埼玉・川越エリアの激戦

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埼玉・川越エリアの激戦

商圏,食品商業

2017/11/01 埼玉・川越エリアの激戦

埼玉・川越エリアの激戦徹底レポート 商圏リサーチ編  月刊食品商業2013年7月号

)ソルブ 代表 林原安徳

 

川越エリアでは、どんな背景で果たして何が起きているのだろうか。それを商圏データおよび立地状況から詳しく見ていきたい。とりわけ、今回、編集部で選んでいただいた特徴ある4店舗、ロヂャーズ、生鮮市場TOP、ベルク、ヤオコーに焦点をあてて解析を試みた。

 

川越の商圏と言ってもそれを一括りにすることはできない。川越の中心部やその東西南北、それぞれ商圏の事情は異なっていることは言うまでもない。

今回は、店舗が互いに近い2店舗ずつの2グループに分け、それぞれ川越駅に近い方から地域A、Bとした(図1、注4)。

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地域Aには、ロヂャーズ川越店(1977年オープン、2013年4月リニューアル)と新鮮市場TOP川越店(2012年11月オープン)とその他12店のスーパーが、地域Bには、ベルク的場店(1992年オープン、2009年1月リニューアル)とヤオコー川越的場店(2012年3月オープン)とその他6店のスーパーが含まれる。

さらに、解析は、①それぞれ2地域の全体像、②2つの商圏の詳しい分析、③各店舗の立地優劣の評価という順番でみていくことにする。

 

  • それぞれ2地域の全体像。

地域Aは、川越の市街地を含む地域である(人口分布図 地域A)から、人口は密集しており2km圏で80千人を超える。

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しかも、10年間(注5)で、4.7%もの増加を示している(比較表参照)。これは、全国的に0.9%が平均であるからこの増加は密集地としてはひじょうに大きいものだ。

一方の地域Bは、58千人と少なく、しかも3・4%のマイナスである。

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通常は、密集地ほど人口増加は少なく、閑散地ほど増加が高いものだが、川越周辺は特別なようだ。

 

もう一つ、この2つには対照的なことがある。購買行動に関して、地域Aは流入傾向にあり、地域Bが流出傾向にあるという点だ。

 

すなわち、地域Aは川越都市部であるため車、電車、バスを使っての買い物流入があるということである。対して、地域Bは地元で購買するよりも地元以外の地域に買い物に出かけてしまっている。比較表にある購買流入率の値の正負はそれを表している。

また、比較表を見る限り、住民の特性に大きな違いはあまりないようだ。敢えて読み取るならば、地域Bは地域Aよりも持ち家世帯比率、および一戸建て比率が格段と高いが、これは地域Bのほうがローカル性が高いようだという観察、実査結果と符合する。

  • 2つの商圏の詳しい分析

では、もっと詳しく見ていくとこれら2つは、どのようであろうか?それを2km圏の人口ピラミッド、交通手段、経年推移、年収別世帯数、そして人口予測という5つの重要な視点から見ることにしよう。

人口ピラミッド

日本の人口は、少子高齢化が進んだ結果、本物のピラミッドのような形とはずいぶんかけ離れた形になってしまった。

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川越もその例外ではない。

棒がその地域、折れ線は全国平均だが、いずれも棒と折れ線はよく似通っている。ただし、共通して、9才以下の若年人口と84才以上はやや全国平均より比率は低い。

また、よく見ると、地域Aでは20才から49才までの働き盛りの年齢層の比率が高い。それに対して、地域Bは中学・高校・大学期間に相当する年代層と60歳以上の元気な団塊世代の年代層の比率がどちらも高いことがわかる。そして、いずれもその次の世代がひじょうに少なくなっている。商売の相手として、今後10年、20年以内に負の激変が起こりそうなことを暗示している。

 

交通手段

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これは、通勤・通学における交通手段と時間を示したものであるが、地域の人々が購買時にどのような交通手段を用いるであろうかを知る目安となる。

これらを見る限り、地域Aと地域Bはともに「鉄道」が約37%、続いて「自家用車」が26~29%である。いずれも、鉄道(駅)も使うが、自家用車も使って行動する。そういった地域であることがわかる。ここに都市部とローカルの基本的違いは見られない。

これは、前述の比較表で、世帯当たりの乗用車保有率において、地域Aが32・5、地域Bが31・2とほとんど差がないことと符合している。

 

経年推移

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経年推移においても、この2地域はよく似ている。人口の伸び方は少ないが、世帯数の伸び方がひじょうに大きい。これは国内のほとんどで見られる現象と同じである。すなわち、世帯当たり人数がどんどん減っている。とりわけ、単身者が増えている。若者も、高齢者も単身者が増えていることを示している。

また、商業においては、小売業の商店数は確実に減り続けている。と、同じようにその販売額も低下の一途を辿っている。

とりわけ、地域Bにおける2004年から7年にかけての店数の減少は大きく、販売額にいたっては3年間で12%以上の減少と激減している、その間の人口減がさほど大きくないにも関わらずそうなったということは、その間に人々の消費購買性向が大きく下がったと見做さざるを得ない。

 

年収別世帯数

これも、両地域ともにほぼ似ている。

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年収の300万円未満の世帯の比率は、全国に比べて明らかに少ない。その反面、500万円以上の、いわゆる中流家庭が多い。地域Aはさらに1000万円以上の高年収世帯の割合がひじょうに大きい。

ある意味、この両地域は豊かな世帯が多いことが統計から読み取れる。

人口予測

最後に、人口をある方法を用いて予測(注6)してみると、

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地域Aの増え続けてきた人口も20年以内に止まり減少し始めることがわかる。また、地域Bはこれから減少の一途を辿ることがわかる。人口の絶対数が減少することは、マーケットとしては深刻な負の影響を与えることに間違いない。

 

地域分析のまとめ

以上の分析から、まとめるとこれらの地域について次の3つのことが言えよう。

  1. 客離れ

まず、現時点では人口は減少しているわけではない。小売業が減衰しているに過ぎない。所得が高い人々は往々にしていろいろな商品、サービスに対して感度が高い。その高い感度に答え切れず、店が昔日のままの惰性営業をしていけば、あっさりと離れていくだろう。

  1. エスカレート

そして、この消費者のハイレベルで多種多様な要求の変化は、これからますますエスカレートしていくだろう。これに答え切れず単なる価格競争や薄利多売競争をやっていても問題解決にはつながらない。とりわけ、地域Bでの変化は大きいに違いない。

  1. 瓦解

今後、商業的供給不足に落ちいっている両地域に、巨大モールのような商業施設が現れれば、そうした人々の購買力を地引網のようにかさらわれるとともに、多少の大きさでは対抗も難しくなるだろう。

 

これらの地域分析をもとに、各店の立地分析に入ろう。

地域A

ロヂャーズ川越店

幹線国道が左折(右折)するというまれな交差点角地にある。駐車場は店舗の屋上を含め、図2のようにこの交差点を囲んで分散配置され、その合計は370台以上になる(写真2)。

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この交差点は、国道を川越方向から来ても右折は可能で容易に駐車場に入ることができる。どの方向からも視界性が良好である。車での来店を狙う立地としてはほぼベストと見ることができる。

したがって、商圏は東西南北どちらにも2km以上拡大することが可能である。これに商品・サービス、価格等における魅力度が商圏と合致するならば、これ以上の立地は望めない。

 

生鮮市場TOP川越店

昨年11月にロヂャーズ川越店からほぼ北へ1kmの地点にオープンした。

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ロヂャーズ川越店にとっては、交通量の少ない県道沿いには、他のスーパー、エコスたいらやがあり、さらに200mほど進むと、川越西郵便局、4階建ての大きな建物がある。ここを右折してまた200mほど進むと、この生鮮市場TOPが突然目に入る。

直前まで、影形もなかったものが急に見えるようになり、視界が広がるのだ。

駐車場は一面に350台あり、ここへの出入りは容易である。

この道は、県道より格下の市道だが、この道には大きな特徴がある。それは、この先800mに、川越水上公園があり、

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これが年中を通してのTG(交通発生源)となっていることである。このことで、この店の所在は、その公園を利用する人々が行き帰りに寄ったり、あるいは、周辺のかなり多くの人々によって容易に知られるようになる。

これは、店の認知度を高める上でのきわめて有効な立地要因である。

また、この店の2階には書籍販売/CDレンタルチェーンを入れており、食との組合せは客層の多様化を促す上で絶妙と言える。果たして、このコラボレーションがどれほど人々に受け入れられ、好まれるかが楽しみなところだろう。

 

地域B

ベルク的場店

1992年にオープンした後、2009年1月にリニューアルをしている。

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東の川越市と西の入間市、飯能市を結ぶ主要県道に沿っており、そのため商圏を大きく東西に広げることが可能だ。駐車場も300台分確保されており、生鮮食品等を購入するためだけならじゅうぶんな数と言える。

また、店舗前は、信号のある交差点であるため、ここ自体がTG(トラフィックジェネレータ、交通発生源)である。

ただ、店の北側には鉄道線路があって、駐車場から直接それを超えることはできないが、随所に踏切があることと、物件前道路が線路にアンダーパスを設置していることから、地元の人々は、楽々と南北を往復できていると考えられる。

この南北にアンダーパスする道路には「おいせ橋通り」という名称がついており、このことは、この道が周辺の人々にとって欠かせない生活道路であることを示している。

 

ヤオコー川越的場店

2012年3月に屋外のモール型の主要テナントの一つとして出店している。他には、ノジマ電気やマツモトキヨシなども含まれる。

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ベルク的場店からの距離はわずか300mしかない。

しかし、立地を良否という観点から見たらどうであろうか?

まず、場所が分かりづらい。「おいせ橋通り」に沿ってアンダーパスから登り切った交差点には、何の看板もないから、そこを通るほとんどの人には、この存在を知覚できない。

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加えて、このモール前の道は、単なる道であって、そこを通らざるを得ない一部を除く住民にとって、この道を利用する必然性がほとんどない。したがって、視界性評価はきわめて難となる。

この「店は見えないから、探して来てください」型の立地は、人々にとってはきわめて苦痛である。近隣の住民はともかく、遠くに住む人々にとって便利な立地であるとは言いづらい。

屋外モール型には、さらに、不便なところがある。それは各テナントを訪れるためには、一度店を出なければならないという点である。外が暑いときも、寒いときもこれでは辛いものがある。お客の来店頻度は生鮮食品等を扱っているヤオコーがもっとも高いだろう。しかし、他のテナントがその恩恵を受けるにはやや難しい構造になっていることは確かだ。

このモールの最大の長所は、駐車台数が468台ときわめて多いことだ。この規模でどれだけ戦えるか、予断許さないが。

 

さて、以上見てきたことから、対象となる4店舗に立地、商圏上の順位を付けるとどうなるであろうか。1位は、生鮮市場TOPである。①有名なレジャー施設との動線上にあり、②ユニークな魅力でさまざまな客層を呼び、③広く安全な駐車場を有しているからである。

2位は、ロヂャーズであり、これは交差点角地で、駐車場もじゅうぶん確保しているからである。

3位、4位はベルク、ヤオコーと続く。その問題点はすでに指摘した通りである。

今後、中途半端な規模、不便な立地という課題は乗り越えて行かなければならない。その時、川越という商圏の特性を調査し、よく知り、いかに的確に住民の声に答えていくかがカギとなるだろう。

 

 

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注4)地域AとBに分ける妥当性は2つある。両地域から互いに近い店舗同士(新鮮市場TOPとベルクとの距離が約3kmあること。そして、そのほぼ中央におおむね川幅が100以上の入間川があり明らかな地域分断をしていることの2つである。2km圏の中心点はおおむね2つの店の中間点とした。

 

注5)国勢調査2010年と2000年の比較

注6)男女別、年代別に調査4回分の変化率を元に、次々とその後の人口を予測する方法。コーホート変化率法と呼ばれる。

 

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