商圏分断を数値化する(売上予測を重回帰分析で行う手法10)

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商圏分断を数値化する(売上予測を重回帰分析で行う手法10)

売上予測

2017/11/05 商圏分断を数値化する(売上予測を重回帰分析で行う手法10)

売上予測の手法 その5 重回帰分析を使った売上予測 10 商圏分断

 

売上予測モデル(重回帰モデル)に、”商圏に関する要素”が入っていないとしたら、そのモデルに信頼性はありません。

当然ながら、実際にこういった売上予測モデルを使っても、高い精度の売上予測はまず望めません。

 

店の売上に、店周辺のポテンシャル、多くの場合は「商圏に関わること」が関係していないことはあり得ないことです。

簡単にすると、「500m人口」、「1km人口」、「2km人口」のような単純な変数が説明変数になりうる傾向があります。

もちろん、都市の中心部ばかりに出店していて、人口よりも「就業者」や「小売販売額」の影響が大きい場合もあります。

こういう場合、「人口が隠されている」と表現することができます。

しかし、なかなか、都市中心部ばかりに出店し続けることは難しいものです。なぜなら、その経済条件(賃料・保証金など)はひじょうに高いからです。

すると、乗降数の少ない駅前の物件や、人通りが少ないが車がけっこう通るというような生活道路沿いの物件で出すことが増えてきます。

こうした経済条件の良い(家賃・保証金が安い)物件で出店していくような場合、「衝動来店」よりも「目的来店」してくれる客がどれだけ多く来店してくれるかが繁盛・非繁盛の鍵となります。この「目的来店してくれる範囲」こそ「商圏」と呼ぶのにふさわしい範囲です。

もっと正確に表現するならば、店の周辺を「小さな小地域(例えば、町丁目の範囲やメッシュの範囲)」に区切ったとして、この小地域に住む人々の5%以上が店に来てくれるならばその小地域は「商圏内」と言います。なぜ、5%なのか。これは、5%の人がある特定の行動をとるということは、「偶然ではない」と統計学的に証明されているからです。3%でもなければ4%でもありません。5%です。

 

お客様調査をして、そういう小地域を合計して、商圏と描いていくといくつかの大事な原理が見つかります。その第一は「商圏分断」です。

たいていの小型店舗のお客様が目的来店する範囲、つまり、商圏は 車で5分の範囲で、都市部に近いと約2km圏です。

2km圏を描くと、実際は、その圏内に「鉄道」があったり、「大規模な工場や学校の敷地」があったりすると、それらより遠くには、「5%以上の小地域」がなくなっているのです。

だから、こういった商圏分断という概念はたいへん重要です。

とりわけ、これから店を出す前の調査としては、この商圏分断があるとわかれば直ちに「出店不可」と結論付けても良いでしょう。

商圏分断を起しやすい施設や自然(山・河川)は、目立つので分かりやすいものです。

しかし、そうわかりやすいものばかりではありません。例えば、「道路」が分断を起すことがあります。

それは、店舗前の道路と並行して走る道路があると、その道路のところで、商圏が分断されてしまうのです。

これは、実は分かりやすいことです。並行して走る道路というのは、両方の「目的地が同じ」ことを意味します。同じ目的地に向かう道路なら、人々は自分が住んでいる所に近い方の道路を使う。これは人間の心理です。仮に、この近い道路が、渋滞ばかりしているというのでしたら、多少遠くても、店前の道路まで来てくれるかもしれません。

その反対に、人々の近い方がバイパス道路のように、速く目的地に到達したいような道ならば、まず、ほとんど絶対に、店前道路まで出てきてくれるわけがありません。

こういう例が、あちこちで起きています。

売上予測モデルと作る時の説明変数としては「商圏分断」には注意すべきでしょう。下図のように分かりやすいばかりではありません。

 

完璧な商圏分断 東京 尾久駅を通る宇都宮線/高崎線と上中里駅を通る京浜東北線に囲まれた住宅地

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ところで、商圏分断がある場合、どうやって表現するべきでしょうか?

もっとも良いのは、分断された内部だけ(上図)の人口を求めることです。

しかし、このやり方がすべてに通じるわけではありません。その場合は、「商圏分断指数」なるものを作れば良いのです。すなわち、物件からどのくらいの距離で分断が発生しているか、その分断の程度(ほとんど往来はできない・往来は可能なものの、物件前に来ることはない・往来は可能で物件前にもよく来られる)というような指標を作ることが望まれます。

このようにして、売上予測モデルにおいて重要な説明変数を取り込むことができます。

 

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