、「この物件の適正賃料は80万円です」と言っているわけではないということです。
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もしかしたら、別の業態・別の企業なら、家賃100万円でも十分に採算が合うかもしれません。
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あくまで、「自社業態がこの立地で長期的に事業を成立させるために支払える賃料は80万円」ということです。
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この違いは、小さなようでとても重要ですので、気を付けてください。
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<大家さんにも「100万円で貸したい」事情がある>
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一方で、貸主(大家さん)の立場から考えてみましょう。
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借主(出店テナント側)が、「うちは80万円しか払えません」と言ったからといって、それだけでは大家さんが80万円にする理由はありません。
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100万円で借りてくれる別のテナントがすぐ見つかるのであれば、大家さんからすれば100万円で貸す方が合理的ですよね。
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実際、店舗賃料は立地の要素だけでは決まりませんし、ましてや借主側の採算で決定的になることもありません。
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周辺の賃料相場、物件の希少性、建物の条件、空室状況、他の入居希望者など、貸主側にもさまざまな判断材料があります。
店舗専門の不動産会社も、店舗物件の賃料は単純な周辺相場だけではなく、建物規模、築年数、間口、階数、店舗としての使いやすさ、人の流れなど、物件固有の条件を含めて考えるものだと説明しています。
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つまり、店舗側の「これ以上払えない」と、貸主側の「これ以下では貸したくない」には、どちらにもそれぞれの理由があります。
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賃料交渉というと、どうしても「どちらが勝つか」という話になりがちですが、本来はそうではありません。
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<本当に考えるべきは「長く成立する賃料」>
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ここに、先ほど考えた立地という視点を入れてみます。
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たとえば100万円で募集している物件について、出店企業側が立地分析を行った結果、「この業態なら80万円までなら長期的に営業できる」という結論になったとします。
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大家さんからすれば、「では80万円にしましょう」とすぐにはならないでしょう。
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しかし、ここでもうひとつ重要視したいのが、「そのテナントに長く営業してもらうことの価値」です。
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仮に大家さんが賃料100万円にこだわった結果、半年間テナントが決まらなければ、その間の賃料収入はゼロです。
あるいは100万円で入居したものの、店舗採算が合わず、数年で撤退してしまうかもしれません。
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そうなれば、再びテナント募集が必要になります。
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反対に、賃料80万円であれば十分に利益が出て、5年、10年と営業してくれる可能性が高まるのであれば、貸主にとっても意味があると言えます。
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もちろん、これは物件によります。
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高い賃料でも次々と入居希望者が現れる一等地なら、大家さんが値下げする合理性は小さいでしょう。
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だからこそ、賃料交渉では、借主側の店舗採算だけではなく、貸主側の長期的な収益まで考える必要があります。
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「安くしてください」
ではなく、
「この条件なら、この店舗を長期的に成立させられます」
という話にするのです。
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ここまで来ると、単なる値切り交渉とは少し違ってきます。
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<契約更新時こそ「5年前と同じ立地か?」を考える>
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この考え方は、新規出店の時にだけ使えるものではありません。
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同時に、既存店舗の契約更新時にも使えます。
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たとえば大家さんから、「周辺の賃料も上がっているので、次回から家賃を上げたい」と言われたとします。
貸主側には、それをする理由があるでしょう。
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しかし店舗側からすれば、賃料が上がればそのまま利益を圧迫することになります。
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そこで考えたいのが、「契約した当時と現在で、この店舗の立地価値はどう変わったのか?」という観点です。
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同じ建物、同じ区画であっても、店舗立地・・・・すなわち周辺状況は変化します。
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競合店が増えているかもしれません。
近隣の大型商業施設が閉店しているかもしれません。
駅や道路が変わり、人の動線が変化しているかもしれません。
周辺の住民の質そのものが変わっていることもあります。
反対に、再開発などによってTGが増え、以前よりも店舗立地としてのポテンシャルが高まっていることもあるでしょう。
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つまり、「5年前と同じ物件」だからといって、「5年前と同じ立地」とは限らないわけですね。
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ここが、不動産としての価値と、店舗立地としての価値を分けて考える面白いところです。
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貸主側が周辺賃料や不動産価格の変化を根拠として提示するのであれば、借主側も店舗立地の変化や実際の売上げ、店舗採算などを材料として提示するのが筋です。
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その上で、双方が落としどころを話し合う・・・・
私は、それこそが健全な交渉の形だと思います。
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なお、今回の話では余談となりますが、普通借家では、貸主から増額の申し入れがあっただけで直ちに新賃料への合意が成立するわけではなく、借地借家法には経済事情や近傍同種の賃料などを踏まえた賃料増減請求の仕組みがあります。
実際の対応は契約形態や契約条項によって異なるため、個別案件では契約書の確認や専門家への相談が必要ですので、ご注意ください。
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<「貸主VS借主」ではなく双方が成立する場所を探す>
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私は店舗立地を分析する仕事をしていますので、基本的には店舗を出す企業側から相談を受けることが多くあります。
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そうすると、つい、
「どうすれば家賃を下げられるか」
「どうすれば値上げを防げるか」
という借主側の視点に寄ってしまいがちになります。
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しかし、それでは長期的にはうまくいかないと思っています。
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大家さんにも事業があります。
店舗側にも事業があります。
どちらか一方だけが無理をして成立している契約は、いずれどこかで歪みが出るものです。
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だからこそ私は、「この物件はいくらの価値があるか?」だけではなく、「この場所で、この店舗が長く商売を続けるためには、どのくらいの賃料なら双方にとって成立するのか?」という視点が必要なのではないかと思います。
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そのためには、
不動産市場から見た物件価値
と、
店舗立地から見た売上ポテンシャル
の両方を見ることが必要です。
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前者は大家さん側が提示するものですので、ショップビジネス企業がしっかり考えるべきは後者です。
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新規出店なら、
立地分析 → 売上予測 → 店舗採算 → 支払可能賃料
を考える。
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契約更新なら、
現在の売上げ → 現在の立地ポテンシャル → 立地環境の変化 → 店舗採算
を確認する。
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そして、それを貸主側の提示する周辺相場や空室リスク、長期的な賃料収入とすり合わせてください。
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私はこうしたプロセスが、店舗側にも、大家さん側にも、双方にとって良い賃料交渉につながるのではないかと思っています。
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立地分析は、「この場所に店を出すべきか」を判断するためだけのものではありません。
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出店した後も、その場所で商売を長く成立させていくために使えるものです。
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