団塊ジュニアが流入するエリア

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団塊ジュニアが流入するエリア

商圏,食品商業

2017/11/16 団塊ジュニアが流入するエリア

商圏分析の方法13 団塊ジュニアが流入するエリアを探す 食品商業2017年1月

 

 

「団塊ジュニア世代が流入することに対応して街づくりがなされ、商業施設が充実していったエリア」を全国から探し出し特定することは容易ではない。

たいていの場合、ジュニアの付かない「団塊世代」とともに日本中の街や居住空間は大きくなっている。

それは、統計をもとに人口ピラミッド(※1)を描くと、日本中のたいていの地域で、多少の違いはあるものの、「団塊世代」とその子供達が子を儲けた「団塊ジュニア世代」がペアになって現れる。

 

 

また、「団塊ジュニア世代」が成人になったのは199194年で、そこでちょうど日本の経済バブル崩壊が始まり、長い経済不況「デフレ」に突入し、破壊的な価格下落、伴う賃金水準の低下、非正規社員の増加や失業率の増加というように、商業地を含むたいていのエリアでは、「発展」よりも「衰退」を示す指標ばかりであるからだ(注2)。

 

商圏分析の方法-A

とは言え、この難問は統計で解けないことはない。

まず、最高の指標は、「35~39歳比率」である。公表されているメッシュ統計(注3)の最新は2010年調査だが、この時点で1971年~74年生まれの団塊ジュニア世代は、ほぼこの年代に当てはまるからだ。

通常、この「35~39歳比率」は、たいてい7%~9%であり、全国どこでも「60~64歳比率」に次いで多い。

そこで、この比率が「10%以上、9%以上、8%以上、6%以上、4%以上」に分類して2次メッシュ(約10km四方)を用いて、日本全国を色分けして表示した。

それが図1である。ただし、「8%以上」がない北海道や九州は表示していない。

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10%以上を示す地域:「赤」が首都圏の中央や北陸などにいくつも散見される。

そこで、この地域を明確にすべく尺度を拡大し関東(図2)、

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関西(図3)、

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北陸(図4)の3地域を表示した(図の一辺は約160kmである)。

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商圏分析の方法-B

○北陸

富山県の内陸にいくつもの「赤」が連続して表示された。そこで、この中心部あたりを中心に半径10kmの円を描き、その統計値を確認したところ、人口総数は「309」と出た(図5)。

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地域の合計人口がこれほど少ないと、比率を計算する際の分母が小さくなるので、相対的に「35~39歳比率」がはね上がってしまう。こういう統計のマジックには注意を要する。北陸では、求めるエリアはなさそうである。また、北陸以外にも、関東周辺、東北に「赤」が表示されたがいずれも同じ理由である。

○関東

「9%以上」を示す「オレンジ」が9か所、「10%以上」を示す「赤」が2ヶ所ある。

ここでは、埼玉県にある「オレンジ」(「越谷」と呼ぶ、図6)と

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東京の「赤」(「臨海副都心」と呼ぶ、図7)に注目することにした。

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商圏分析の方法-C

◆越谷

越谷の2次メッシュを3次メッシュに切り替えて表示した。ここでは比率の最高ランクは「12%以上」である。すると、4か所①~④の地域が浮かび上がる(①松伏、②きよみ野、③レイクタウン、④高富 と呼ぶ)

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  • 松伏での比率は12.3%とひじょうに高い。地域は住宅地としてきわめて高度に整備されており、学校、公園、住宅の景観がよく、かつ比較的安価な分譲の戸建て家屋が多い。新しくできた住宅街であり(写真1)、
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  • ここに多数の「団塊ジュニア世代」が子供を連れて住み始めたことは見て取れる。したがって、人口ピラミッドには「団塊ジュニア世代」と「団塊ジュニアのジュニア世代」の2つというひじょうに珍しいピークがある(図12①)。

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  • とは言え、この地域の世代の需要は近くに出店する「いなげや」を主体とした「松伏ニュータウンショッピングセンター(8022㎡)」や「かすみ(2778㎡)」にほぼ吸引されてしまう。周辺の広い範囲での「人口増加」がない限り、なかなかこれ以上の商業拡大は難しいと思われる。メッシュ人口は2046人。
  • きよみ野 人口は9048人。ここの「団塊ジュニア世代」比率は6%であり、松伏同様「団塊世代」の比率は県平均(図12②の折れ線)

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  • と比べてもひじょうに低い。

地域内にコモディイイダ(1498㎡)が1997年に、また、カスミ吉川店(1753650台)もこの近くに‘06年にオープンしているものの、「買物不便」と感じる消費者は少なくない。①同様、ここも「住宅地先行型のエリア」と言えよう。

  • レイクタウンは、2008年巨大なイオンレイクタウン(店舗面積180427㎡駐車場10400台)が、周辺の公共治水整備工事とともに、オープンしたことを皮切りに、突然人口が増えた地域である。そのため、人口ピラミッドのきわめて奇怪な形である(図12③)。

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「商業&住宅の同時開発型のエリア」と呼べる。

  • 「団塊ジュニア世代」比率は3%と高いもののメッシュは490人に過ぎない。「吉川美南駅」が新設され、今まさに「住宅地先行型のエリア」になろうとしている地域である。

◆臨海副都心

この地域では、「赤」になる3地域を⑤有明、⑥夢の島、⑦倉庫地帯と呼ぶ。

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  • 有明

での比率は、19.8%。人口は1642人。戦後の埋め立てで出来た新しい土地であるが、有明コロシアムやがん研有明病院などのほか数棟の高層マンションがあるほどで、まだまだ手つかずの空き地が広がる地域である。

 

  • 夢の島
  • 倉庫地帯 
    いずれも、物流倉庫が多く立地しており、人口は各45人と僅かである。

○関西

関西の2次メッシュで見つかった比率の高い地域は1ヶ所。そこで、ここを「琵琶湖東岸」と呼ぶ。さらに、3次メッシュを表示させると、⑧(守山と呼ぶ)と⑨(栗東と呼ぶ)の2ヶ所が見つかる。

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商圏分析の方法-D

  • 守山での比率は12.4%であるが、人口は4237人とたいへん多い(図13)。

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  • 栗東での比率は高く14.0%であり、かつ人口も10411人と極めて多い(図14)。

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この2つは、これまでの①~⑦の状況とは全く違う。

比率が高く、人口が多い。加えて、ほぼ隣接している。

栗東駅が出来たのは1991年と比較的新しいが、その駅前には アル・プラザ栗東(平和堂 8000㎡ テナント2870㎡ 駐車場700台)が出店している。

栗東駅の開業とインターチェンジがあるという交通の要衝となるため、栗東市は、工場や流通業務施設、住宅開発に力を入れたところ、市の財政が好転した。そのため東洋経済の「住みよさランキング」では2005年と2007年に全国1位を取るなど、さらに人口増加を促した。

人口ピラミッド(図15)を見ると0~4歳児の人口比率が県平均の2倍になっており、定住し子育てをする「団塊ジュニア世代」が多いことが読み取れる。

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商圏分析の方法-E

 

また、両エリアとも今後も順調に人口が伸びていくことが予測される(図12⑧、図12⑨人口予測)。

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さて、両エリアでの「購買人口(注4)」を計算すると、⑧4153人 ⑨5711人となり、⑧守山は人口とほぼ等しいが、⑨栗東は人口の半分である。

これらの需要の行き先は、さらに南の「草津市」になっていることが容易に読み取れる。

なぜなら、平成23年商業統計を用いた草津市の人口1人当たり年間小売販売額が1,209千円になるからだ(注4)。

 

商圏分析の方法-F 

すると改めて、「草津市」を見る必要がある。

古くは、江戸時代には東海道と中山道が接する宿場町(草津宿)として栄えた。その交易の要衝としての役割は、大きく今に至るもそれは変わらない。この利点をとらえて、電機などの工場が多数立地する工業都市になっている。また、鉄道利用で京都市へ約20分、大阪市内へも5060分で行くことができ、交通アクセスはひじょうに良い。

草津駅の東側には、近鉄百貨店、エルティ9321989年)、平和堂等の大型店が軒を並べ、西側には、アル・プラザ、ジオワールド、エディオンなどが立ち並ぶA-QUARE(エイスクエア1996年 58611㎡ 3000台)がある。

いずれも、改装を繰り返しており、消費者を引き留めてやまない。

草津駅を中心とした4km圏

年齢別人口(図15-3) 2010年の国勢調査では、

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団塊ジュニア世代の比率は、9.58%と極端に高い方ではないものの、09歳の子供世代も含めて全国平均を上回っている。

これを10年前、(図15-1

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5年前2005年(図15-2

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と比較してみると、その変化は自然に移行していったことがわかる。

2000年(図15-1)には、団塊世代(5054歳)は全国とほぼ同じ比率の8.1%であったことがわかる。数にして11,967人。

そして、団塊ジュニア世代(2529歳)は9.7%。数にして、14,656人である。

これが、2005年(図15-2)には団塊世代比率は7.4%と減ったものの数は12,014とほぼ同じ。対して、団塊ジュニア世代は、9.9%、16,036人、比率、数ともに増えている。

そして’10年には、団塊世代比率こそ6.8%と減らしているものの数は11,855と微減=自然減に近い。対して、この間も団塊ジュニア世代は16,752人とさらに700人以上増えている。

 

これは、この草津駅4km圏における「団塊世代」は残りつつ、「団塊ジュニア世代」が流入し、その次の世代も増加しているという理想的な人口増=街造りが成功していることを推測させる。

16は、「人口総数」と「団塊ジュニア世代人口」の2項目をクロス分析したものである。人口が多くかつ団塊ジュニアも多いメッシュは「黄色」で表示される。

北から順に、守山駅、栗東駅、草津駅、南草津駅、そして瀬田駅に至るまで、どこも黄色であるから、駅を中心に団塊ジュニア世代が転入してきていることが推測される。

その上、人口は今後も順調に増えていくであろうことが予測される(図17)。

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これは全国でもたいへん珍しい。

 

商圏分析の方法-G

ちなみに「住みよさランキング(注5)」では、草津市は兵庫県芦屋市や大阪府箕面市を上回る、2013年~2016年の4年連続近畿ブロック1位を獲得している。

 

一方、先ほどの大型店なども含め、小売店は売上を順調に伸ばし続けている(図18)。

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一点、気になることがあるとすれば、所得水準が全体的にやや低いことである(図19)。

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ファミリー層が多いところで、1世帯当たりの収入が目立って低いことは珍しく、ここでも日本の深刻なデフレ経済が直撃していることを示している。

 

 

 

3962文字

 

1.人口ピラミッド 人口を男女別、下から上へ年齢別に積み上げるように表現したグラフのことを言う。ごく自然な考え方に従えば、若い世代の人口ほど多く、年齢が上がるほど少なくなるので、ちょうどこのグラフはエジプトなどにあるピラミッドのような形になるので「人口ピラミッド」と呼ばれている。日本の場合、戦後2度の人口のピーク(194749年生まれ「団塊世代」とその子供達が子を儲けた1971年~74年生まれの「団塊ジュニア世代」)があり、また、その後の少子高齢化があるため、ひじょうにいびつな形になっている。

 

2 指標 人口が減少する。失業者が増える。正社員が減る。パートアルバイトが増える。商店数が減る。小売業年間販売額が減る。小売業従業者数が減る。いずれも国勢調査・商業統計で示されている。

 

3 メッシュ統計 横に1度、縦に3分の2度の地理上の区画(正方形に近似していて、一辺が約80kmとなる)を1次メッシュと呼び、各辺の8等分した区画(同、10km)を2次メッシュ、さらに10等分で3次メッシュ(「基準メッシュ」と呼ぶ)となる。このメッシュ内に国勢調査結果のデータを整備したものをメッシュ統計と言う。今回は2次メッシュと3次メッシュを用いた。

 

4 人口1人当たり年間小売販売額。全国平均は1050千円である。そこで、地域の年間小売販売額をこの平均で割ったものを「購買人口」と呼んでいる。その地域における小売購入の度合いを示しており、人口、昼間人口と比較することで購買流入(流出)の高さをみることができる。

 

5 「住みよさランキング2016」中部・近畿編 東洋経済 『都市データパック』編集部

 

筆者注

ここでは、弊社でライセンス提供している「統計てきめん2プレミア」を用いてすべての分析をしている。ソフトウェア配布サイト“ベクター”で無料ダウンロードできます。

 

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