財政赤字容認の「現代貨幣理論」を“主流派”がムキになって叩く理由

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財政赤字容認の「現代貨幣理論」を“主流派”がムキになって叩く理由

立地経済学 事始め

2019/04/30 財政赤字容認の「現代貨幣理論」を“主流派”がムキになって叩く理由

昨今、「現代貨幣理論(MMT、Modern Monetary Theory)」なる経済理論が、米国、欧州そして日本でも話題となり、大論争を巻き起こしている。

今なぜ、MMTなのか。

景気減速感が強まる一方、金融政策が手詰まりな状況で、「財政政策で活路を」と考える論者や、格差是正やグリーン・ニューディールなどを訴えて財政拡張政策を主張するいわゆるリベラル政治家らが、その理論的な根拠としていることがある。

だが、このMMTに対して、主要な経済学者や政策当局の責任者たちは、ほぼ全員、否定的な見解を示している。日本でも、MMTに関する肯定的な論調はごくわずかだ。それには理由がある。

● 「異端の学説」なのか MMTをめぐり大論争

MMTが注目を集めているのは、その支持者が「財政赤字を心配するな」という主張をするからだとされている。

より正確に言うと、「(米英日のように)通貨発行権を持つ国は、いくらでも自国通貨を発行できるのだから、自国通貨建てで国債を発行する限り、財政破綻はしない」というのである。

 普通であれば、MMTのような「異端の経済学説」が、真面目に取り上げられるなどということは考えられない。無視あるいは一蹴されて終わりだろう。

ところが、極めて面白いことに、MMTは、無視されないどころか、経済学者のみならず、政策当局、政治家、投資家そして一般世論までも巻き込んで、大騒ぎを引き起こしたのである。

● 暴露された 主流派の「不都合な事実」

その理由は、MMTが、主流派経済学者や政策当局が無視し得ない「不都合な事実」を暴露したからである。

もう一度言おう。MMTが突きつけたのは、「理論」や「イデオロギー」ではない。単なる「事実」である。

例えば、MMTの支持者が主張する「自国通貨建て国債は、デフォルト(返済不履行)にはなり得ない」というのは、まぎれもない「事実」である。

通貨を発行できる政府が、その自国通貨を返せなくなることなど、論理的にあり得ないのだ。

実際、「自国通貨建て国債を発行する政府が、返済の意思があるのに財政破綻した」などという例は、存在しない。財政破綻の例は、いずれも自国通貨建てではない国債に関するものだ。

実は、MMT批判者たちもこの「事実」を否定してはいない。その代わりに、彼らは、次のいずれかの批判を行っている。

批判(1)「財政規律が緩むと、財政赤字が野放図に拡大し、インフレを高進させてしまう」

批判(2)「財政赤字の拡大は、いずれ民間貯蓄の不足を招き、金利を高騰させる」

MMTに対する批判は、ほぼ、この2つに収斂している。

では、それぞれについて、その批判の妥当性を検討してみよう。この検討を通じてMMTが指摘した「不都合な事実」とは何かが明らかになるだろう。

● 財政赤字拡大で 「インフレは止まらなくなる」は本当か?

まず「財政赤字の拡大は、インフレを招く」という批判(1)を考えてみよう。

実は、MMT批判者たちが指摘するように、財政赤字の拡大はインフレを招く可能性はある。これはMMT自身も認める「事実」だ。

政府が、公共投資を増やすなどして財政支出を拡大すると、総需要が増大する。総需要が増大し続け、総供給が追い付かなくなれば、当然の結果として、インフレになる。

それでもなお、野放図に財政赤字を拡大し続けたら、インフレは確かに高進するだろう。

ということは、MMT批判者たちもまた、「インフレが行き過ぎない限り、財政赤字の拡大は心配ない」「デフレ脱却には、財政赤字の拡大が有効」と認めているということである。

言い換えれば、仮に「財政規律」なるものが必要だとすれば、それは「政府債務の規模の限度」や「プライマリーバランス」ではなく、「インフレ率」だということだ。

すなわち、インフレ率が目標とする上限を超えそうになったら、財政赤字を削減すればいいのである。

そして、米国も欧州も低インフレが続いており、日本にいたっては20年もの間、デフレである。

そうであるなら、財政赤字はなお拡大できる。それどころか、デフレの日本は、財政赤字がむしろ少なすぎるということになる。

この点は、MMTの批判者でも同意できるはずだ。

 実際、MMTを批判する主流派経済学者の中でも、ポール・クルーグマンや、ローレンス・サマーズ 、あるいはクリスチーヌ・ラガルドIMF専務理事らは、デフレや低インフレ下での財政赤字の拡大の有効性を認めている。

ところが、より強硬なMMT批判者は、「歳出削減や増税は政治的に難しい。だから、いったん財政規律が緩み、財政赤字の拡大が始まったら、インフレは止められない」などと主張している。

しかし、これこそ、極論・暴論の類いだ。

そもそも、国家財政(歳出や課税)は、財政民主主義の原則の下、国会が決める。「財政規律」なるものもまた、財政民主主義に服するのだ。

「政治は、財政赤字の拡大を止められない」などというのは、財政民主主義の否定に等しい。

また総需要の超過は好景気をもたらすので、所得税の税収が自動的に増大し、財政赤字は減る。したがって、仮に増税や歳出削減をしなくとも、インフレはある程度、抑制される。

加えて、金融引き締めによるインフレ退治という政策手段もある。

要するに、インフレというものは、経済政策によって止められるものなのだ。

実際、歴史上、ハイパーインフレの例は、戦争・内戦による供給能力の棄損や社会主義国の資本主義への移行による混乱、独裁国家による政治的混乱といった、極めて特殊なケースに限られる。

また、1960年代後半から70年代にかけての米国の高インフレも、ベトナム戦争、石油危機、変動相場制への移行といった特殊な外的要因が主である。

特に戦後の先進国で、財政支出の野放図な拡大が止められずにインフレが抑制できなくなったなどという事例は、皆無だ。

そして何より、日本は、過去20年間、インフレが止められないどころか、デフレから脱却できないでいる。歳出抑制や消費増税といった経済政策によってインフレを阻止できるという、皮肉な実例である。

したがって、「財政赤字の拡大を容認すると、インフレが止まらなくなる」などということはないのだ。

これは、「事実」である。

● 「民間の貯蓄不足を招き 金利を高騰させる」は本当か?

「財政赤字の拡大は民間貯蓄の不足を招き、金利を高騰させる」という批判(2)は、先ほどの批判(1)とは違って、完全に「事実」に反する。

まず、基本的な事実確認から始めよう。

一般に、銀行は、個人や企業から預金を集めてきて、それを貸し出すと思われている。しかし、それは「誤解」である。

実は、銀行は、集めた預金を貸し出すのではない。その反対に、銀行の貸し出しによって預金が創造されるのである。

「預金⇒貸し出し」ではない。「貸し出し⇒預金」なのだ。これが、いわゆる「信用創造」である。

これは、MMT固有の理論ではない。銀行の実務における「事実」にすぎない。

余談だが、この「事実」は、最近でも例えば、参議院決算委員会(2019年4月4日)の質疑で、西田昌司参議院議員が黒田日銀総裁に確認している。ちなみに、黒田総裁はMMTには否定的である。

西田委員「銀行は信用創造で10億でも100億でもお金を創り出せる。借り入れが増えれば預金も増える。これが現実。どうですか、日銀総裁」

黒田総裁「銀行が与信行動をすることで預金が生まれることはご指摘の通りです」

● 政府の赤字財政支出が 民間貯蓄を増やす

貸し出しが預金を創造するというのは、政府に対する貸し出しにおいても、同様である。

すなわち、政府の赤字財政支出(国債発行)は、民間貯蓄(預金)によって賄われているのではない。その反対に、政府の赤字財政支出が、民間貯蓄(預金)を増やすのである。

ただし、政府は民間銀行に口座を開設しておらず、中央銀行にのみ口座を開設している。

それゆえ、実際のオペレーションは、図1の通りとなる。

この図1からも明らかなように、民間銀行は、個人や企業が預け入れた預金をもとに、新規発行国債を購入するわけではない。
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中央銀行から供給された準備預金(日銀当座預金)を通じて、購入するのだ【1】。その上で、政府が財政支出を行うと【2】、それと同額だけ民間貯蓄が増える【4】。

このように、政府の財政赤字は、民間貯蓄の制約を受けていない。その逆に、赤字財政支出が民間貯蓄を増やしているのだ。

しかも、この【1】から【5】までのプロセスは、永続し得る。

そして、このプロセスにおいては、民間銀行の準備預金に変動はない【5】。したがって、赤字財政支出それ自体が、国債金利を上昇させるということもない。

それどころか、銀行が保有する国債を日銀が購入すれば、国債金利を下げることすらできるのだ。

このオペレーションもまた、何もMMTに固有の理論や提案ではなく、普通に行われている「事実」にすぎない。

この「事実」を裏付けるように、過去20年間、日本では、政府債務残高が著しく増大する中で、国債金利は世界最低水準で推移し、上昇する気配はほとんどない(図2)。

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● 超インフレ、金利高騰は起きず 主流派経済学の「権威」脅かす

このように、MMTは、実は、特殊な理論やイデオロギーではなく、誰でも受け入れ可能な単なる「事実」を指摘しているのにすぎないのである。

だが、その「事実」こそが、主流派経済学者や政策当局にとっては、この上なく、不都合なのだ。

例えば、「インフレが行き過ぎない限り、財政赤字の拡大は心配ない」というのが「事実」ならば、これまで、主流派経済学者や政策当局は、なぜインフレでもないのに財政支出の拡大に反対してきたのだろうか。

防災対策や貧困対策、少子高齢化対策、地方活性化、教育、環境対策など、国民が必要とする財政支出はいくらでもあった。にもかかわらず、主流派経済学者や政策当局は、財政問題を理由に、そうした財政支出を渋り、国民に忍耐と困苦を強いてきたのである。

それなのに、今さら「インフレが行き過ぎない限り、財政赤字の拡大は心配ない」という「事実」を認めることなど、とてもできないということだろう。

さらに、「財政赤字は民間貯蓄で賄われているのではない」という「事実」を知らなかったというのであれば、「貸し出しが預金を創造する」という信用創造の基本すら分かっていなかったことがバレてしまう。

主流派経済学者や政策当局にとって、これほど不都合なこともない。彼らのメンツに関わる深刻な事態である。

というわけで、主流派経済学者や政策当局が、よってたかってMMTをムキになって叩いている理由が、これで明らかになっただろう。

その昔、ガリレオが宗教裁判にかけられたのは、彼が実証した地動説が教会の権威を揺るがしたからである。

それと同じように、MMTが攻撃にさらされているのは、MMTが示した「事実」が主流派経済学者や政策当局の権威を脅かしているからなのだ。

(評論家 中野剛志)

 

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