東京都港区南青山2-2-15
ポテンシャルクラスターの恩恵 品川シーサイド
巨大なポテンシャルクラスターの恩恵 品川シーサイド
JR品川駅より約2km南、ここにりんかい線の品川シーサイド駅(駅乗降数3万2521人、注)があり、この駅を中心にした500m圏の支持人口は1213人。都内14位の激戦地です。今回は近接する京浜急行電鉄の青物横丁駅(同4万2668人)、鮫洲駅(同9663人)周辺を含めて実査。
この地域には4つに分けて考えることができます。
地域A
駅に近接して需要を効率よく吸引
青物横丁駅とその周辺の地域。駅の改札を出てすぐに1(セブン)が出店しています。とはいえこれはきわめて限定された商品揃え。駅利用者の需要を満たすことはできません。その代わり、駅を出てやや離れたところに東西ともに2店舗が出店。西側の需要は3が独占する位置にあります。第一京浜に面しているため駐車場がなくとも夜間、深夜の自動車需要が見込まれます。これに対して、商店街の西奥に出店している2は歩行者のみが対象。また、東側では、車通りは少ないながら交差点を挟んで4と5が出店。駅方向からの動線視界性が良い分だけ立地は4がやや有利。
地域B
苦戦強いられているか
北側の路面店がある地域です。
6、7、8はかろうじて角地にあるものの駅を頼りにはできない立地。面している道路こそ違え、商圏が完全にかぶっているばかりか、駅に近い4、5の影響も受けています。ただし、8は海岸通りに面しているため先ほどの3と同様、夜間、深夜の自動車需要が望める立地です。交通量が多過ぎず、かつ道路幅が20mと広く3車線あることも有利な点です。
地域C
巨大なポテンシャルクラスターの恩恵
品川シーサイド駅周辺の地域です。4店が出店しています。
ここは巨大なポテンシャルクラスターがいくつもある立地上たいへん有利な地域といえます。ポテンシャルクラスターとは、人々が密集して就業、あるいは暮らしているような場所で、その地域が物理的に囲まれているため、出入り口が限られているような構造をしている地形を指します。ここには2003年に竣工した23階建ての品川シーサイド楽天タワーをはじめ、18階建ての品川シーサイドサウスタワーや30階建ての品川シーサイドビュータワーなど10棟もの高層ビルが建っています。
通常、高層住宅ビル1棟で中規模クラスのスーパーマーケットに匹敵する需要が発生します。この地域にどれほど大きな需要が発生しているか想像に難くありません。
もちろん、このC地域内には、イオン品川ショッピングセンターが出店しており、生活食料品雑貨や衣料品など生活に必要なものは何でも揃っていると考えられます。
しかし、コンビニの存在意義は、文字通り「便利さ」にあります。立地においても、住所に近い、事業所に近いという便利性が強く働きます。したがって、この地域におけるコンビニエンスストアのいずれも高層ビルの下にある、ないし近接するというだけで十分な売上げを確保できると考えられます。とりわけ、品川シーサイド駅とそれらポテンシャルクラスターとの動線上にある9や10はきわめて有利な立地にあると言えます。
また、独立した店舗を持った11は、深夜の需要も望めます。
地域D
衰退しつつある商店街
鮫洲駅周辺の地域です。
東京に2個所ある運転免許試験場の1つがこの鮫洲にあります。確かに朝夕の人々の流れは駅から試験場の間にできます。しかし、流入要因はこの1つだけと言って良いほどで、昼間、住民のほとんどは流出しているというのが実態です。典型的なリトルマーケットです。ここでは13は閉店しています。14は店前に大きなマンション群がありその需要を独占できる立地にあります。15は信号のある交差点角地に近く、かつ付近の住民の憩いの場となっている運動公園入口からの視界性が良い。駐車場こそありませんが悪い立地ではありません。16は衰退しつつある商店街の中にあって唯一夜も昼も明るい存在ですが、試験場との動線上にはなく問題の残る立地です。
8の「ここを学べ!」
8は住宅街の立地としては中途半端な場所にあります。駅から遠く、人々が集まって来るような交差点に面しているわけでもないからです。しかし、本文に書いたように、夜間、深夜の車客を期待することができます。しかも、地図を見る限り、店が面する海岸通り沿いにはほとんどコンビニがなく、競合性が弱いことも売上を底上げすると考えられます。
14の「ここを学べ!」
駅から離れていたり、交差点になかったらだめ。そう決め込んでいる人がいるかもしれません。しかし、この14は交差点とは名ばかりで信号もなければ通る車や人の数もまばらです。
それでもこの店の立地が良いと言えるのは、店前にあるやや大型のマンション群があるからです。たとえその先には住民がいなかったとしてもじゅうぶんやっていけるだけの需要があります。ぜひともこの場所に足を運んでみて、世帯数を数え売上予測をすることをお勧めします。
近未来予測
京急線の2駅の周辺ではすでに、閉店した店があります。加えて、周りを囲まれ自店舗独自の商圏を確保できていない店がいくつもあります。そのため駅周辺の店のスクラップアンドビルドが始まると予想されます。
一方、品川シーサイド駅周辺の再開発工事はまだ続いている様子が見受けられます。本文に書いたように1ビル1店あってもおかしくない地域ですので、これからも出店の期待がかかります。
注 2007年度、駅別乗降者数総覧‘10(株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所)より
はやしはら やすのり 東京大学卒業後、日本マクドナルドで「立地と売上予測」を基礎研究し実践応用。 現在はチェーン展開する多くの企業や起業家をコンサルティングしている。毎月開催しているセミナー“立地道場”は個人にも店舗開発プロにも人気がある。
24/09/08
23/06/12
22/05/20
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巨大なポテンシャルクラスターの恩恵 品川シーサイド
JR品川駅より約2km南、ここにりんかい線の品川シーサイド駅(駅乗降数3万2521人、注)があり、この駅を中心にした500m圏の支持人口は1213人。都内14位の激戦地です。今回は近接する京浜急行電鉄の青物横丁駅(同4万2668人)、鮫洲駅(同9663人)周辺を含めて実査。
この地域には4つに分けて考えることができます。
地域A
駅に近接して需要を効率よく吸引
青物横丁駅とその周辺の地域。駅の改札を出てすぐに1(セブン)が出店しています。とはいえこれはきわめて限定された商品揃え。駅利用者の需要を満たすことはできません。その代わり、駅を出てやや離れたところに東西ともに2店舗が出店。西側の需要は3が独占する位置にあります。第一京浜に面しているため駐車場がなくとも夜間、深夜の自動車需要が見込まれます。これに対して、商店街の西奥に出店している2は歩行者のみが対象。また、東側では、車通りは少ないながら交差点を挟んで4と5が出店。駅方向からの動線視界性が良い分だけ立地は4がやや有利。
地域B
苦戦強いられているか
北側の路面店がある地域です。
6、7、8はかろうじて角地にあるものの駅を頼りにはできない立地。面している道路こそ違え、商圏が完全にかぶっているばかりか、駅に近い4、5の影響も受けています。ただし、8は海岸通りに面しているため先ほどの3と同様、夜間、深夜の自動車需要が望める立地です。交通量が多過ぎず、かつ道路幅が20mと広く3車線あることも有利な点です。
地域C
巨大なポテンシャルクラスターの恩恵
品川シーサイド駅周辺の地域です。4店が出店しています。
ここは巨大なポテンシャルクラスターがいくつもある立地上たいへん有利な地域といえます。ポテンシャルクラスターとは、人々が密集して就業、あるいは暮らしているような場所で、その地域が物理的に囲まれているため、出入り口が限られているような構造をしている地形を指します。ここには2003年に竣工した23階建ての品川シーサイド楽天タワーをはじめ、18階建ての品川シーサイドサウスタワーや30階建ての品川シーサイドビュータワーなど10棟もの高層ビルが建っています。
通常、高層住宅ビル1棟で中規模クラスのスーパーマーケットに匹敵する需要が発生します。この地域にどれほど大きな需要が発生しているか想像に難くありません。
もちろん、このC地域内には、イオン品川ショッピングセンターが出店しており、生活食料品雑貨や衣料品など生活に必要なものは何でも揃っていると考えられます。
しかし、コンビニの存在意義は、文字通り「便利さ」にあります。立地においても、住所に近い、事業所に近いという便利性が強く働きます。したがって、この地域におけるコンビニエンスストアのいずれも高層ビルの下にある、ないし近接するというだけで十分な売上げを確保できると考えられます。とりわけ、品川シーサイド駅とそれらポテンシャルクラスターとの動線上にある9や10はきわめて有利な立地にあると言えます。
また、独立した店舗を持った11は、深夜の需要も望めます。
地域D
衰退しつつある商店街
鮫洲駅周辺の地域です。
東京に2個所ある運転免許試験場の1つがこの鮫洲にあります。確かに朝夕の人々の流れは駅から試験場の間にできます。しかし、流入要因はこの1つだけと言って良いほどで、昼間、住民のほとんどは流出しているというのが実態です。典型的なリトルマーケットです。ここでは13は閉店しています。14は店前に大きなマンション群がありその需要を独占できる立地にあります。15は信号のある交差点角地に近く、かつ付近の住民の憩いの場となっている運動公園入口からの視界性が良い。駐車場こそありませんが悪い立地ではありません。16は衰退しつつある商店街の中にあって唯一夜も昼も明るい存在ですが、試験場との動線上にはなく問題の残る立地です。
8の「ここを学べ!」
8は住宅街の立地としては中途半端な場所にあります。駅から遠く、人々が集まって来るような交差点に面しているわけでもないからです。しかし、本文に書いたように、夜間、深夜の車客を期待することができます。しかも、地図を見る限り、店が面する海岸通り沿いにはほとんどコンビニがなく、競合性が弱いことも売上を底上げすると考えられます。
14の「ここを学べ!」
駅から離れていたり、交差点になかったらだめ。そう決め込んでいる人がいるかもしれません。しかし、この14は交差点とは名ばかりで信号もなければ通る車や人の数もまばらです。
それでもこの店の立地が良いと言えるのは、店前にあるやや大型のマンション群があるからです。たとえその先には住民がいなかったとしてもじゅうぶんやっていけるだけの需要があります。ぜひともこの場所に足を運んでみて、世帯数を数え売上予測をすることをお勧めします。
近未来予測
京急線の2駅の周辺ではすでに、閉店した店があります。加えて、周りを囲まれ自店舗独自の商圏を確保できていない店がいくつもあります。そのため駅周辺の店のスクラップアンドビルドが始まると予想されます。
一方、品川シーサイド駅周辺の再開発工事はまだ続いている様子が見受けられます。本文に書いたように1ビル1店あってもおかしくない地域ですので、これからも出店の期待がかかります。
注 2007年度、駅別乗降者数総覧‘10(株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所)より
はやしはら やすのり
東京大学卒業後、日本マクドナルドで「立地と売上予測」を基礎研究し実践応用。 現在はチェーン展開する多くの企業や起業家をコンサルティングしている。毎月開催しているセミナー“立地道場”は個人にも店舗開発プロにも人気がある。