東京都港区南青山2-2-15
都内8位の激戦地 上石神井
第11回 上石神井 月刊コンビニ連載2012年1月号
練馬区の南西、杉並区に近い西武新宿線上石神井駅(駅乗降数4万3987人、注)。駅を中心とした500m圏の支持人口は1101人。都内8位の激戦地です。
地域A
どれも駅から見えない
駅の南側の地域。この地域では、駅を利用する歩行者をいかに効率的に吸引できるかがポイントです。ベストは駅に隣接ないし近接していることです。しかし、残念ながら、いずれも駅からは離れ、商店街の中ほどにあります。1はファミリーマート、3はセブンで間に挟まれた立地にあった2は閉店し、別のチェーンになってしまいました。
地域B
車客と徒歩客が期待できる
駅のさらに南側で、千川通り沿いの地域です。
4は交差点に面している割には敷地が広く車は9台以上止められます。車客を取れるばかりか、真向いがスーパーマーケット(TG交通発生源)であるためそこからのプラスの影響も期待できる立地です。もちろん、通行車両、通行人の多い交差点にあること自体、そこがTGになりますから良い立地です。
5はローソン100。駐車場がなく車客は深夜などを除いてあまり期待できません。しかし、店舗横の路地は、さらに南側に住む人々が駅に向かう際の動線になっており決して不利な立地ではありません。
地域C
駅に続く強い動線を狙う
駅の北側の地域。地図上では6が駅に最も近く距離は50mほどです。しかし、実際は駅の乗降口およびその周辺から直接見える位置にはありません。また、店前を往来する動線は弱く、時おり見かける住民と、連れだって歩く通学の高校生くらいです。6はこの数年以内にサンクスからローソン100に業態変更しています。
同動線のさらに先に7がありますが、TGとなるものがなく、道からセットバックしているため視界性にきわめて難があります。
強い動線沿いにあり、かつ駅からもさほど遠くない角地に8が出店しています。この1年半以内の出店ですが、3店の中では最も良い立地と言えます。
地域D
車客をいかに吸引できるか
駅からさらに北、新青梅街道に沿った地域
その8と大きく競合すると思われるのが9です。
9はせっかく車客を吸引できる絶好の交差点に面していながら駐車場がありません。そのためそのすぐ近くの早稲田大学高等学院(約1500人)や周辺住民の徒歩来店を期待するしかありません。
しかし、さらに厳しいのは10です。信号のある角地で横断歩道に近い立地にあるものの駐車場はなく、南北の住民動線さえややはずしています。
11は、15台止められる広い敷地があり、かつ車や歩行者を一時停止させてくれる信号付き交差点の角地にあります。さらに、車道に沿った街路樹がほとんどなく、看板も100m以上離れた地点から見えます(視界性評価:3)11はほとんど理想形に近い立地にあると言えます。
12は新青梅街道からやや入った南北を貫く道路沿いにあります。敷地も広く11台以上止められます。しかも、街路樹が店前付近でなくなっており、交差点に近づきスピードを下げた車からの視界性はきわめて良好です。また、ここから数キロにわたって同業店がないため普通車のみならず大型車にとっても便利な立地です。事実、大型車も頻繁に出入りする状況が見受けられます。
5の「ここを学べ!」
5は確かに車客を期待することはできません。しかし、通常の立地に比べ2つの優れた点があります。一つは、店前が住民の駅に向かうために集中する動線になっていることです(図中の矢印)。これによって相当数の徒歩による衝動来店が望めます。
もう一つは高層マンションに隣接していることです(図中の斜線した建物。いずれも8階建て)。これによって相当数の目的来店が加算されます。
11の「ここを学べ!」
看板はどこに設置しても同じと思っている人はいないでしょうか?そう思っているとしたら大間違いです。綿密に計算して看板の位置を決めなければちょっとした違いで致命的なマイナスになることがあります。
11の看板は、店のすぐ横ではなく、わざわざ敷地の先端部分に置いています(S)。ここに掲出することによって、その手前にある大きな建物などの陰に隠れることなく100m手前(図中A、B)からの視界性が良好です。絶妙な看板の出し方と言えます。
近未来予測
この数年で、閉店1、業態変更2、新規出店1です。まさしく激戦の様相です。
しかし、上石神井駅は西武新宿線の中でも急行が止まる便利な駅であるうえ、何の用途もなく放置された土地や畑が数多く点在していることから、マンション建設などが進む余地がじゅうぶんあります。これは商圏の潜在的購買力が高まることに繋がり、長期的にはコンビニ出店の余地があると考えることができます。
しかし、それまでの数年間は、立地上の不利な条件にあるいくつかの店は閉店や業態変更を余儀なくされると思われます。
注 2007年度、駅別乗降者数総覧‘10(株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所)より
はやしはら やすのり 東京大学卒業後、日本マクドナルドで「立地と売上予測」を基礎研究し実践応用。 現在はチェーン展開する多くの企業や起業家をコンサルティングしている。毎月開催しているセミナー“立地道場”は個人にも店舗開発プロにも人気がある。03-3226-1452 http://www.sorb.co.jp
24/09/08
23/06/12
22/05/20
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第11回 上石神井 月刊コンビニ連載2012年1月号
練馬区の南西、杉並区に近い西武新宿線上石神井駅(駅乗降数4万3987人、注)。駅を中心とした500m圏の支持人口は1101人。都内8位の激戦地です。
地域A
どれも駅から見えない
駅の南側の地域。この地域では、駅を利用する歩行者をいかに効率的に吸引できるかがポイントです。ベストは駅に隣接ないし近接していることです。しかし、残念ながら、いずれも駅からは離れ、商店街の中ほどにあります。1はファミリーマート、3はセブンで間に挟まれた立地にあった2は閉店し、別のチェーンになってしまいました。
地域B
車客と徒歩客が期待できる
駅のさらに南側で、千川通り沿いの地域です。
4は交差点に面している割には敷地が広く車は9台以上止められます。車客を取れるばかりか、真向いがスーパーマーケット(TG交通発生源)であるためそこからのプラスの影響も期待できる立地です。もちろん、通行車両、通行人の多い交差点にあること自体、そこがTGになりますから良い立地です。
5はローソン100。駐車場がなく車客は深夜などを除いてあまり期待できません。しかし、店舗横の路地は、さらに南側に住む人々が駅に向かう際の動線になっており決して不利な立地ではありません。
地域C
駅に続く強い動線を狙う
駅の北側の地域。地図上では6が駅に最も近く距離は50mほどです。しかし、実際は駅の乗降口およびその周辺から直接見える位置にはありません。また、店前を往来する動線は弱く、時おり見かける住民と、連れだって歩く通学の高校生くらいです。6はこの数年以内にサンクスからローソン100に業態変更しています。
同動線のさらに先に7がありますが、TGとなるものがなく、道からセットバックしているため視界性にきわめて難があります。
強い動線沿いにあり、かつ駅からもさほど遠くない角地に8が出店しています。この1年半以内の出店ですが、3店の中では最も良い立地と言えます。
地域D
車客をいかに吸引できるか
駅からさらに北、新青梅街道に沿った地域
その8と大きく競合すると思われるのが9です。
9はせっかく車客を吸引できる絶好の交差点に面していながら駐車場がありません。そのためそのすぐ近くの早稲田大学高等学院(約1500人)や周辺住民の徒歩来店を期待するしかありません。
しかし、さらに厳しいのは10です。信号のある角地で横断歩道に近い立地にあるものの駐車場はなく、南北の住民動線さえややはずしています。
11は、15台止められる広い敷地があり、かつ車や歩行者を一時停止させてくれる信号付き交差点の角地にあります。さらに、車道に沿った街路樹がほとんどなく、看板も100m以上離れた地点から見えます(視界性評価:3)11はほとんど理想形に近い立地にあると言えます。
12は新青梅街道からやや入った南北を貫く道路沿いにあります。敷地も広く11台以上止められます。しかも、街路樹が店前付近でなくなっており、交差点に近づきスピードを下げた車からの視界性はきわめて良好です。また、ここから数キロにわたって同業店がないため普通車のみならず大型車にとっても便利な立地です。事実、大型車も頻繁に出入りする状況が見受けられます。
5の「ここを学べ!」
5は確かに車客を期待することはできません。しかし、通常の立地に比べ2つの優れた点があります。一つは、店前が住民の駅に向かうために集中する動線になっていることです(図中の矢印)。これによって相当数の徒歩による衝動来店が望めます。
もう一つは高層マンションに隣接していることです(図中の斜線した建物。いずれも8階建て)。これによって相当数の目的来店が加算されます。
11の「ここを学べ!」
看板はどこに設置しても同じと思っている人はいないでしょうか?そう思っているとしたら大間違いです。綿密に計算して看板の位置を決めなければちょっとした違いで致命的なマイナスになることがあります。
11の看板は、店のすぐ横ではなく、わざわざ敷地の先端部分に置いています(S)。ここに掲出することによって、その手前にある大きな建物などの陰に隠れることなく100m手前(図中A、B)からの視界性が良好です。絶妙な看板の出し方と言えます。
近未来予測
この数年で、閉店1、業態変更2、新規出店1です。まさしく激戦の様相です。
しかし、上石神井駅は西武新宿線の中でも急行が止まる便利な駅であるうえ、何の用途もなく放置された土地や畑が数多く点在していることから、マンション建設などが進む余地がじゅうぶんあります。これは商圏の潜在的購買力が高まることに繋がり、長期的にはコンビニ出店の余地があると考えることができます。
しかし、それまでの数年間は、立地上の不利な条件にあるいくつかの店は閉店や業態変更を余儀なくされると思われます。
注 2007年度、駅別乗降者数総覧‘10(株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所)より
はやしはら やすのり
東京大学卒業後、日本マクドナルドで「立地と売上予測」を基礎研究し実践応用。 現在はチェーン展開する多くの企業や起業家をコンサルティングしている。毎月開催しているセミナー“立地道場”は個人にも店舗開発プロにも人気がある。03-3226-1452 http://www.sorb.co.jp