買物不便地化の原因・背景

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買物不便地化の原因・背景

商圏,食品商業

2017/11/07 買物不便地化の原因・背景

商圏分析の方法 買物不便地化の原因・背景

商圏分析の方法-A

買物の不便な場所が増えていることは、2007年の商業統計調査ではすでに知られていました。

1は、東京駅を中心にした縦横50km四方の「人口分布」を表したものです。多少の濃さ(人口密度)の違いはあるものの、ほぼ全域に人々が分布していることがわかります。

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商圏分析の方法-B

一方、2007年商業統計で判明した小売年間販売額が1999年のそれに対して、減少している地域、それも3割以上減少している地域を表したものが、図2です。

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商圏分析の方法-C

人口分布と見まごうばかりに、50km四方のこれまたほぼ全域にわたって広がっていることがわかります。

 

この図は、まさしく、本来は首都圏という「買い物もひじょうに便利」というところでさえ”小売業の衰退”が起きていることを示しています。そして、残念なことに、これは全国的な現象です。

この原因の主なものは、(1)スーパーマーケットチェーンやショッピングセンター、GMSなど企業化された大規模店の増加と、(2)その煽りを受けた個人商店、商店街の衰退と言えるでしょう。

しかし、東京をはじめ大都市の中心地域では、人々の移動手段が鉄道・バス・自転車等たくさんあって駅間の距離も狭いなどの好条件が揃っているため、「不便性」はさほど大きな問題として取り上げられることはありません。

(もちろん、東京の四谷、赤坂、銀座、日本橋といった超有名な地域に住んでいる人々、取り残されている人々、特に年配者は、生活圏に「高級品ばかり扱う店」は多いけれど、「日常の生活必需品、とりわけ衣料品を扱う店」がほとんどない状況の中でたいへん不便な生活をもうだいぶ前から強いられています。)

 

問題は、大都市の周辺市街地、それも公共交通機関が少ない地域です。「自家用車がなければ生きていけない」と言われる地域です。

事例を示しましょう。

商圏分析の方法-D

首都圏で言えば、茨城県「取手駅」周辺が代表的です。数十年前から東京のベッドタウンとして人口増加が続いていましたが、それも代替わりが始まった典型的な近郊都市です。

駅の東口を中心に人口が分布していて(図3)、2km圏で44,128人(※)と小都市としてまずまずの規模です。

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しかし、商業統計から判明する商業の衰退は著しく、取手駅周辺と駅から西へ伸びる関東鉄道常総線に沿ってみれば、のきなみ最盛期の50%前後になってしまいした。

 

商圏分析の方法-E

人口推移を見ると(図5)

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2km圏で1995年~2010年にかけて、人口は-1.62、-11.86、-1.43と減少しています。しかし、人口減少だけが駅近くの商業衰退をもたらしたのでしょうか?

相次ぐ大型店の撤退

2010年8月、取手駅西口で売場面積13949㎡(地下1~地上8階建、駐車場813台)の巨艦「取手とうきゅう」が閉店しました。記録(※2)では、03年~05年の間に62億円、55億円、48億円と売上が減少傾向にありました(残念ながら、閉店当時の売上は公表されておりません)ので、この原因が売上不振、利益悪化にあることは明白です。

この閉店に先立って、駅東口でも、2001年にイトーヨーカドー取手店(9095㎡、地下1~地上4階、駐車場260台)が撤退。しかし、直前の00年時の売上は52.7億円ですので、この場合は不振による撤退ではなさそうです。

しかし、その撤退跡に、マルエツ、ダイソーがすぐに入りましたが、07年4月には早くも閉店しております。

現時点2017年では、「取手とうきゅう」ビルには、1Fに西友、2Fにニトリ、ダイソーなどが入居する複合商業施設になっていますが、往年の賑わいは取り戻せていないようです。

これら取手駅周辺の大型店を撤退に追い込んだ原因は何でしょうか?確かに、駅周辺の道路整備が遅れていたため渋滞などが起こりやすく不便な立地であったことは否めません。

 

しかし、売上が漸次減少していったことを思えば、決定的な理由は、広域に、いくつもの大型ショッピングセンターが出現したことだと言えます。

商圏分析の方法-F

取手駅から西へ約8kmの守谷駅周辺は、宅地開発が急速に拡大し人口が爆発的に増加(図6)、

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これを狙って、イオンタウン守谷(07年6月、21,514㎡、1500台)、アクロスモール守谷(08年9月、建物面積21,200㎡、1186台) 複合商業施設「西友守谷店」(08年4月、16,413㎡、892台)が次々とオープンしています。

 

商圏分析の方法-G

さらに、背景を探れば、図7にあるような全国平均(折れ線)を上回る高齢化があります。足腰の弱った高齢者に徒歩や自転車で来店してもらう範囲は500mがせいぜいです。

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取手駅東口には、スーパーマーケットが3店ありますが、その条件を入れ込むと、この地域の半分(図8の塗りつぶし部分)が買物不便地と言うことができます。

 

 

関西

商圏分析の方法-H

関西では商業の衰退はさらに深刻と思われます。

ここで、大阪府にほど近い兵庫県伊丹市と尼崎市との市境付近を任意に選びその2km圏内を集計すると小売りは平均26%減少しています(※3)。中心付近では40~70%の減少が見られます。

そこで、食品スーパーから500m以上離れている地域を買物不便地として、半径5kmまで広げて、上記と同様に塗りつぶしたところ(図9)、

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商圏分析の方法-I

人口密集度の高い市街地(728千人/5km圏 図10)であるにもかかわらず、相当の範囲で買物不便地が広がっていることが判明します。

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これは、この圏域の約20%に相当し、人口に換算すると145,600人であり、70歳以上高齢者に限っても203百人と推測できます。

本来は利便性が高い市街地でこのような不便地ができているのはなぜでしょうか?

もちろん、駐車場を多く確保したショッピングモールが多数オープンしている(図9のドット)ことと無縁ではありません。

 

商圏分析の方法-J

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同じ5km圏内で02年イオンモール伊丹が駐車場2800台で、06年グンゼタウンセンターつかしんが同2000台で、11年イオンモール伊丹昆陽店が同2400台でそれぞれ開店しています。

しかし、こういう市街地の最大の原因は、地価の高さにあります。また、1500㎡以上の売場面積を有するスーパーマーケットが開店するにはそれだけまとまった土地が必要ですが、なかなか見つからないばかりか、賃貸でも採算が合わないからです。

圏分析の方法-K

ただし、同じ5km圏内にはコンビニエンスストアが262店あります(※4 図11)。

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これらが高齢者のニーズ(需要)に対して正面から答えていく取組みがあれば、市街地の不便地解消につながると思われます。

 

2858字)

 

 

 

※1 国勢調査2010

※2 スーパーマーケット名鑑(商業界)

※3 2007年/1999年 比率

※4 2016年11月版ゼンリン電子地図帳による

 

 

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