048-711-7195
〒338-0002 埼玉県さいたま市中央区下落合四丁目17番18号
「1週間でできる立地判定」【第9回】地図上で商圏はこうやって描く 月刊コンビニ連載2013年9月号
商圏の超簡単な描き方
自店のお客様たちがどの辺りから来ているか、この範囲を「商圏」と言います。
ところが、多くの店舗を見てきた私ですが、商圏を正確にしっかり把握している店長、オーナーは少ないようです。
では、それで本当に良いのでしょうか?また、商圏を把握しておくとどんなメリットがあるでしょうか。
お店が繁盛することができるのは、お客様あってのことです。言うまでもなく、そのお客様にいろいろな役立つ物、価値あるサービスを提供していくからこそ、一度だけでなく何度も来店してくれるのです。
でも、お客様は最初から「お客様」であるわけではなく、どこかに住み、暮らし、働き、学んでいた拠点があった普通の生活者です。その生活者はどうして、そのお店にやってこられるの、そもそも、お客様はどこから来ているのか?
このお客様の生活者という視点に立って改めて考えてみるといろいろなことが見えてくるはずです。例えば、販売促進と言えば、すぐに、「店内」でやることばかりが思い浮かぶ店長、オーナーさんは多いと思います。ポスターやバナーを貼る。景品を飾る。ディスカウントシールを貼る、等々ですね。でも、店内だけで販売促進をしているだけでは決してお客様を増やすことはできません。
そこで登場するのが、商圏なのです。
商圏を知ると、未だ、自店のお客様になっていない人々がたくさんいらっしゃることが分かります。そういう人達にお客様になっていただくことができれば、売上は確実に増えます。
仮に、商圏内に3000人住んでいるとしたら、570×8×3000=1368万円/月、すなわち、日販で約45万円分のポテンシャル(潜在購買力)があることになります。 コンビニを週1~3回利用する(およそ月8回)という人の割合は全世代を通じて4割いる、また、1人1回あたりの平均購入額は570円という調査結果があります(注)
さらに、この商圏とは別にその外からたまたま通りがかって来店してくれるという人が2割ほどいるものです。それを加えると1・2倍、つまり、日販約55万円が本当の売上となります(同業店の存在を考えていません)。
それなのに、自店の売上が30万円しかないとすれば、残りの25万円は商圏に対する販売促進で得られる可能性がありますね。
コンビニを週1~3回利用する(およそ月8回)という人の割合は全世代を通じて4割いる、また、1人1回あたりの平均購入額は570円という調査結果があります(注)
仮に、商圏内に3000人住んでいるとしたら、570×8×3000×0・4=547万円/月、同様に、日に3回以上利用する人や月1回以下の人の購入額を計算し合計すると約2258万円、すなわち、日販で約75万円分のポテンシャル(潜在購買力)があることになります(表)。
さらに、この商圏とは別にその外からたまたま通りがかって来店してくれるという人が2割ほどいるものです。それを加えると1・2倍、つまり、日販約90万円が本当の売上となります(同業店の存在を考えていません)。
それなのに、自店の売上が30万円しかないとすれば、残りの60万円は商圏に対する販売促進で得られる可能性がありますね。
では、この商圏はどうやって決めたら良いでしょう。
まず、本来の決め方を説明します。
それは、お客様一人一人に、どこから来たか、どこに住んでいるか、どこで就業、就学しているかをアンケートするというものです。そして、その結果を元に、どの地区では何人のお客様がいるか、そして、その地区人口に対する比率(「住民浸透度係数」)がいくらであるかを計算します。その比率が5%以上であれば、そこは商圏。未満であれば商圏ではありません。
飲食店や大きな物販店などは通常はこうやって商圏を決めます(図1)。
もちろん、このやり方での商圏設定は、手間がかかり、時間もかかりますが、慣れれば段取り良くできますのでやってみることを筆者はお勧めします。
それでも、たいへんそうだなあ、という方がいるでしょうから、次にとっておきの商圏の決め方を説明しましょう。
これは至って簡単な方法です。3ステップでできます。車ではなく、通行人が主なお客様になる場合の商圏について、順を追って説明しましょう。
STEP1 基本円を描く。
まず、地図を買ってきて、自店舗から300mの円をコンパスを用いて書いてみましょう(図2)。この300mは、シビアに見たいと思うなら200m、100mにしても良いでしょう。また、反対にもっと大きな範囲を想定したいというなら500mにしていただいても構いません。まずは、「円」を描くことがポイントです。
STEP2 商圏が拡大する地域を加える。
次は、店前道路と描いた円の交点を中心に、150mの円を描きます(図3)。もし、店前道路が50m以内で別の道路と交差しているような場合は、その道路のほうも同様な円を描いてもけっこうです。この円の分だけ、店前道路を使ってまっすぐ人々が来店できるという考え方に基づいています。
また、TG(駅などの交通発生源)が店の100m~200mにあるようなら、TGがある方向とは反対方向へ100m延長します。
STEP3 商圏が制約を受ける地域を除外する(図4)。
最後に、①並行道路、②大きな敷地、③同業店から受ける制約要因を書き入れます。
これは、学校や工場、公園のような横切りにくい敷地を指します。これが基本円にかかっている場合は、この部分を商圏から除外します。また、踏切の少ない鉄道線路があるようでしたら、この線路より先を除外します。
これで、商圏は出来上がりです。
ただし、商圏は描いて終わりではありません。どの町丁目が商圏に含まれているかを調べ、その町丁目の人口を合計して下さい。
あなたの店は、どれだけの人口がありましたか? なお、この商圏設定は、新店を出す場合でも、もちろん有効です。
注 .2013年5月なんでも調査団「コンビニについての本音・実態調査」
2011年1月20日フランチャイズチェーン協会発表。
はやしはら やすのり 売上予測コンサルタント。有限会社ソルブ代表。東京大学卒。
日本マクドナルドで売上予測調査を担当。
退社独立後、独自に深耕させた「立地判定/高精度売上予測」理論をもとに
多くのチェーン企業、個人起業家をコンサルティングしている。
著書に『実践 売上予測と立地判定』(商業界)、
『最新版 これが「繁盛立地」だ!』(同文館出版)など。昭和31年生56才 http://www.sorb.co.jp
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有限会社ソルブ
電話番号:048-711-7195 住所 〒338-0002 埼玉県さいたま市中央区下落合四丁目17番18号
18/04/22
18/04/21
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商圏の超簡単な描き方
自店のお客様たちがどの辺りから来ているか、この範囲を「商圏」と言います。
ところが、多くの店舗を見てきた私ですが、商圏を正確にしっかり把握している店長、オーナーは少ないようです。
では、それで本当に良いのでしょうか?また、商圏を把握しておくとどんなメリットがあるでしょうか。
お店が繁盛することができるのは、お客様あってのことです。言うまでもなく、そのお客様にいろいろな役立つ物、価値あるサービスを提供していくからこそ、一度だけでなく何度も来店してくれるのです。
でも、お客様は最初から「お客様」であるわけではなく、どこかに住み、暮らし、働き、学んでいた拠点があった普通の生活者です。その生活者はどうして、そのお店にやってこられるの、そもそも、お客様はどこから来ているのか?
このお客様の生活者という視点に立って改めて考えてみるといろいろなことが見えてくるはずです。例えば、販売促進と言えば、すぐに、「店内」でやることばかりが思い浮かぶ店長、オーナーさんは多いと思います。ポスターやバナーを貼る。景品を飾る。ディスカウントシールを貼る、等々ですね。でも、店内だけで販売促進をしているだけでは決してお客様を増やすことはできません。
そこで登場するのが、商圏なのです。
商圏を知ると、未だ、自店のお客様になっていない人々がたくさんいらっしゃることが分かります。そういう人達にお客様になっていただくことができれば、売上は確実に増えます。
仮に、商圏内に3000人住んでいるとしたら、570×8×3000=1368万円/月、すなわち、日販で約45万円分のポテンシャル(潜在購買力)があることになります。 コンビニを週1~3回利用する(およそ月8回)という人の割合は全世代を通じて4割いる、また、1人1回あたりの平均購入額は570円という調査結果があります(注)
さらに、この商圏とは別にその外からたまたま通りがかって来店してくれるという人が2割ほどいるものです。それを加えると1・2倍、つまり、日販約55万円が本当の売上となります(同業店の存在を考えていません)。
それなのに、自店の売上が30万円しかないとすれば、残りの25万円は商圏に対する販売促進で得られる可能性がありますね。
コンビニを週1~3回利用する(およそ月8回)という人の割合は全世代を通じて4割いる、また、1人1回あたりの平均購入額は570円という調査結果があります(注)
仮に、商圏内に3000人住んでいるとしたら、570×8×3000×0・4=547万円/月、同様に、日に3回以上利用する人や月1回以下の人の購入額を計算し合計すると約2258万円、すなわち、日販で約75万円分のポテンシャル(潜在購買力)があることになります(表)。
さらに、この商圏とは別にその外からたまたま通りがかって来店してくれるという人が2割ほどいるものです。それを加えると1・2倍、つまり、日販約90万円が本当の売上となります(同業店の存在を考えていません)。
それなのに、自店の売上が30万円しかないとすれば、残りの60万円は商圏に対する販売促進で得られる可能性がありますね。
では、この商圏はどうやって決めたら良いでしょう。
まず、本来の決め方を説明します。
それは、お客様一人一人に、どこから来たか、どこに住んでいるか、どこで就業、就学しているかをアンケートするというものです。そして、その結果を元に、どの地区では何人のお客様がいるか、そして、その地区人口に対する比率(「住民浸透度係数」)がいくらであるかを計算します。その比率が5%以上であれば、そこは商圏。未満であれば商圏ではありません。
飲食店や大きな物販店などは通常はこうやって商圏を決めます(図1)。
もちろん、このやり方での商圏設定は、手間がかかり、時間もかかりますが、慣れれば段取り良くできますのでやってみることを筆者はお勧めします。
それでも、たいへんそうだなあ、という方がいるでしょうから、次にとっておきの商圏の決め方を説明しましょう。
これは至って簡単な方法です。3ステップでできます。車ではなく、通行人が主なお客様になる場合の商圏について、順を追って説明しましょう。
STEP1 基本円を描く。
まず、地図を買ってきて、自店舗から300mの円をコンパスを用いて書いてみましょう(図2)。この300mは、シビアに見たいと思うなら200m、100mにしても良いでしょう。また、反対にもっと大きな範囲を想定したいというなら500mにしていただいても構いません。まずは、「円」を描くことがポイントです。
STEP2 商圏が拡大する地域を加える。
次は、店前道路と描いた円の交点を中心に、150mの円を描きます(図3)。もし、店前道路が50m以内で別の道路と交差しているような場合は、その道路のほうも同様な円を描いてもけっこうです。この円の分だけ、店前道路を使ってまっすぐ人々が来店できるという考え方に基づいています。
また、TG(駅などの交通発生源)が店の100m~200mにあるようなら、TGがある方向とは反対方向へ100m延長します。
STEP3 商圏が制約を受ける地域を除外する(図4)。
最後に、①並行道路、②大きな敷地、③同業店から受ける制約要因を書き入れます。
これは、学校や工場、公園のような横切りにくい敷地を指します。これが基本円にかかっている場合は、この部分を商圏から除外します。また、踏切の少ない鉄道線路があるようでしたら、この線路より先を除外します。
これで、商圏は出来上がりです。
ただし、商圏は描いて終わりではありません。どの町丁目が商圏に含まれているかを調べ、その町丁目の人口を合計して下さい。
あなたの店は、どれだけの人口がありましたか?
なお、この商圏設定は、新店を出す場合でも、もちろん有効です。
注 .2013年5月なんでも調査団「コンビニについての本音・実態調査」
2011年1月20日フランチャイズチェーン協会発表。
はやしはら やすのり
売上予測コンサルタント。有限会社ソルブ代表。東京大学卒。
日本マクドナルドで売上予測調査を担当。
退社独立後、独自に深耕させた「立地判定/高精度売上予測」理論をもとに
多くのチェーン企業、個人起業家をコンサルティングしている。
著書に『実践 売上予測と立地判定』(商業界)、
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