商圏情報の入手法でわかる店舗開発マンの真剣度。連載3

(有)ソルブ 林原安徳

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商圏情報の入手法でわかる店舗開発マンの真剣度。連載3

店長の立地,商圏,店舗開発,飲食店経営

2020/10/20 商圏情報の入手法でわかる店舗開発マンの真剣度。連載3

 

いよいよ初夏ですね。

しかし、油断はできません。

今年は早くもエルニーニョが発生しており、加えて、アイスランドの火山大爆発で、世界中の人々の生活に悪い影響が及ぶことが懸念されています。


 私たち「食」に携わる者にとってこれから起こるであろう異常気象には敏感、切実にならざるを得ません。

 

 

切実といえば、店舗開発もたいへん「切実」な問題に直面しています。

 

ここ数年続いた開店業務の凍結で、より精度の高い出店が求められるようになっているからです。

 

商圏分析図5

 

加えて、どこの飲食チェーン企業も人材不足から人材枯渇に移行し始めています。

 

店を増やさなければ、立地のリスクは回避できても増収できず、既存店の売上げが落ちてきているためどんどん全体の売上げがシュリンク(縮小)してしまいます。

かといって、人材もいないのに、いても立地を判断できないのに店を増やせばたちまち赤字のオンパレードになるのは目に見えている。

実に「切実」です。

 

 

ですから、店舗開発を行っている人は、個人起業家も含め、このコーナーをよく読んで早く“立地のイロハ”を身に着けて行ってください。

 

さて、きょうの本題は、「商圏情報の入手法」です。といっても難しい話をしようというのではありません。“商圏情報の把握もせずに、店を出してはいけない”ということを話したいと思います。

 

 

物件の良否は、その立地によって、商圏の状態もマチマチです。

そして、物件自体のこと、つまり、人や車からの視界性評価やインアウトのしやすさ、あるいは面積や間口の大きさといったことの前に、その商圏を知っておくことはとても大切です。

 

なぜなら、駅に隣接しているとか、商業TGの直前にあるとか、どんなに立地が良い場合でも、そこの商圏が悪ければ、期待した通りの売上げは望めないからです。

 

逆に、駅から離れている、TGも近くにないというような場合でも、商圏が良いと驚くほど高い売上げになったりするのです。

 

 

マクドナルドの開店でもそういうことはしばしば起こりました。

なぜこんなに売れるのだろうと首をかしげるばかりの大繁盛してしまう店が時々現れたのです。

 

当時は、今ほど、商圏の実体について知るすべがありませんでしたので、出店してみて初めて、その商圏の良質性がわかったものです。

 

(余談になりますが、そういう店が現れると、「その商圏は【(マクドナルドを)待ってたエリア】だったんだよ」と、調査担当者は弁明するしかなかったのです)

 

所得情報図10

 

商圏が良い、悪いとはどういうことを指すのでしょう。これには3通りの意味があります。


(1)まず、「量」の問題です。それは「商圏の広がり、または商圏の制約」と「密度」を掛け合わせたものです。

 

要するに、商圏が道路に沿ってどこまで広がる可能性を持っているのか、あるいは、どこで、大河川や幹線道路などの大きな制約を受けるのかを知ることです。

 

「密度」とは、人口密度、世帯数密度のことを指します。言わずもがな商圏が大きいほど、大きな売上げを望めます。

 

 

 

(2)次に、「質」の問題です。

そこに住んでいる人、働いている人をお客として見た場合のお客の属性に関わることです。

 

例えば、年齢別人口構成や男女比、集合住宅に住む人の比率、あるいは職業の比率、さらには、通勤や通学で使う交通手段(自動車・バス・バイク・自転車・電車・徒歩)なども重要な調査事項です。

 

さらに、その商圏は、商業的に流出している(つまり、地元にお金を落とさないで別の都市などへ行ってお金を使っている)ところなのかを調べることはとても有意義なことです。

 

従来から、単に「人口さえ多くいれば商売は成り立つ」のようなことが言われ続けてきましたが、この考えは現代では通用しません。

 

仮に、人口などほとんどいないような場所であったとしても、繁盛できる街、地域は全国至るところにあるからです。

 

もちろん、人口は重要な要素の一つです。

 

 

また、昼間人口(昼間に働きに出てしまう人を人口から引き算し、入ってくる人を足し算した数字です)もそうです。

 

しかし、その何十倍も重要な人口は、購買人口です。

 

 

購買人口は、その地域の小売業年間販売額を、107万円(1人当たりの年間販売額)で割ったものです。

 

購買人口が、人口や昼間人口よりも高ければ、そこは“流入商圏”であり、売れる可能性を秘めた商圏です。

 

逆に、人口や昼間人口のほうが、購買人口よりも高いというのであるならば、そこでの繁盛可能性は低いと考えるのです。

 

 

 

 

(3)さて、最後に重要なこと。

 

良い、悪いを決めることは何でしょう。

 

それは、同業店の存在です。

 

これを、単に“競合店”と呼ばないことには理由があります。

 

同業店の存在は、「お客を引っ張ってくる」あるいは「お客にそういう種類のお店があることを知ってもらい、経験してもらうことで、馴染みをもってもらう」というプラスの面があるからです。

 

これを、同業店による「市場拡大」と呼んでいます。

 

 

問題は、市場拡大が起きた後に来ます。

 

つまり、自店舗の近くにまで、お客は来てくれたが、最後の決定において、自店舗が選ばれるとは限りません。

 

これが、“競争”です。この競争に勝てば、お客は自店舗に来ていただけます。

 

ですから、商圏内にどんな同業店があり、そして、その同業店に勝てるかどうか、これは調査に欠かしてはいけないことです。

 

 

 

 

ところで、以上のようなことを、どうやって調べれば良いでしょうか?

 

この調べ方の上手下手に、店舗開発マンの真剣度が見えてきます。

 

10年ほど前、私の事務所に、ある大型店を全国展開している起業の店舗開発マンがやってこられ、こう言いました。

 

「先生、商圏人口は、勘と経験で適当に書いてますよ。みんな大体わかりますから」

と。

今でもその瞬間は鮮明に思い出します。

 

「商圏人口は『勘』で書けば良い」とそこまで言い切られたのは初めてでしたから。

有名な大チェーン企業がそんな大胆なことをしていた時代でした。

 

不思議なもので、それからほどなくして、その企業は会社更生法を申請し、チェーンは消滅しました。

 

本当にあった怖いお話しです。

 

将来人口図11

 

しかし、当時はこの店舗開発マンの言い分を誰もが認めてしまうような「切実な」事情がありました。


その頃、GIS(ジス:地理情報システム)というソフトウェアが華やかに登場し始めました。

 

どこのチェーン企業も「GISさえ購入しさえすれば、出店は皆うまくいく」という都市伝説が生まれました。

 

しかし、決定的な問題がありました。

 

それは、当時、そのソフトは1台数百万から数千万円とひじょうに高額だったのです。

 

ですから、多くのチェーン企業が導入を躊躇しました。

先ほどのチェーン企業もそうだったのでしょう。

だから、店舗開発マンは「勘」で商圏人口を書いていた」のでしょう。

 

 

しかしながら、最近は、そのGIS(ジス)の価格も急速に下がってきました。

加えて、インターネット(WEB)で会員になると、物件の商圏についてのデータやレポートを短時間で配信してくれるサービスが現れてきたりもしています(図5、10、11)。

 

さらに、GISとまで行かなくても、電子地図帳の中には、ゼンリン社のように、タウンページが全国分まるごと1冊入っていて、例えば半径500kmの同業店(ライバル店)をたちどころに表示してくれるものもあります(下図)。

 

同業店 ゼンリン地図

 

いずれも安いもので1万円弱から高くても1物件数万円と、起業家がその気になればいつでも手に入れられる金額です。

 

このページで紹介している商圏分析は、すべて格安のソフトやインターネット、レポート作成サービスで実現されているものです。

 

こういったサービスなどをどんどん利用し、経験と勘だけに頼った店舗開発から一刻も早く脱却しなければなりません。

 

みなさんも会社の規模や予算に見合ったサービスやソフトを探されることをお勧めします。

 


(筆者注:特に引用先を書いていない図は、便宜上著作権の関係で弊社のソフトウェア「統計てきめん」を使って描いておりますが、それらのほとんどは他のソフトウェアやサービスでも実現できるものです。

「統計てきめん」の地図使用承認(C)昭文社第51G083号)

 

2010.6月号

 


 

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