賃料は上がっていくばかりですか? 連載57

(有)ソルブ 林原安徳

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賃料は上がっていくばかりですか? 連載57

店長の立地,店舗営業,店舗開発,飲食店経営

2020/12/13 賃料は上がっていくばかりですか? 連載57

連載57 12月号 [店長が知っていると得する立地の応用] 21.回目

 

賃料は上がっていくばかりですか?

 

お店の運営をしていると、3年あるいは長いと5年、短いと2年毎に、家賃交渉の月がやってきますね。実は、みなさんの頑張りがこの月に証明されると言っても過言ではありません。前々月(10月号)では、オーナーのことをどれだけ知っていますか、オーナーと仲良くなりましょうと言ったこととも関係します。

 

地価 グラフ

グラフ1 公示地価の推移

 

家賃交渉と書いたのは、「家賃は貸し主と借り主の両方が合意して決めるもので、貸し主と借主は完全に対等」だということを前提にしてほしかったからです。日本では、昔から貸し主の力の方が強かったから、どうしても「家賃は貸し主が決めるもの、だから、値上げする言われたら黙って言うとおりにしなければいけない」という誤った観念が通用しています。とりわけ、住宅用に借りたりする人は完全にこうした観念にとらわれてしまっていることが多いようです。

しかし、店という事業目的で借りているなら、こうした古い観念から完全に抜け出ないといけません。「対等」なのです。

仮に、貸し主が値上げを提案してきたとしてもそれを黙って受け入れる必要はありません。むしろ、借り主のこちらから、値下げを提案して受け入れてもらうことだってもちろんアリです。

ビジネスなのですから当然のことなのです。もし、過去の契約書があるのでしたら、これまで家賃がどのように推移してきたか見ることができるでしょう。

仮に、その推移が、一方的に値上げばかりしてきたようなら、たいていはチャンスです。「値下げ」を提案する絶好の機会です。全国ほとんどの場所、都市でさえも、大きなトレンドは地価がほとんど上がっていないか、一定に近い状態です(グラフ1)。

とはいえ、地域によってその変化はマバラです。高く上がっているところもあれば、ほとんど上がっていないところ、逆に下がっているところさえあります。

自店舗周辺の地価が上がっているかどうか、これが、交渉に用いる重要な情報です。周辺が下がっているに自店舗だけ上げる必要はありません。

ですから、インターネットなどを使って、自店舗周辺の地価の変化を調べておくことをお勧めします。最近は無料でわかりやすい地図で表現されているウェブサイトが多くなりました。図1は、都道府県と市区町村名だけ入力するだけで、グーグル地図を使ってその地価上昇率を色分けして表示してくれます。あとは、自店舗近くの色分けがどうなっているかを見るだけです。

 

 

家賃の推移 グラフ

グラフ2 家賃の推移(3年で10%アップ、5年で5%アップ)

 

ところで、家賃交渉で一番大事なことは何でしょう。

それは、言わずもがな、互いの信頼関係です。ですから、交渉にあたっては、これからの長い期間も互いの信頼関係が強くなるように交渉することが多くの場合、重要です。つまり、まずは互いにとって、どういう家賃にするか合理的に納得のいく所、着地点を考えなければなりません。いきなり、「20%アップ」あるいは、「20%ダウン」と突き付けてしまっては、信頼関係も何もあったものではありません。もちろん、そういった無謀な要求をする貸し主、借り主がいるのも事実です。だからといって、みんながみんなそうではありません。話し合って結論が落ち着かないことは、通常はありえないものだと考えても良いでしょう。

 

「あなたの店がこんなに儲かってしまうとは思わなかった。今までの家賃は安過ぎたので、50%アップしてくれませんか?」と、あるファストフード店が貸し主に言われました。このファストフードはどこでも同じようなことを、契約更改が近づくと言われたことがありました。それだけお客を集め、高い売上を実現できていた頃です。

もちろん、こういうような契約更改はチェーン店の場合、店長に任せるようなことは滅多にありません。本部の優秀なスタッフが担います。

仮に、貸し主が言う通り、その店が相当程度高い収益を出していたとしても、それはそれ、これはこれです。「店舗を多数かかえているとどこもこの店のようだとは限りません。むしろ、多くの不振店を抱えることがあります。それに本部経費もハンパでなくかかるのです。ですから、年間を通しますとこのように利益もギリギリ小さなものになってしまうのです」と話しを切り出します。

 

 

 

誠心誠意、資料を見せ、分からない点を明確にしながら、慌てることなくジックリ説明していくのです。そして、貸し主が現在の家賃で貸してくれることによって、どれほど社会貢献ができているか、地域の人々が感謝しているかをしっかり話していくのです。結果的に、相当低いアップ率で交渉を成立させます。それが積り積もって数十年が経過した今頃は、周辺では有り得ないほど低い家賃で借り続けている店舗がそのチェーンにはたくさんあります。

3年に1度10%ずつ6回値上げすれば、7回目直後の22年目は最初の家賃の1・95倍、ほぼ2倍になります。しかし、5年に1度5%づつならば、4回目以降の同じ22年目でも1・22倍に過ぎません。最初の家賃が50万円だとしても、前者なら100万円弱になり、後者なら61万円弱に過ぎません(グラフ2)。

家賃を吸収するには、売上は一般的に家賃の10倍なければならないとされています。もし、家賃が50万円なら、月商は500万円ということです。しかし、家賃が倍になれば月商も1000万円にしなければなりません。しかし、それだけの売上アップは通常ほとんど不可能です。

次の賃料更改を待つまでもなく、撤退の憂き目にあうこと必定です。

しかし、20年経っても、61万円なら売上もそれほど難しくなく達成できるでしょう。

 

地価マップ

図1 公示地価が無料でわかるウェブサイト例

 

この賃料交渉は、店側、チェーン店側が「値下げ交渉」をする時も同様です。たとえば、不景気になってしまうのは、貸主側にとっても困りごとです。思うように借り手が見つからないなら元も子もありません。多少、借り主に譲歩してでも、長く借りてくれるほうが良いわけです。また、敷金や保証金のこともあります。今、出て行ってしまうというならばそれらをすぐに返済しなければなりません。数百万円にもなる出費はそう簡単にはできません。だから、契約更改にあたって、貸し主も慎重に考えざるを得なくなり、最近は高いアップも要求したりしないことが多くなりました。

 

賃料交渉をうまく進めるために必要なことが、もう一つあります。それは、何かにつけて貸し主に対して、「貸し」を作っておくことです。そして、それを口にも出し貸し主に伝え、記録として残しておくことです。例えば、店舗入り口付近、階段などの改装を行う際に、貸し主の資産価値が上がるような工夫(強度を上げる、静音性を高めるなど)も加えます。換気や排気用のダクトなどのが貸し主側ものであれば、それらの不具合を修理する場合も同様です。また、飲食店は知らず知らずビルを汚してしまうものです。だから、極力ビルに着いた汚れを落とすようにしてください。こうしておくことは貸し主にとっては喜ばしいことです。ですから、有力な交渉カードにもなります。

 

あなたの店の賃料は、いつも上がっていくばかりですか?もし、そうなら、いつ撤収しても不思議でなくなりますよ。

 

 

 

 

 

はやしはら やすのり

売上予測コンサルタント。有限会社ソルブ代表。東京大学卒。日本マクドナルドで出店調査を担当。独自に深耕させた理論をもとに多くのチェーン企業の経営者、個人起業家をコンサルティングしている。著書に『実践 売上予測と立地判定』(商業界)、『最新版 これが「繁盛立地」だ!』(同文館出版)など。

 

 

以下今回は不要です。

「統計てきめん」の地図使用承認(C)昭文社第55G15号

 

 

 

 


 

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