明日の売上予測 明日はいくら売れるのか 連載31

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明日の売上予測 明日はいくら売れるのか 連載31

店長の立地,売上予測,飲食店経営

2020/11/17 明日の売上予測 明日はいくら売れるのか 連載31

今回は、これまでの売上予測とは、まったくジャンルが異なる「時系列売上予測」についてお話します。というのも、同じ「売上予測」という言葉が入っているので混同しないように敢えてその違いと利用について知ってもらう必要があるからです。

前者(平均予測法、回転率法、キャッチ率法、市場シェア率法、範囲限定法)は、「立地」を元にしてそこに店を出すといくら売れるかを知ることでした。

 

これに対して、後者の時系列売上予測は、過去の実績をもとにして、未来の売上がどうなるかを予測することです。「時系列」とは、「時間の経過に伴って」という意味です。

例えば、飲食店は昼食時間帯と夕食時間帯が忙しいほどよく売れ、それ以外の時間帯はよほどのことがない限り暇であまり売れません。これは当然と言えば当然なのですが、この売上の変化も、時間の経過に伴っていますので、「時系列」です。

 

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そして「今日のお昼は○○万円売れたから、夕方は□□万円くらい売れるだろう」のように何気なく使っているのが時系列売上予測です。

もちろん、これ以外にも、明日は休日前だから売上は高いだろう、とか、3日後には台風が来るという天気予報だから売上は見込めないだろうとかもそうです。

もっとも典型的なものは、予算の作成です。来年の店舗予算を作るためには、正確な売上予測が不可欠です。もちろん、キャンペーンや新商品の導入がうまくいくか、あるいは人員確保やトレーニングの良否など不確定な要素が多々あります。さらに、店長自身のやる気という意図的な点もあるでしょう。

しかし、それでも売上予算は作らなければなりません。

売上予算は、時系列売上予測

では、この売上予算はどうやって作るでしょうか?

何もないところから作るということはほとんどの場合しないでしょう。今年、昨年の売上実績を参考にして作るはずです。そして、これに近い数字を予算にもってくるはずです。

例えば、今年の9月、平日(月曜~木曜)の平均は20万円、金曜および休前日が50万円、土曜・日曜が30万円だったとしましょう。そして、それぞれ日数が15日・4日・11日だったとします。

では、来年の予算はどうしましょうか?

「今年は、休前日に行ったキャンペーンがたいへん当たった。しかし、来年もうまくいくとは限らないからちょっと低い40万円にしておこう」と考えるA店長もいれば、それとは対照的に「今年の平日は、何回も台風に襲われて散々だった。来年はこういうことはないと考えて、平日の平均は30万円にしておこう」と考えるB店長もいるでしょう。

すると、来年の9月の予算は、A店長790万円、B店長980万円となります。

A店長は慎重派で弱気、B店長は楽観的で強気で、売上予測はだいぶ違ってきます。

たいていの店ではこういった感覚重視で、売上予測、売上予算を作ることが多いようです。あのマクドナルドでさえ、今はともあれ少なくとも20年前まではそうやって売上予算を作っていました。

 

では、もう少し、“科学的”な売上予算の作り方はないでしょうか?

ということで、開発された方法の一つが、EPA法という時系列予測方法です。

 

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詳しい計算方法は、頁数の関係で省略しますが、考え方は次の通りです。

EPA法による売上予測

これは、月次または四半期の売上をTCSIの4つの要素に分解して売上予測する方法です。

T」とはトレンド(Trend)、つまり、傾向のことです。売上が時間の経過とともに、「上がっている」か「下がっている」か「ほとんど同じ状態」か、を知ることです。数式では、直線の式で表わします。

もし、上がっている傾向にあれば、来年の売上は、今年より高い数値として予測するのです。

「C」は、サイクル(Cyclical:循環)で、3年ないし4年くらいの大きな周期的変動の要素を表します。

S」は、シーズン(Seasonal:季節)で、文字通り季節的な変動要素を表します。季節指数と呼ばれているものとほとんど同じです。

I」は、イレギュラー(Irregular)で、突発的、不規則に現れる要素を表します。予測する場合は、この要素は使わないようにします。

 

EPA法の難点は、月次データなら最低3年分必要な点です。また、人間が意図的に行うことなどはもちろん予測できませんし、イレギュラーな出来事も予測できません。

しかし、EPA法は、その計算方法を知らなくても、表計算ソフトで使える分析アプリを用いて誰でも簡単に予測できる点とかなり精度が高いという大きな利点を持っています。

 

 

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最後に

時系列で予測したいことは、売上ばかりではありませんね。客数も予測したいし、できれば各商品別の出数予測もしたいです。

こういう予測ができれば、発注ミスによる機会損失も防げますし、在庫管理はひじょうに楽になるというものです。そして、多くの大手コンビニチェーンやレストランチェーンにはそういった予測を毎日自動的に行ってくれる仕組みがありますが、ここでは脱線してしまいますので、別の機会にいたしましょう。

ともあれ、時系列売上予測ができるようになると、さまざまな場面で応用がきくようになることは事実です。通常の「立地に関する売上予測」とともに、将来に志を持つ店長、スーパーバイザー、そして経営管理者が身に着けておくべきスキルであるに違いありません。

 

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(プロフィール)

林原安徳はやしはら やすのり
売上予測のプロ。経営コンサルタント。 東大(農)卒後、日本マクドナルド(株)出店調査部にて、「立地と売上予測」を基礎研究。退社独立後、理論を独自に深耕させSORBICS(ソルビクス)と命名。これに基づき、チェーン展開する多くの企業や個人を指導。主な著作「実践・売上予測と立地判定」(商業界)「最新版 これが繁盛立地だ!」(同文舘出版)。無料メルマガを配信中。http://www.sorb.co.jp

 

 

 

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