セブンの東京出店戦略を論ず コンビニ1004

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セブンの東京出店戦略を論ず コンビニ1004

月刊コンビニ

2017/10/28 セブンの東京出店戦略を論ず コンビニ1004

セブンの東京出店戦略を論ず  推測400店増の「飽和市場」

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ソルブ代表 林原安徳

 

※本記事で掲載されている地図は、地図使用承認(c)昭文社第51076号による

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セブンイレブンイレブン(以下、セブンイレブン)は101月末時点で、全国に1万2600店を展開している。うち東京都内への出店は1660店に達し、一見、飽和状態のように映る。

出店戦略とは、未出店地域の存在を前提に、どの地域にどの順番で出店するかを計画することである(中には、計画や指針さえ持たず、全国に出店するチェーン企業もあるが、そうした企業の多くは出店に行き詰っている)。

しかし、セブンイレブンは、四国各県、鹿児島県、沖縄県などを除くと、ほとんど至るところに出店しており、その出店密度は空白地帯を見つけ難いほど他社を圧倒している。東京はその際たるもので、東京での出店は他チェーンの撤退跡やリロケートが中心であり、戦略性をもった出店を必要とする時期を終えたものと考えていた。

だが、結論から言うならば、一見矛盾するような、「飽和状態における出店戦略」というテーマが、東京におけるセブンイレブンの出店において成立する。それは、飽和状態を乗り越える、セブンイレブン独自の勝利の方程式と表現してもオーバーではない出店戦略である。

なお、後述する分析は、2009年2月時点のコンビニ各社の出店地点情報によるもので、この時点の約1万2300店のセブンイレブンを対象とし、ソルブ社開発によるGIS、「統計てきめん2プレミア」を使用した(注①)

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分析の内容は、大きく3つからなる。①駅との距離、②商圏人口、③同業店(競合店)の数である。セブンイレブンが独自の出店戦略をもつならば、このいずれかの数字に必ず現れるからである。

第一の「駅との距離」を分析したのが、図表①である。

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この分析で、セブンイレブンの最初の違いが見られる。ローソンの441mやファミリーマートの513m、他コンビニ各社に比べ、セブンイレブンの583mは群を抜いて大きい。それだけ駅から離れていることを意味するが、このことは、少なからずセブンイレブンの収益力に影響している。駅から離れるほど店舗物件の賃料などが低く抑えられ、とりわけ東京都内ではその違いが著しい。

しかし、この数字だけで出店戦略と呼ぶことは難しい。駅から離れれば、立地論上、駅からの影響を受けづらくなる。つまり、売上げ確保が困難になるという矛盾を孕むからだ。

セブンイレブンをしてこうした出店を可能とするのは、ブランドの認知度の高さが背景にあると見られる。認知度で劣るコンビニチェーンや、あるいは有名なFFチェーンであっても、このやり方は難しい。いや、セブンイレブンであっても、立地を読み間違えれば、売上げ確保は極めて難しくなる。

第二は、商圏人口の分析である。コンビニの商圏は、一般的に300m圏と言われているが、ここでは、正確な集計が可能な広さということで、500m圏の人口を採用した(図表②)。

商圏人口は、僅差ではあるが、セブンイレブンが最も多い1万1018人である。しかし、どのチェーン店も約1万人を有しており、セブンイレブンが飛び抜けて数字が高いとは言えない。

むしろ、昼間人口においては、最下位の1万7000人であり、最も多いampmの4万2000人の半分以下である。さらに、購買人口(買い物に来ている規模こと。注②参照)に至っては、2万2000人と、やはりampmの6万2000人の3分の1ほどしかない。

この結果によれば、少なくとも商圏人口で見た場合、セブンイレブンが有利な場所に出店しているとは言い難い。

もちろん、これらは、あくまで平均値であるため、現実とそぐわないケースも、当然あるはずだ。セブンイレブンは本来、人口の極めて多いところにも出店しているが、そうでない場所にも出店しているため、平均値では他社に負けているといった見方もできる。

そこで、商圏人口の分布をグラフに表してみた(図表③)。

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このグラフを見る限り、セブンイレブンだけが、商圏人口に恵まれた店が多いわけではないことが分かる。むしろ、ampmを除くコンビニすべてが、商圏人口についてほぼ条件が同じと見ることができる。

第三は、同業店(競合店)の数である(図表④)。

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この競合店数ではチェーン間の違いが見られる。セブンイレブンの周りには、500m圏であれ、300m圏であれ、100m圏であれ、同業店が他チェーンに比べ明らかに少ない。

これが意味するものは何か。

すぐに頭に浮かぶのは、セブンイレブンが出店し、同業他店が撤退したことである。逆に、セブンイレブンが出店しているため、他チェーンが遠慮し出店しないこともあるだろう。

しかし、仮にそうであっても、それは同業店の対応に過ぎず、セブンイレブンの出店戦略とは別である。

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セブンイレブンの出店の特徴は、

①同業店にくらべ駅から離れている。

②商圏人口は同業店とほぼ同じである。

③周辺の同業店が明らかに少ない。

の3つである。

①について、一定距離での分布を分析すると、さらに違いが明確になった。

図表⑤は、横軸は、駅からの距離を100m以下で10m間隔、100m超で50m間隔、500m超で100m間隔、そして1000m超で500mおきに区切り、それぞれの階級に属する店の数を、折れ線グラフで表したものである。

もともとセブンイレブンが最も店舗数が多いため、同チェーンの折れ線(太線)が最も上に来て当然である。しかし、よく見てほしい。

駅から100mまでは、コンビニ各社ともほとんど同じ店数である。

そして、100m超から250m以下までに1番目のピークがある。このピークでは、ローソンが100店前後、ファミリーマートが8090店であるのに対し、セブンイレブンは120~130店前後で、さほど店舗数が多くはない。

注目したいのは、500m超~700mの分布、2番目のピークである。ここで、ローソンは60店前後、ファミリーマートも6070店と奮わない。これに対し、セブンイレブンは120~140店と圧倒的な強みを見せている。

また、1000m超~1500m以下の階級でも3番目のピークがあり、やはりチェーン間で差が見られるが、このピークの差は郊外ロードサイドの店舗数の違いによると思われる。

グラフには、ファストフード3社(マクドナルド、モスバーガー、吉野家計905店)も加えたが、その分布はコンビニと明らかに異なる。駅から100m以下の階級に、コンビニ各社のほぼ2倍の店舗が分布している。

だが、共通部分が2か所ある。駅前近くの1番目のピークと、郊外ロードサイドの3番目のピークである。

つまり、セブンイレブンの出店を特徴付けているのは、2番目のピークである。

駅から500~700mに位置する店舗の立地を「ミドルロケーション」とするならば、ミドルロケーションは、ファストフードには稀にしか見られない。また、コンビニ他社にも見られるが、セブンイレブンほど顕著ではない。

このミドルロケーションに属する具体的な店舗について、その出店戦略を検証したのが、★~★ページの検証である。ミドルロケーションに該当する店舗は250店あるが、この中から無作為に10店を選び、それぞれの立地を分析した。

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これら10店の検証から分かることが3つある。

第一に、500m人口が概ね1万人以上に達していることである。従って、2万人ほど存在する場合は、2店以上出店している。複数店出店の場合、客層が重複し、客数に影響する出店は避けている。

第二に、原則として、セブンイレブン他店と400m以上離して出店している。セブンイレブン各店が正三角形の頂点を占めるような形で続いていくケースが多い。

その店舗間距離を確保できない場合は、一方を広域に延伸する道路に、もう一方を駅へ向かう住宅街内の道路に面するなど、お客をなるべく取り合わないような位置関係で出店している。

第三に、幹線道路同士の交わる交差点角地から、生活道路同士の交わる角地、少なくとも店前、店横が道路に面している場所を選んでいる。

第四に、他の同業店との位置関係を意識している形跡がないことである。

同業他社がどこに出店するか分からないため、当然であるとも言えるが、既存の同業店が出店していても気にせず、出店している印象をもった。近隣に同業店があるほど、その地点の顧客吸引力が高まると考えられるからである。

駅から500m以上離れ、既存店から400m以上離れ、500m圏内に人口が1万人以上いる交差点の角地に出店する。これが、首都東京における、セブンイレブンの出店戦略の核心である。こうした基準により、圧倒的に多くの物件を確保している。

この出店戦略をミドルロケーション戦略と呼ぶならば、この戦略で残りどれだけの出店が可能であろうか。

新宿駅を中心とした5km圏の範囲に、セブンイレブンは2009年5月現在で、218店を展開している。このエリアでミドルロケーション戦略を採るならば、合計50店の出店位置を確認することができる。つまり、セブンイレブンは、東京という最大激戦地において、現店舗数の25%、数にして400店の出店が可能と推測される。

同様なことを、他の都道府県で算出するならば、空白地域への出店も併せ、今後おおよそ5000店の出店が可能と推測される。セブンイレブンは、東京だけでなく、全国でさらに巨大化する可能性を秘めているのだ。

 

検証1 セブンイレブン浅草馬道店

南北の生活幹線の馬道通りと、東西の生活幹線の言問通りが交わる交差点に出店。その角地に位置しており、広域からの来店も可能なばかりか、認知も広がりやすいベストの立地。

また、強い競合店はおおむね300m以上離れている。北250mにあるローソンは、住宅街の中に入り込んでいるため、影響を与えるものの、その面する道路には延伸性がなく、影響の度合いは低いと推測される。

ちなみに、500m圏内の人口11694人。

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検証2 セブンイレブン八王子南大沢店

北へ進むと多摩ニュータウン通り出る幹線地方道に面していて、しかも交差点の角地。

後背には新興住宅地が広がっており、東側からも西側からも住宅街から容易に出てこられる。広域からも、周辺からも来店が容易な、いわゆる「ポテンシャルクラスター由来のTG」の典型【注3】である。500m圏人口は7146人だが、同業店は3店と少なく300m以上離れている。

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検証3セブンイレブン武蔵小山パルム店

店から距離にして110mに、セブンイレブン荏原4丁目店がある。当然、競合していると思われるが、来店客層が異なることが推測される。

すなわち、武蔵小山パルム店は、武蔵小山商店街および同店の斜め前にある東急ストアなどを利用する地元住民が中心だが、荏原4丁目店は北に目黒通り、南に中原街道を結ぶ生活幹線道路沿いであるため、広域からの衝動来店客が見込まれる。

500m圏内の人口も21272人と極めて多く、セブンイレブンにとっては十分な人口と考えられる。

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 検証4 セブンイレブン板橋仲町店

これも、検証3同様、近くに別のセブンイレブンがあるが、国道(川越街道)を挟んでいるため、そちらからの影響は少ないと推測される。

また、セブンイレブンとしては、だいぶ住宅街の中に入り込んでいるものの、店前道路は、北方500mにある東武線東上線中板橋駅に続く通行者の駅動線になっており、角地にあることも加味すれば、決して劣った立地ではない。

500m圏内人口も、棲み分けが可能な17021人と密集している。

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検証5 セブンイレブン西新小岩店

店前道路の平和橋通りを挟んで反対側100m北にローソン、500m北に別のセブンイレブンが出店している。

平和橋通りが、交通量が多い幹線道路であることを考えれば、いずれの店からも影響は少ないと推測される。500m圏内人口は、15267人である。

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検証6 セブンイレブン文京本駒込2丁目店

同店は、おおむね500m周辺で、既存のセブンイレブン3店とローソンその他に囲まれている。

裏を返すと、セブンイレブン他店とは400m以上離れて出店している。店の側面には、細い道が住宅街の中へと続いており、この道を使っての来店も期待できる。

また、同店が面する本郷通りは、南北にきわめて延伸性のある幹線道路であり、広域からの来店が十分可能である。

500m圏内人口は14980人である。

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検証7 セブンイレブン小金井連雀通り店

東京でややローカルな地域であるが、店が面する連雀通りは都内を東西に結ぶ、有数の生活幹線道路の一つである。店の横には路地があり、北からの徒歩来店が容易である。広域からも近隣からも来店が期待できる立地であると言える。

周辺には、ローソンなど同業店が3店出ているが、セブンイレブン自体は他に出店していない。

500m圏内人口は8274人。

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 検証8 セブンイレブン文京本駒込4丁目店

店が面する交差点は、南北および東西に大きく延伸している幹線道路である。加えて500m圏内人口は18782人と極めて多く、セブンイレブン他店も400m以上離れている。

これならば、十分な売上げ確保を期待できる。

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検証9 セブンイレブン八王子八日町店

同店は、国道16号線に面しており、きわめて広域からの衝動来店も期待できる。

また、既存のセブンイレブン4店に囲まれているが、いずれとも400m以上離れている。

500m圏内人口は11214人と標準的である。

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検証10 セブンイレブン練馬光が丘西大通り店

同店は、光が丘団地の北端に位置する。店前道路は、南はその団地の中心部へ続き、北は国道254号(川越街道)と接続し散る。

加えて、店の西側に別の住宅群があり、店横の道路を経て、容易に来店が可能である。

セブンイレブン他店を含め、同業店は400m内にはない。

500m圏内人口は9416人である。

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 【注1】 GISとは、「Geographic Information System」の略で、地理上のあらゆる分布や位置関係などを分析したり、表示、集計したりできるコンピュータソフトの総称。取扱いが複雑、高度で、本格的な導入には多額な費用を要すると言われる。ソルブ社開発のGIS「統計てきめん2プレミア」は、出店開発に関する統計データの収集に特化し、操作性と経済性を実現した。

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【注2】 購買人口とは、その地域で購買している人数のこと。年間小売販売額を全国分合計した値を日本人口で割ると、1人当りの年間小売販売額(購買額)が出る。2002年の購買額は117万円である。従って、その地域の年間小売販売額を117万円で割れば、その地域で購買している人数(購買人口)を求められる。

【注3】ポテンシャルクラスター由来のTG

大きな新興住宅地など、人口密集度が高く、その周囲が山川や丘などで囲まれて出入りし難く、ほとんど1本ないし数本の道路で外界と結ばれているような地域をポテンシャルクラスターと呼んでいる。そして、その出入りする道路が出会う初めての幹線道路との交差点を、ポテンシャルクラスター由来のTGと呼び、立地上優位な場所であることが多い。

 

プロフィール はやしはらやすのり

19561226日、さいたま市生まれ。売上予測コンサルタント。東京大学農学部卒。日本マクドナルドに入社。店長、スーパーバイザー、出店調査部チーフを歴任。退職後、小売業の立地研究に専念し、「店舗立地と売上予測」を専門とするコンサルタント会社、ソルブを設立。

 
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