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GISを駆使して候補地を探す
「1週間でできる立地判定」【第11回】閉鎖商圏と隔離マーケットの話し。GISを駆使して候補地を探す
他の地域からの流入のない商圏(「閉鎖商圏」と言います)はどんな商売にとっても難しいと言われています。例えば、団地の中だけ、とか、オフィスビルの中、学校の中だけというところは、コンビニであっても苦戦を強いられることが多いようです(例外はあります)。 それは、こういった商圏は人々が流入がないばかりか、通勤や通学、買い物などで流出している人が多い。そのため需要がきわめて小さくなりがちだからです。
もちろん、同じ閉鎖商圏でも40階建ての高層マンションビルなどというのは別格です。っそのビルだけでじゅうぶん以上のポテンシャルが望まれるからです(これが例外の一つ)です。
すでに、お客さんが3000人確保できていれば、店の日販は75万円いくほどの繁盛店になると解説しました(9月号)が、この3000人がある意味で分かれ道となる指標です。この計算の前提には、20%の流入客も含まれていますから、コンビニとしてやっていくには、この数が大前提と言っても良いでしょう。
さて、この閉鎖商圏と良く似て非なるものに、隔離マーケットというものが存在します。それは、文字通り、「隔離された」マーケットなのです。隔離とは、入室・退室が容易ではないことを指しますね。
たとえば、映画館の中やレジャー施設の中は、入場料を支払わなければ入れませんし、外に一たび出てしまうと一般的には戻れません。こういう施設の中を、隔離マーケットというのです。鉄道やバス、航空機、高速道路などの交通施設もそうです。あるいは、事前に登録、申請などをしていないと入れないようなスポーツ施設や自治会館のような公共施設もそうです。また、○○博覧会、○○イベント会場というのも隔離マーケットです。
で、この隔離マーケットというのはどうなのかというと、「出入りに制限がある」から、その中の需要を独占しやすいのです。商品をその通常価格より少々高く売っても人々に受け入れられます(とりわけ、自動販売機で売っている商品の価格は吊り上りがちですね)。
つまり、繁盛するのです。
では、こういう施設や会場のようなものではなく、もっと大きな広がりをもった商圏で、隔離マーケットは存在するでしょうか。
実はあります。その典型的な例が、「島」です。
事実、多くのチェーン店は、島への出店を果たしています。それも、人口が多いところは尚更です(表1)。
有数の観光地でもある宮古島や石垣島は、観光での流入もありますのでその分、店数も多くなり、1店人口が3000人を切っています。淡路島に至っては、本州と四国を結ぶ幹線道路があることも手伝って流入がひじょうに多いため、1店人口は1000人を切ります。
さらに、人口1万人に満たない島であるとさすがに出店数は激減します(表2)。
しかし、その内訳をよく見ると、ナショナルチェーンはほとんど出店しておらず、八丈島では、パン屋さんがコンビニを兼ねているような状況です。
しかしながら、これらは、いずれもコンビニビジネスに必要な最低人口を超えており、なおかつ、隔離マーケットであるため市場の独占が容易であることに変わりません。
では、「島」という特殊な環境に頼らず、人口3000を確保できる地域を見つけるにはどうしたら良いでしょう。流石に隔離マーケットを見つけるのは難しいとしても、十分ポテンシャルのある場所を見つけることはできるでしょうか。
それには、GIS(地理情報システム、注1)を駆使するとできます。
例えば、GISを使えば、掲載図のようなものを比較的簡単に作図することができます。図は、さいたま市南区役所を中心にした5km圏でのコンビニ店の分布です。
この5km圏の中に、212店(昨年末時点)ありますが、この範囲の総人口は71万人(平成23年国勢調査)ということも分かります。
店数で割って、1店人口を出すと3354人です。かろうじて総体として3000人を超えています。
総体と言ったのは、コンビニが密集しているところもあれば、そうでないところもあって、決して均一ではないからです。
これを、人口分布とともに表示してみたら図2のようになります。
すぐわかるように、人口分布とコンビニ分布が異なっていることがわかります(図では、500mメッシュ(注2)ごとに3000人以上人口があるところを濃い色で表示)。
つまり、もうほとんど出店余地のないメッシュもあれば、逆に、人口が豊富にあるにもかかわらず、コンビニが1店もないメッシュが多々あることもわかります。ざっと数えただけでも27メッシュあります。
その中で、中心から北西3kmほどにあるメッシュを拡大してみたのが、図3になります。
すると、桜区役所や3軒のSM、ドラッグストア(TG:交通発生源)があるものの、その500m圏にはコンビニは全くありません。ちなみに、この範囲の人口は9600人です。コンビニが成立するには十分であり、また、自店に良い影響を与えるTGがありながら、空白のスポットになっていることがわかります。
こうやってGISを駆使して探していくと、出店候補地は、少なくとも27箇所は簡単に見つかるでしょう。やらない手はありませんね。
使用図
「統計てきめん2プレミア」(有限会社ソルブ)、地図使用承認Ⓒ昭文社第55G15号
月8023円で使える本格的実用GIS 誰でも30分で操作を覚えられます
統計てきめん2プレミア
はやしはら やすのり 売上予測コンサルタント。有限会社ソルブ代表。東京大学卒。
日本マクドナルドで売上予測調査を担当。
退社独立後、独自に深耕させた「立地判定/高精度売上予測」理論をもとに
多くのチェーン企業、個人起業家をコンサルティングしている。
著書に『実践 売上予測と立地判定』(商業界)、
『最新版 これが「繁盛立地」だ!』(同文館出版)など。
23/06/12
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「1週間でできる立地判定」【第11回】閉鎖商圏と隔離マーケットの話し。GISを駆使して候補地を探す
他の地域からの流入のない商圏(「閉鎖商圏」と言います)はどんな商売にとっても難しいと言われています。例えば、団地の中だけ、とか、オフィスビルの中、学校の中だけというところは、コンビニであっても苦戦を強いられることが多いようです(例外はあります)。 それは、こういった商圏は人々が流入がないばかりか、通勤や通学、買い物などで流出している人が多い。そのため需要がきわめて小さくなりがちだからです。
もちろん、同じ閉鎖商圏でも40階建ての高層マンションビルなどというのは別格です。っそのビルだけでじゅうぶん以上のポテンシャルが望まれるからです(これが例外の一つ)です。
すでに、お客さんが3000人確保できていれば、店の日販は75万円いくほどの繁盛店になると解説しました(9月号)が、この3000人がある意味で分かれ道となる指標です。この計算の前提には、20%の流入客も含まれていますから、コンビニとしてやっていくには、この数が大前提と言っても良いでしょう。
さて、この閉鎖商圏と良く似て非なるものに、隔離マーケットというものが存在します。それは、文字通り、「隔離された」マーケットなのです。隔離とは、入室・退室が容易ではないことを指しますね。
たとえば、映画館の中やレジャー施設の中は、入場料を支払わなければ入れませんし、外に一たび出てしまうと一般的には戻れません。こういう施設の中を、隔離マーケットというのです。鉄道やバス、航空機、高速道路などの交通施設もそうです。あるいは、事前に登録、申請などをしていないと入れないようなスポーツ施設や自治会館のような公共施設もそうです。また、○○博覧会、○○イベント会場というのも隔離マーケットです。
で、この隔離マーケットというのはどうなのかというと、「出入りに制限がある」から、その中の需要を独占しやすいのです。商品をその通常価格より少々高く売っても人々に受け入れられます(とりわけ、自動販売機で売っている商品の価格は吊り上りがちですね)。
つまり、繁盛するのです。
では、こういう施設や会場のようなものではなく、もっと大きな広がりをもった商圏で、隔離マーケットは存在するでしょうか。
実はあります。その典型的な例が、「島」です。
事実、多くのチェーン店は、島への出店を果たしています。それも、人口が多いところは尚更です(表1)。
有数の観光地でもある宮古島や石垣島は、観光での流入もありますのでその分、店数も多くなり、1店人口が3000人を切っています。淡路島に至っては、本州と四国を結ぶ幹線道路があることも手伝って流入がひじょうに多いため、1店人口は1000人を切ります。
さらに、人口1万人に満たない島であるとさすがに出店数は激減します(表2)。
しかし、その内訳をよく見ると、ナショナルチェーンはほとんど出店しておらず、八丈島では、パン屋さんがコンビニを兼ねているような状況です。
しかしながら、これらは、いずれもコンビニビジネスに必要な最低人口を超えており、なおかつ、隔離マーケットであるため市場の独占が容易であることに変わりません。
では、「島」という特殊な環境に頼らず、人口3000を確保できる地域を見つけるにはどうしたら良いでしょう。流石に隔離マーケットを見つけるのは難しいとしても、十分ポテンシャルのある場所を見つけることはできるでしょうか。
それには、GIS(地理情報システム、注1)を駆使するとできます。
例えば、GISを使えば、掲載図のようなものを比較的簡単に作図することができます。図は、さいたま市南区役所を中心にした5km圏でのコンビニ店の分布です。
この5km圏の中に、212店(昨年末時点)ありますが、この範囲の総人口は71万人(平成23年国勢調査)ということも分かります。
店数で割って、1店人口を出すと3354人です。かろうじて総体として3000人を超えています。
総体と言ったのは、コンビニが密集しているところもあれば、そうでないところもあって、決して均一ではないからです。
これを、人口分布とともに表示してみたら図2のようになります。
すぐわかるように、人口分布とコンビニ分布が異なっていることがわかります(図では、500mメッシュ(注2)ごとに3000人以上人口があるところを濃い色で表示)。
つまり、もうほとんど出店余地のないメッシュもあれば、逆に、人口が豊富にあるにもかかわらず、コンビニが1店もないメッシュが多々あることもわかります。ざっと数えただけでも27メッシュあります。
その中で、中心から北西3kmほどにあるメッシュを拡大してみたのが、図3になります。
すると、桜区役所や3軒のSM、ドラッグストア(TG:交通発生源)があるものの、その500m圏にはコンビニは全くありません。ちなみに、この範囲の人口は9600人です。コンビニが成立するには十分であり、また、自店に良い影響を与えるTGがありながら、空白のスポットになっていることがわかります。
こうやってGISを駆使して探していくと、出店候補地は、少なくとも27箇所は簡単に見つかるでしょう。やらない手はありませんね。
使用図
「統計てきめん2プレミア」(有限会社ソルブ)、地図使用承認Ⓒ昭文社第55G15号
月8023円で使える本格的実用GIS 誰でも30分で操作を覚えられます
統計てきめん2プレミア
はやしはら やすのり
売上予測コンサルタント。有限会社ソルブ代表。東京大学卒。
日本マクドナルドで売上予測調査を担当。
退社独立後、独自に深耕させた「立地判定/高精度売上予測」理論をもとに
多くのチェーン企業、個人起業家をコンサルティングしている。
著書に『実践 売上予測と立地判定』(商業界)、
『最新版 これが「繁盛立地」だ!』(同文館出版)など。