もっと確かな売上予測の方法(その2)キャッチ率法 連載28

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もっと確かな売上予測の方法(その2)キャッチ率法 連載28

店長の立地

2020/11/14 もっと確かな売上予測の方法(その2)キャッチ率法 連載28

 

前回は、回転率法を紹介しました。これは、店舗の客席数をもとに売上予測するものでしたね。今でもラーメン店や居酒屋など広く使われている方法です。とはいえ、回転率を求める方法がザックリし過ぎているため新店の予測に精度を求めることはできません。すでに営業している店舗でその売上げを推測するために用いることが多いようです。

 

今回は、“キャッチ率法”です。この方法なら、“説得力のある予測”ができます。なぜなら、予測値を算出するのに、店前交通量を用いるからです。時間帯別に交通量を実測して、この合計に対して、キャッチ率を掛けて算出するからです。

 

 

立地を「実測」するところがポイントです。交通量は、立地に依存しています。ある意味、交通量以外に、その店舗の立地を表すことができるものはないと言っても過言ではないかもしれません。

交通量③計測時の難

 

それほど、交通量は重要な指標です。そして、説得力を持っている指標です。

 

例えば、どんなに駅に近い物件といえども、「でも、店の前ほとんど人が歩いていませんね」と言われたら話はそこでストップしてしまいます。「いいえ、交通量はないかもしれませんが、ここには別の良い点があります」と言い返せるのは、筆者ぐらいでしょう。

 

少なくとも、交通量は長い間、とても立派な“立地指標”と考えられてきました。今でも多くの人達はそう考えています。ハンバーガーやドーナツ、牛丼、カフェ、そば/うどん店などのファストフードは言うに及ばず、ファミレスやスーパーマーケット、中古車販売店、ガソリンスタンド、書籍店、ゲームショップなどはどこも交通量を測っています。

 

 

「交通量さえも測らなかった」としてフランチャイズ本部がその不誠実さを裁判所から指摘されたという判例もあるくらいです。

しかし、交通量は決して万能ではありません。

というのも3つの難があるからです。それは、①計測地点の難、②計測対象の難、③計測時の難の3つです。

 

①計測地点の難

 

交通量はどこを、あるいはどこで計測すれば良いでしょうか?車の交通量を計測するなら、「敷地のほぼ真ん中辺りに立つ電信柱の前」とすれば良いかもしれません。でも立地によってはこれだけでは特定できないケースが出てきます(図表1)。交差点に面していたらどこを計測しますか?もし、道路幅が広く3車線あったらどうしますか?さらに、間に幅広の中央分離帯があったらどうしますか?店舗と反対側を走る場合でも測定しますか?一方通行道路だったら、側道があったら、裏道があったらどうしますか?・・・

比較的動く方向が固定されているので、測定がしやすいはずの自動車にしてさえこういう有様です。

もし、人々の交通量(通常は、通行量と呼びます)の場合ならば、計測地点はいくつも広がってしまいます。というのは、「店の直前」が特定しづらいからです。ほとんど不可能な場合さえあります。

店が角地にある場合、どこを通る人にしますか?交差点に近い場合は複雑ですね(図表2)。

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中には、駅の改札から見えるけれど、店(物件)の直前は、ほとんど人が歩いていないというのさえあります。この時、交通量はゼロとして良いでしょうか?

 

 

 

②計測対象の難

車なら車、人なら人を数えれば良い。実はそんな単純ではありません。まず車から行きましょう。バスやトラックは計測しますか、しませんか?タクシーはどうですか?救急車やパトカー、クレーン車などの特殊車両はどうしましょう。こうした車は、たいていの場合、ほとんど店の顧客対象になりにくいですよね。バイクはどうでしょうか?原付自転車はバイクの仲間ですか?自転車はどうします?最近の自転車には、補助動力が付いているのもありますね。何を計測すべきか、そうでないか、これを厳密に決めて計測できるのは、高速道路くらいなものです。一般道ではほとんど難しい。

そして、人です。

男と女を分けて計測する。では、自転車で通りかかる人は計測対象に入れますか?自転車を押して歩く人はどうでしょう?車椅子に乗った人は?乳母車に乗った幼児はどうですか?いずれも自分で歩いていません。含めるとしたら、親に抱っこされた子供は数えますか?お腹の大きなお母さんはどうしましょう。2人と数えますか?

よく起きる問題は、子供がイタズラして、何度も何度も同じ計測員の前を横切ることです。イタズラではないにしても、同じ人が、搬出入など何かの理由で何度も往復することはありえます。私は、目の前を何百人と言うお神輿担ぎの人や関係者に通過されたことがあります。デモだってあります。

計測対象をしっかり決めておかなければ、「常識の範囲」という範囲は計測者によってマチマチになってしまいます。

 

 

③計測時の難

そこまで、厳密に決めたとしても、最後はこの問題が残ります。同じ計測場所で同じ時間帯、自動車を計測しても、計測結果は決して同じになりません(図表3)。

 

 

計測によって2,3割の違いが出ても不思議ではありません。道路にしても、街にしても、まったく状況が同じ日などという日は1日ないからです。常に毎日が異なります。「似てる」だけに過ぎません。時には、「似てさえもない」日があります。

その中のたった一日、しかも、一部の時間だけ取り出して、交通量を計測する意味がどこにあるのでしょう。そんなに正確にしたいなら、店をオープンした後、一日中計測することです。そうすれば、少なくとも、その日の計測結果ですから、事実として正確なはずです。でも、これでは、意味がありませんね。

 

 

キャッチ率はどうやって算出するのか

 

こうして交通量には3つの難があることが分かりました。つまり、交通量とは、とってもあやふやな数値で、これを「事実」として扱うのは避けたほうが無難です。一つの目安でしかありません。

その目安に、キャッチ率を掛ける。そして、やはり、このキャッチ率も回転率と同じくらい曲者です。この値がいくつになるか、そのような公式統計はありません。ですから、調べて自分で作るしかありません。

たとえば、ある有名なファストフードの交通量と客数、そしてキャッチ率を算出したものが図表4です。

 

 

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問題のキャッチ率、下は数%から上は50%近くにもなっています。店前を通る人の実に2人に1人がこの店を利用していることになります。驚くべき数値です。これほど店によって、あるいは立地によってキャッチ率が違うのは、困り者です。

初めてお店を出そうと計画している人が、よく陥るワナがここにあります。交通量を朝から晩まで、時には深夜や休日も真面目に数える。ここまでは素晴らしいことです。ですが、ここから売上予測するために、「100人に3人は来店してくれるだろう」とか、「10人に1人は軽いはずだ」と決めつけてしまう。

 

 

しかし、「正しい」キャッチ率など、そもそも無いのですから、誰もこれを咎め立てする人はいません。せいぜい「その数字、少し甘くないかしら」と感覚的に言うのがやっとでしょう。

 

「深夜も含めて、7351人が店前を通っていますから、キャッチ率2%として1日147人は来てくれます。客単価1000円と低く見積もっても1日14.7万円。1か月で、その30倍として月商441万円です。これなら、じゅうぶんやっていけます」

この考えの筋道に間違いはありません。しかし、多くの失敗者の失敗理由がこうした「甘い思い込み」にあることもまた事実です。

交通量とキャッチ率、あなたは決して惑わされないようにしてください。

 

 

 

 

 

 

(プロフィール)

林原安徳はやしはら やすのり
売上予測コンサルタント。昭和31年さいたま市生まれ。 東京大学卒業後、日本マクドナルド(株)に入社。出店調査部にて、1,000店舗単位の成功を決める「立地と売上予測」を基礎研究し実践応用する。
独立後、理論を独自に深耕させSORBICS(ソルビクス)と命名。これに基づき、チェーン展開する多くの企業や個人をコンサルティングしている。主な著作に「実践・売上予測と立地判定」(商業界)「最新版 これが繁盛立地だ!」(同文舘出版)。無料メルマガを配信中。

 

 

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林原安徳:有)ソルブは、立地と高精度/売上予測で「不振店」を根絶します。

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