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ライフとサミットストア
豊島区千川駅周辺で、激突する、ライフとサミットストアの商圏と立地を解析する。 月刊食品商業2013年6月号
有)ソルブ代表 林原安徳
導入
本年4月10日、サミットストア東長崎が豊島区に開店した。そこは、同社のライバル、ライフ千川駅前店から約800mの地点、明らかに両者の顧客はだいぶ重複する距離であって、意識的な激突に違いない。だから、ライフのほうも黙っていない。その開店に先立つ、2月末に全面改装を行った。さて、この激突を立地と商圏の観点からみるとどうなのか、その解析を行ってみた。
本文
今回の解析は、①首都圏における両者の出店配置、②現状の各店の商圏について、③各店の立地、④総評の順に行っていきます。
すでに、本誌、昨年7月号において浅香健一氏がお書きになったように、この両者は一昨年から昨年にかけて首都圏で100店舗を達成し、スーパーマーケット業界をけん引する2大勢力とも言うべきライバル同士となっています。
その出店配置は、図Aにあるように、概ね互いに激突することなく、即ち距離をおいて、首都圏を網羅し、補完しあうかのように分散しています。
ただ、それを良くみると、サミットストアは東京の城西地域に多く、反対にライフは城東地域に多く布陣しています。同氏の言われる「山の手サミット、下町ライフという構図」です。
しかし、近年になってこの構図は微妙に変化してきていることがわかってきました。というのも、新しい2010年実施の国勢調査がまとまり、新しい年収別世帯数の推計値を算出できたからです。
1.統計データが示す両チェーンの類似と相違 図Bは、両チェーンが出店している商圏(1km圏)についてすべて統計データを調べ、その平均値(左側表)を表しています(注1)。
もちろん、統計で判明する項目はこれ以外にもたくさんありますので、ここに挙げたものはその一部に過ぎませんが、中でも主要な項目です。
両チェーンとも、平均としては、概ね300億円から400億円ほどの小売年間販売額のある商圏に出しています。そして、世帯数は2万から2.1万。人口にして42千から45千人です。
しかし、よく見ると、小売年間販売額ではライフの方が63億円ほど多いのに対して、人口ではサミットストアのほうが3千人ほど多い。
ためしに、小売年間販売額を人口で割り算してみて、「人口1人当り小売年間販売額」を求めてみますと、ライフが96.0万円、サミットストアでは75.5万円です。
この違い、実はひじょうに大きな意味があります。
というのは、サミットストアは、需要が大きくて、まだ、小売販売の未成熟(供給が少ない)ところを“意図的に上手に”狙っていると考えることができるからです。
もう一つ、このことを示唆しているデータがあります。
それは、統計の変動率の違いです。この変動率は“標準偏差”を“平均値”で割り算して求めたものです。どんな意味かと言うと、“標準偏差”は、データのバラツキ具合を示す数字です。ですので、この変動率というのは、どれだけ、商圏同士のバラツキが大きいかどうかを示しています。すなわち、この変動率が大きいほど、バラツキが大きい。
では、どうか?果たしてライフの平均変動率(右表)は65%に対して、サミットストアは46%です。この違いは大きい。
分かりやすく砕いて言えば、ライフはいろいろ異なる商圏・立地にどんどん積極的に出店している。対して、サミットストアは、立地や商圏を絞って、慎重に出店している。そういうことがわかります。 また、前回、特徴的だった年収別世帯数ですが、図Cにあるとおり、
値(平均値)こそ若干の差異は残るもののその比率はまったくと言って良いほど同じになっています。ただし、ここでも、変動率は、ライフの方が大きく、所得層の高い地域も、そうでない地域もいろいろな場所に出店していることが伺えます。
営業面の決定的な違い(図1)は、
ライフが食品・衣料・雑貨等ほぼすべてを扱っている売場面積の広い大型店であるのに対し、新たにオープンしたサミットストアのほうはほぼ食品に取扱いを限定し、面積もライフの半分程度あることです。駐車台数もライフの78台に対して、サミットストアは47台と少なめです。
さて、商圏ですが、ここでは、自転車5分圏としました(注2)。その商圏同士が、図2のように激突し、重複していることが一目瞭然でわかります(図2)。
右上●がライフ、左下●がサミットストアです。描かれたスケール円は最も大きなものが、半径1kmとなります。
両店は近いとは一応異なった商圏もあるわけですので、それぞれの統計は図1の通りです。小売年間販売額はライフが172億円、サミットストアが165億円。ほとんど違いがありません。人口では、ライフが27,545人、サミットストアが25,972人ですので、ややライフが上回っている程度です。同様に、他のどの項目においても、ライフの値がやや上回っている程度で、その違いはほとんど無いと言って良いでしょう。
年齢別人口分布(図3-1、図3-2) 左 ライフ 右サミット
各店の実際は横棒グラフで示してあり、左側が男性、右側が女性を示しています。そして、折れ線で示したものが東京都の平均です。
すぐにわかることは、いずれの店も20歳代から30歳代前半の3階層の割合が多いということと、その反対に0歳代から10歳代後半までが少ないという事実です。
前者は、この周辺に、日大芸術学部、武蔵野音大、武蔵大学、立教大学等があって、商圏内に居住しているためと考えられます。後者および高齢者層が多いことは言うまでもなく、この地域も例外なく少子高齢化が着実に進行していることを示しております。
通勤手段(図4-1、図4-2)上ライフ 下サミット
通勤手段の半数以上は「鉄道」であって、これが圧倒的です。2番目が「自転車」、3番目が「徒歩」ですが、この3つが8割近くを占めますので立地を考える上でこの3つを欠かさないことです。この傾向は両店でほとんど変わりません。
経年推移(図5-1、図5-2)
および人口予測(図7-1、図7-2)
いずれの商圏も人口はほぼ横ばいに近い状態で、今後の予測もほとんど増えない状況であることがわかります。反面、世帯数は増える傾向にあり、この点は社会の高齢化にともなう独居老人の増加が認められます。
しかし、一方で、商店数が年次を追うごとに減少に一途を辿っており、販売額においてさえ減少傾向にあります。少子化による需要減、高齢化による来店減がその大きな原因と考えられます。
年収別世帯数(図6-1、図6-2)
世帯の年収に応じて12段階に分けて表示してあります。棒線グラフが当該商圏、折れ線が東京都の平均です。
ほぼ東京都の平均と同じようですが、高所得層が少なく、500万未満の世帯が多いようです。この傾向も両店でほぼ共通しています。
以上、商圏を統計でみる限り、顕著な違いは見当たりません。ほぼ互角の消費者を相手に商売をすることになります。いかに少子高齢化で、家族人数が少ない、出歩かない人々のニーズをつかめるかが勝負の分かれ道になろうかという所です。
スーパーマーケットの立地を見ていく上で重要なことは何でしょう。それを表したのが、図D スーパーの立地要因です。
売上予測モデルを構築する際に判明した立地の要因
第一が、驚くなかれ、駅の影響です。これが3分の1以上の影響を与えます。
「驚くなかれ」というのは、スーパーの回りに「駅」は必要ないというのが、一昔前の常識だったからです。「モノ」がたくさんあればお客は来てくれる。来てくれないとしたら、品質やサービス、価格が良くないからだと言われていました。確かにそれは正論です。しかし、昨今はどうでしょうか。各社、各店が鎬を削って競争している段階ではそうした正論だけでやっていけなくなりました。どんな店であろうと、消費者にとって便利でない立地の店には行かなくなったのです。
事実、弊社が統計を駆使した研究を行った結果この図のようなことがわかりました。
(1).駅影響
さて、ライフとサミットどちらに軍配が上がるか明白です。
ライフには、乗降数32千人の駅がわずか60mの地点にあります(図1)。しかも、この駅利用者は増加しています。一方、サミットストアから、最寄りの駅まで480mもありますし、この駅利用者数そのものも減少しています。これでは駅からの効果は望めません。
(2)競合影響
同業店の存在が、互いに足を引っ張り合うと思われています。しかし、そうとは限らないこともあります。互いにお客を呼び合うこともあるのです。これを「市場拡大」と呼んでいますが、ライフに近接した「つるかめランド」はそうした相乗効果を起こしている可能性大です。それに対して、サミットストアの方は、最寄駅のすぐ近くに東急ストア、西友が立地しており、これらを無視できません。
(3)店舗魅力度
この点は、決してサービス水準や鮮度などの営業的なことを指しているのではなく、店舗の規模や階層構造、店舗様態などを総合しているものです。ここでは、階層も店舗面積も多いライフに軍配が上がります。
(4)商圏規模
さきほどの商圏は自転車5分圏と仮に設定したものでした。では、実態的にはどうなるでしょうか?
ライフはほぼ交差点角地に立地しており、地形もほぼ平面に近いため、東西南北どの方向にも進むことができ、反対に来店することも容易です。とりわけ南東方向の大山駅(東武東上線)までは2kmあるため、商圏を大きく広げることは可能です。
これに対して、サミットストアでは、北は既存のライフストアで商圏が遮られるばかりか、すぐ南を横断する鉄道(西武池袋線)が高架でなく地上を走っているため、踏切が多く、横断するには難があります(とりわけ稼ぎ時の夕方)。したがって、商圏はきわめて制約を受けるでしょう。
(5)道路影響
これは、車での来店し易さを表しています。店への到達しやすさは、ほどほどの幅広の道路があることです。この点でも2つの自動車通行道路に面しているライフは優勢です。
④総評
こうして5つの立地の観点の売上に対する影響度合いの合計は90%です。これらを概観しただけで、ライフ対サミットストアは5対0というスコアになりました。ライフは全勝ですが、サミットストアは手痛い全敗です。もはや、①で示された「手堅いサミットストアの出店」というイメージとはかけ離れた結果です。これでは後々かなりの問題店になる可能性は高いです。
一般論ですがこうしたことが起きる真の原因は、店舗の立地調査と売上予測を厳重に行う部署がないか、正しく機能していないことです。同様なことが続くようなら、このままで良いのか熟慮すべき段階と思われます。
(以上本文4139文字)
注1:2013年5月時点では両チェーン共に首都圏での出店は100店舗を超えておりますが、ここでは、便宜上、最新の昭文社地図に登場する各々87店舗について、地点を同定し、その平均値、標準偏差を求めています。
注2:林原が主宰するソルブ社の“統計てきめん2プレミア”に搭載された拡張機能“時間圏の作成”を用いています。自転車の走行速度12km/h。描く多角形商圏の辺の数50で算出しています。
図A 両チェーンの首都圏での分布。●:サミットストア、○:ライフ
図B 両チェーンの統計データ比較
図C 両チェーンの年収分布比較
図D スーパーの立地要因
図0 ライフとサミットストアの位置関係
図1 ライフとサミットストアの比較表
図2 自転車5分圏とその重なり
図3-1 年齢別分布 ライフ
図3-2 年齢別分布 サミットストア
図4-1 通勤手段 ライフ
図4-2 通勤手段 サミットストア
図5-1 経年推移 ライフ
図5-2 経年推移 サミットストア
図6-1 年収別世帯数 ライフ
図6-2 年収別世帯数 サミットストア
図7-1 人口予測 ライフ
図7-2 人口予測 サミットストア
23/06/12
22/05/20
21/12/30
21/08/04
21/08/03
21/08/01
21/07/31
21/07/10
21/07/09
21/07/08
TOP
豊島区千川駅周辺で、激突する、ライフとサミットストアの商圏と立地を解析する。 月刊食品商業2013年6月号
有)ソルブ代表 林原安徳
導入
本年4月10日、サミットストア東長崎が豊島区に開店した。そこは、同社のライバル、ライフ千川駅前店から約800mの地点、明らかに両者の顧客はだいぶ重複する距離であって、意識的な激突に違いない。だから、ライフのほうも黙っていない。その開店に先立つ、2月末に全面改装を行った。さて、この激突を立地と商圏の観点からみるとどうなのか、その解析を行ってみた。
本文
今回の解析は、①首都圏における両者の出店配置、②現状の各店の商圏について、③各店の立地、④総評の順に行っていきます。
すでに、本誌、昨年7月号において浅香健一氏がお書きになったように、この両者は一昨年から昨年にかけて首都圏で100店舗を達成し、スーパーマーケット業界をけん引する2大勢力とも言うべきライバル同士となっています。
その出店配置は、図Aにあるように、概ね互いに激突することなく、即ち距離をおいて、首都圏を網羅し、補完しあうかのように分散しています。
ただ、それを良くみると、サミットストアは東京の城西地域に多く、反対にライフは城東地域に多く布陣しています。同氏の言われる「山の手サミット、下町ライフという構図」です。
しかし、近年になってこの構図は微妙に変化してきていることがわかってきました。というのも、新しい2010年実施の国勢調査がまとまり、新しい年収別世帯数の推計値を算出できたからです。
1.統計データが示す両チェーンの類似と相違
図Bは、両チェーンが出店している商圏(1km圏)についてすべて統計データを調べ、その平均値(左側表)を表しています(注1)。
もちろん、統計で判明する項目はこれ以外にもたくさんありますので、ここに挙げたものはその一部に過ぎませんが、中でも主要な項目です。
両チェーンとも、平均としては、概ね300億円から400億円ほどの小売年間販売額のある商圏に出しています。そして、世帯数は2万から2.1万。人口にして42千から45千人です。
しかし、よく見ると、小売年間販売額ではライフの方が63億円ほど多いのに対して、人口ではサミットストアのほうが3千人ほど多い。
ためしに、小売年間販売額を人口で割り算してみて、「人口1人当り小売年間販売額」を求めてみますと、ライフが96.0万円、サミットストアでは75.5万円です。
この違い、実はひじょうに大きな意味があります。
というのは、サミットストアは、需要が大きくて、まだ、小売販売の未成熟(供給が少ない)ところを“意図的に上手に”狙っていると考えることができるからです。
もう一つ、このことを示唆しているデータがあります。
それは、統計の変動率の違いです。この変動率は“標準偏差”を“平均値”で割り算して求めたものです。どんな意味かと言うと、“標準偏差”は、データのバラツキ具合を示す数字です。ですので、この変動率というのは、どれだけ、商圏同士のバラツキが大きいかどうかを示しています。すなわち、この変動率が大きいほど、バラツキが大きい。
では、どうか?果たしてライフの平均変動率(右表)は65%に対して、サミットストアは46%です。この違いは大きい。
分かりやすく砕いて言えば、ライフはいろいろ異なる商圏・立地にどんどん積極的に出店している。対して、サミットストアは、立地や商圏を絞って、慎重に出店している。そういうことがわかります。
また、前回、特徴的だった年収別世帯数ですが、図Cにあるとおり、
値(平均値)こそ若干の差異は残るもののその比率はまったくと言って良いほど同じになっています。ただし、ここでも、変動率は、ライフの方が大きく、所得層の高い地域も、そうでない地域もいろいろな場所に出店していることが伺えます。
ここからいよいよライフ千川駅前店とサミットストア長崎店の解析になります。
営業面の決定的な違い(図1)は、
ライフが食品・衣料・雑貨等ほぼすべてを扱っている売場面積の広い大型店であるのに対し、新たにオープンしたサミットストアのほうはほぼ食品に取扱いを限定し、面積もライフの半分程度あることです。駐車台数もライフの78台に対して、サミットストアは47台と少なめです。
さて、商圏ですが、ここでは、自転車5分圏としました(注2)。その商圏同士が、図2のように激突し、重複していることが一目瞭然でわかります(図2)。
右上●がライフ、左下●がサミットストアです。描かれたスケール円は最も大きなものが、半径1kmとなります。
両店は近いとは一応異なった商圏もあるわけですので、それぞれの統計は図1の通りです。小売年間販売額はライフが172億円、サミットストアが165億円。ほとんど違いがありません。人口では、ライフが27,545人、サミットストアが25,972人ですので、ややライフが上回っている程度です。同様に、他のどの項目においても、ライフの値がやや上回っている程度で、その違いはほとんど無いと言って良いでしょう。
年齢別人口分布(図3-1、図3-2) 左 ライフ 右サミット
各店の実際は横棒グラフで示してあり、左側が男性、右側が女性を示しています。そして、折れ線で示したものが東京都の平均です。
すぐにわかることは、いずれの店も20歳代から30歳代前半の3階層の割合が多いということと、その反対に0歳代から10歳代後半までが少ないという事実です。
前者は、この周辺に、日大芸術学部、武蔵野音大、武蔵大学、立教大学等があって、商圏内に居住しているためと考えられます。後者および高齢者層が多いことは言うまでもなく、この地域も例外なく少子高齢化が着実に進行していることを示しております。
通勤手段(図4-1、図4-2)上ライフ 下サミット
通勤手段の半数以上は「鉄道」であって、これが圧倒的です。2番目が「自転車」、3番目が「徒歩」ですが、この3つが8割近くを占めますので立地を考える上でこの3つを欠かさないことです。この傾向は両店でほとんど変わりません。
経年推移(図5-1、図5-2)
および人口予測(図7-1、図7-2)
いずれの商圏も人口はほぼ横ばいに近い状態で、今後の予測もほとんど増えない状況であることがわかります。反面、世帯数は増える傾向にあり、この点は社会の高齢化にともなう独居老人の増加が認められます。
しかし、一方で、商店数が年次を追うごとに減少に一途を辿っており、販売額においてさえ減少傾向にあります。少子化による需要減、高齢化による来店減がその大きな原因と考えられます。
年収別世帯数(図6-1、図6-2)
世帯の年収に応じて12段階に分けて表示してあります。棒線グラフが当該商圏、折れ線が東京都の平均です。
ほぼ東京都の平均と同じようですが、高所得層が少なく、500万未満の世帯が多いようです。この傾向も両店でほぼ共通しています。
以上、商圏を統計でみる限り、顕著な違いは見当たりません。ほぼ互角の消費者を相手に商売をすることになります。いかに少子高齢化で、家族人数が少ない、出歩かない人々のニーズをつかめるかが勝負の分かれ道になろうかという所です。
スーパーマーケットの立地を見ていく上で重要なことは何でしょう。それを表したのが、図D スーパーの立地要因です。
売上予測モデルを構築する際に判明した立地の要因
第一が、驚くなかれ、駅の影響です。これが3分の1以上の影響を与えます。
「驚くなかれ」というのは、スーパーの回りに「駅」は必要ないというのが、一昔前の常識だったからです。「モノ」がたくさんあればお客は来てくれる。来てくれないとしたら、品質やサービス、価格が良くないからだと言われていました。確かにそれは正論です。しかし、昨今はどうでしょうか。各社、各店が鎬を削って競争している段階ではそうした正論だけでやっていけなくなりました。どんな店であろうと、消費者にとって便利でない立地の店には行かなくなったのです。
事実、弊社が統計を駆使した研究を行った結果この図のようなことがわかりました。
(1).駅影響
さて、ライフとサミットどちらに軍配が上がるか明白です。
ライフには、乗降数32千人の駅がわずか60mの地点にあります(図1)。しかも、この駅利用者は増加しています。一方、サミットストアから、最寄りの駅まで480mもありますし、この駅利用者数そのものも減少しています。これでは駅からの効果は望めません。
(2)競合影響
同業店の存在が、互いに足を引っ張り合うと思われています。しかし、そうとは限らないこともあります。互いにお客を呼び合うこともあるのです。これを「市場拡大」と呼んでいますが、ライフに近接した「つるかめランド」はそうした相乗効果を起こしている可能性大です。それに対して、サミットストアの方は、最寄駅のすぐ近くに東急ストア、西友が立地しており、これらを無視できません。
(3)店舗魅力度
この点は、決してサービス水準や鮮度などの営業的なことを指しているのではなく、店舗の規模や階層構造、店舗様態などを総合しているものです。ここでは、階層も店舗面積も多いライフに軍配が上がります。
(4)商圏規模
さきほどの商圏は自転車5分圏と仮に設定したものでした。では、実態的にはどうなるでしょうか?
ライフはほぼ交差点角地に立地しており、地形もほぼ平面に近いため、東西南北どの方向にも進むことができ、反対に来店することも容易です。とりわけ南東方向の大山駅(東武東上線)までは2kmあるため、商圏を大きく広げることは可能です。
これに対して、サミットストアでは、北は既存のライフストアで商圏が遮られるばかりか、すぐ南を横断する鉄道(西武池袋線)が高架でなく地上を走っているため、踏切が多く、横断するには難があります(とりわけ稼ぎ時の夕方)。したがって、商圏はきわめて制約を受けるでしょう。
(5)道路影響
これは、車での来店し易さを表しています。店への到達しやすさは、ほどほどの幅広の道路があることです。この点でも2つの自動車通行道路に面しているライフは優勢です。
④総評
こうして5つの立地の観点の売上に対する影響度合いの合計は90%です。これらを概観しただけで、ライフ対サミットストアは5対0というスコアになりました。ライフは全勝ですが、サミットストアは手痛い全敗です。もはや、①で示された「手堅いサミットストアの出店」というイメージとはかけ離れた結果です。これでは後々かなりの問題店になる可能性は高いです。
一般論ですがこうしたことが起きる真の原因は、店舗の立地調査と売上予測を厳重に行う部署がないか、正しく機能していないことです。同様なことが続くようなら、このままで良いのか熟慮すべき段階と思われます。
(以上本文4139文字)
注1:2013年5月時点では両チェーン共に首都圏での出店は100店舗を超えておりますが、ここでは、便宜上、最新の昭文社地図に登場する各々87店舗について、地点を同定し、その平均値、標準偏差を求めています。
注2:林原が主宰するソルブ社の“統計てきめん2プレミア”に搭載された拡張機能“時間圏の作成”を用いています。自転車の走行速度12km/h。描く多角形商圏の辺の数50で算出しています。
図A 両チェーンの首都圏での分布。●:サミットストア、○:ライフ
図B 両チェーンの統計データ比較
図C 両チェーンの年収分布比較
図D スーパーの立地要因
図0 ライフとサミットストアの位置関係
図1 ライフとサミットストアの比較表
図2 自転車5分圏とその重なり
図3-1 年齢別分布 ライフ
図3-2 年齢別分布 サミットストア
図4-1 通勤手段 ライフ
図4-2 通勤手段 サミットストア
図5-1 経年推移 ライフ
図5-2 経年推移 サミットストア
図6-1 年収別世帯数 ライフ
図6-2 年収別世帯数 サミットストア
図7-1 人口予測 ライフ
図7-2 人口予測 サミットストア