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駅に看板を出すよりもっと効果的な方法 連載59-2
③説明をする。
存在を知らせることと良く似てはいますが、こちらは、看板に描かれた情報をある程度の時間をかけて読み取ってもらうものです。
お手洗いなどは説明しなくても誰でもその意味はすぐに分かります。しかし、一瞬見ただけではよく分からないというものは多くあります。
例えば、百貨店やショッピングセンターなど大きなお店では、各階のどこに何があるか、図面や商品名、店名、業態名などを記載して説明しておかないとなかなか分かりません。
ですから、店舗案内図という看板が出入口やエスカレータ付近に置かれています。
また、団地などの入り口には「団地案内図」が置かれ、ホテルなどに代表されるビルには「防災避難経路図(写真6)」が必ず設置されています。もちろん、お店の前には、「メニューのご案内(写真4)」やショーケースがありますね。
写真4 お店の前にたくさん置かれた説明機能マンサイの看板
写真5 何屋がどこにあるかをきわめてシンプルに表現してある優れた野立て看板
写真6 避難経路図
以上のように、看板には、3つの機能があります。そして、その機能に応じて、看板の作り方が変わってきます。
まず、情報量(描いてある文字や図形)は、③⇒②⇒①の順に少なくなっていきます。①に至っては、ほんの一瞬見ただけでもわかるようなデザインでなければなりません。
もちろん、③であったとしても、過剰な情報量は、よくありません。必要最小限にすべきであって、たくさんの情報を知ってほしいなら、パンフレットなどを用意して補えば良いわけです。
また、発見し易さ、分かりやすさも③⇒②⇒①の順です。
ですから、看板の大きさや看板を設置する場所への配慮も、①が一番重要になります。
では、売上に一番効果的な看板はどれでしょうか?
素朴な答えは、①になるかもしれません。お店があることが分かれば来てくれるでしょう。
実は、そうではないのです。
お店があることが分かっただけで来てくれる人というのは、元々、そのお店に行きたいと思っていた人です。つまり、探していた人であって、そういう人の多くは、探し出してくれるものです。
お手洗いに行きたいと思っている人は、たとえ看板が見つからなくても、従業員に聞いたりして何が何でも目的地に行こうとしますね。これと同じです。
また、③でもありません。③はもっと目的意識の強い人が見るものです。
特定の商品がどこで売っているかを探そうとしたり、行きたい住所の家がどこにあるかを探したりするために、人々はその看板を見るのです。店に入る前にじっくりとメニューの品定めをしたいがゆえに、「メニューのご案内」看板を見るのです。
と、残るは、②の誘導機能がある看板です。
人の来店形態には、店に行きたいと思っていて、探しているときに、看板を見つけ、入店するという目的来店と、たまたま看板を見て、行きたくなって、その看板の指し示す場所に向かうという衝動来店の2通りがあります。前者は、動機が先で看板は後ですが、後者は看板が先で動機が後です。
衝動来店は、看板が見えて、それが何の看板であるかを識別して(食べるところなのか、物販なのか、遊ぶところなのか・・・)から、店に行こうとするのですから、「お店がどこにあるか」がわかることがとても重要になります。「ココ」なのか、「この先1km」なのか、「吉野家の角曲がる」なのかが分かることです。それも、一瞬にして分かることです。
図1 もし当時、筆者が作っていたとしたらこんな誘導看板だったでしょう。しかし、店に来たことのない人がこの看板を瞬時に見ただけで店まで来られるたでしょうか?きっと、駅看板作っても売上増にはつながらなかったでしょう。
もう分かりましたね。駅に看板を出しても、お店の位置が一瞬にわかるようなデザインでなかったら、お客を増やすことはできません。「出て左、10秒」ならOKです。でも、「出て、右へ向かって、〇〇百貨店入り口前で左折30mで左折、さらに10前進で右・・・」などというのでは、ほとんどの人には分かりません。仮に、こうした複雑な道順を、地図を描いて説明してもほとんど認識も記憶もしてくれないでしょう。この看板を見て来てくれた人がいたとしても、その人は、元々、その店を知っていたからに過ぎません。
こうして、それなりの増客効果を得るには、店の場所をすぐに説明できるような地点に、誘導機能がある看板を出すことだと分かってくれたと思います。もちろん、そういう地点が、今までお話ししてきたTG(交通発生源)であればなお一層効果的です。
写真1 ポツンと赤い看板が目に飛び込んでくる「バーミヤン」の看板。存在告知機能はあるものの、どこで左折したら良いか、一瞬では分かりづらい(誘導機能が弱い)野立て看板です。
写真2 「工事がある」ことと、工事が「200m先」で行われていることが、瞬時に読み取れる卓越した看板です。存在告知機能も誘導機能も活きています。
写真3 メニューの説明機能を重視しているのか、存在告知機能なのか、よくわからない中途半端な置き看板
本文2816字
はやしはら やすのり
売上予測コンサルタント。有限会社ソルブ代表。東京大学卒。日本マクドナルドで出店調査を担当。独自に深耕させた理論をもとに多くのチェーン企業の経営者、個人起業家をコンサルティングしている。著書に『実践 売上予測と立地判定』(商業界)、『最新版 これが「繁盛立地」だ!』(同文館出版)など。
東京都港区南青山2-2-15 ウィン青山942 有限会社ソルブ 電話 03-3538-6603 メール問合せは、こちら ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
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③説明をする。
存在を知らせることと良く似てはいますが、こちらは、看板に描かれた情報をある程度の時間をかけて読み取ってもらうものです。
お手洗いなどは説明しなくても誰でもその意味はすぐに分かります。しかし、一瞬見ただけではよく分からないというものは多くあります。
例えば、百貨店やショッピングセンターなど大きなお店では、各階のどこに何があるか、図面や商品名、店名、業態名などを記載して説明しておかないとなかなか分かりません。
ですから、店舗案内図という看板が出入口やエスカレータ付近に置かれています。
また、団地などの入り口には「団地案内図」が置かれ、ホテルなどに代表されるビルには「防災避難経路図(写真6)」が必ず設置されています。もちろん、お店の前には、「メニューのご案内(写真4)」やショーケースがありますね。
写真4 お店の前にたくさん置かれた説明機能マンサイの看板
写真5 何屋がどこにあるかをきわめてシンプルに表現してある優れた野立て看板
写真6 避難経路図
以上のように、看板には、3つの機能があります。そして、その機能に応じて、看板の作り方が変わってきます。
まず、情報量(描いてある文字や図形)は、③⇒②⇒①の順に少なくなっていきます。①に至っては、ほんの一瞬見ただけでもわかるようなデザインでなければなりません。
もちろん、③であったとしても、過剰な情報量は、よくありません。必要最小限にすべきであって、たくさんの情報を知ってほしいなら、パンフレットなどを用意して補えば良いわけです。
また、発見し易さ、分かりやすさも③⇒②⇒①の順です。
ですから、看板の大きさや看板を設置する場所への配慮も、①が一番重要になります。
では、売上に一番効果的な看板はどれでしょうか?
素朴な答えは、①になるかもしれません。お店があることが分かれば来てくれるでしょう。
実は、そうではないのです。
お店があることが分かっただけで来てくれる人というのは、元々、そのお店に行きたいと思っていた人です。つまり、探していた人であって、そういう人の多くは、探し出してくれるものです。
お手洗いに行きたいと思っている人は、たとえ看板が見つからなくても、従業員に聞いたりして何が何でも目的地に行こうとしますね。これと同じです。
また、③でもありません。③はもっと目的意識の強い人が見るものです。
特定の商品がどこで売っているかを探そうとしたり、行きたい住所の家がどこにあるかを探したりするために、人々はその看板を見るのです。店に入る前にじっくりとメニューの品定めをしたいがゆえに、「メニューのご案内」看板を見るのです。
と、残るは、②の誘導機能がある看板です。
人の来店形態には、店に行きたいと思っていて、探しているときに、看板を見つけ、入店するという目的来店と、たまたま看板を見て、行きたくなって、その看板の指し示す場所に向かうという衝動来店の2通りがあります。前者は、動機が先で看板は後ですが、後者は看板が先で動機が後です。
衝動来店は、看板が見えて、それが何の看板であるかを識別して(食べるところなのか、物販なのか、遊ぶところなのか・・・)から、店に行こうとするのですから、「お店がどこにあるか」がわかることがとても重要になります。「ココ」なのか、「この先1km」なのか、「吉野家の角曲がる」なのかが分かることです。それも、一瞬にして分かることです。
図1 もし当時、筆者が作っていたとしたらこんな誘導看板だったでしょう。しかし、店に来たことのない人がこの看板を瞬時に見ただけで店まで来られるたでしょうか?きっと、駅看板作っても売上増にはつながらなかったでしょう。
もう分かりましたね。駅に看板を出しても、お店の位置が一瞬にわかるようなデザインでなかったら、お客を増やすことはできません。「出て左、10秒」ならOKです。でも、「出て、右へ向かって、〇〇百貨店入り口前で左折30mで左折、さらに10前進で右・・・」などというのでは、ほとんどの人には分かりません。仮に、こうした複雑な道順を、地図を描いて説明してもほとんど認識も記憶もしてくれないでしょう。この看板を見て来てくれた人がいたとしても、その人は、元々、その店を知っていたからに過ぎません。
こうして、それなりの増客効果を得るには、店の場所をすぐに説明できるような地点に、誘導機能がある看板を出すことだと分かってくれたと思います。もちろん、そういう地点が、今までお話ししてきたTG(交通発生源)であればなお一層効果的です。
写真1 ポツンと赤い看板が目に飛び込んでくる「バーミヤン」の看板。存在告知機能はあるものの、どこで左折したら良いか、一瞬では分かりづらい(誘導機能が弱い)野立て看板です。
写真2 「工事がある」ことと、工事が「200m先」で行われていることが、瞬時に読み取れる卓越した看板です。存在告知機能も誘導機能も活きています。
写真3 メニューの説明機能を重視しているのか、存在告知機能なのか、よくわからない中途半端な置き看板
本文2816字
はやしはら やすのり
売上予測コンサルタント。有限会社ソルブ代表。東京大学卒。日本マクドナルドで出店調査を担当。独自に深耕させた理論をもとに多くのチェーン企業の経営者、個人起業家をコンサルティングしている。著書に『実践 売上予測と立地判定』(商業界)、『最新版 これが「繁盛立地」だ!』(同文館出版)など。
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