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都内では珍しい路面電車終起点 下高井戸
都内では珍しい路面電車「世田谷線」の終起点 下高井戸
東京都杉並区と世田谷区の境で、国道20号線(通称:甲州街道)にほど近い下高井戸駅の乗降数は京王線で4万5939人(※注)ですが、都内では珍しい路面電車「世田谷線」の終起点でもあります(全線の1日平均乗降人員は11万1,340人とひじょうに多い)。このエリアでのコンビニ激戦度は前回の63位から今回は21位と急上昇、10店が競いあっています。
地域A(駅から日大へ向かう西側商店街)の3店舗
駅舎は改装され、チェーン店が2Fの改札前に並んで出店しています。その一つがコンビニ店①です。駅改札を利用する人々のほぼ100パーセントに近くされる最高の立地と言えます。ただし、営業時間に制約を受け、朝7時から午前零時までです。
駅南口を出てすぐ西側に商店街が続いており、もっとも人々で賑わいます。その先には日大文理学部(学生数約1万人)があり、駅TGとの間の強い動線が形成されていることがわかります。この動線上に、店②と店③があります。店②の看板は緑色であり、付近の看板と融合してしまい、ともすれば見落としがちです。
これに対し、店③はセオリー通りに交差点角地に出店しており視界性はきわめて良好です。距離的には動線のほぼ中央ですが、商店街としては最西端になります。つまり、他の店なら駅から離れていて難しいと判断されるこうした立地でもコンビニなら可能です。
それは、生活必需品のなかでも選りすぐりの商品を数多く有しているのでそれだけ「目的来店」を増やすことができるからです。
地域B(国道20号線、甲州街道とその周辺地域)の4店舗
甲州街道沿いはどこも難しい立地と昔から言われています。それは、中央分離帯がえんえんと続き、街路樹が多く茂っているため店が見えにくいばかりか、接近もしづらい。駐車場が確保できない。間口も狭い。などの理由があります。
この難点ばかりの立地の典型が店④と言えるでしょう。かろうじて、店が角地にあるため店の後背に住む人々が徒歩や自転車で利用してくれたり、自動車でも店側にもっとも近い車線に停車して買い物してくれるようです。
同じチェーンでも店⑤は、駐車場を備えています。店前が国道20号線に出るまでの自動車道となっているのでこれは効果的です。さらに、店が神田川を渡る角地に立地している点も優れた点です。このため、この店の知覚突出性はきわめて優れたものになるからです。
さて、その自動車道を下高井戸駅に向かい国道20号線を渡った角に、店⑥が位置しています。ここほど教科書通りの立地はありません。北側に住む人々は、ほとんど店前の横断歩道を渡らざるを得ません。ほかのところでは、ほとんど渡れませんので皆ここに集中してきます。そうして、集まってきた人のほぼすべてが店を知覚します。衝動来店は多いでしょう。さらに加えて、この店は12階建てマンションの1Fにあります。同じマンションからの来店はじゅうぶん期待できます。
店⑦の立地は微妙です。確かに、店からワンブロックの所に、同じような横断交差点があります。そして、そこから店が見えないこともありません。しかし、ワンブロックといえど、50メートルという距離は立地上の大きな難点です。人々の自然な来店は望めません。
地域C(駅から南へ向かった地域)の3店
店⑧は、路面電車「世田谷線」がカーブをするあたりにあります。ですので、店前道路沿いに駅のほうから来た人々にはこの店を見つけることができます。
しかし、線路を挟んで反対側の道路を通ってきた人は、同じように見えますが、ほとんど店に到達できません。100メートル以上も行かないと踏切がないからです。 店⑨は人通りの少ない商店街にあります。角地ではありません。付近は低層住宅が多く、商店街にも賑わいはありません。
店⑩は、撤退してしまい焼肉チェーンの店に変わってしまいました。
この失敗に学べ
店⑩が閉店した理由
一言で言うと、来店する理由がないことです。図1にある通り、地域の東側の住民は、A→B→C、または、D→B→Cの動線で駅に向かいます。南側の住民は、E→F→G→H→Iの動線、西側の住人はJ→K→H→I、またはL→Mの動線です。つまり、店⑩はどこの動線上にもないことがわかります。このように見てくると店⑩は東西南北どこにも商圏が広がらないことがわかります。だから、この「動線上にない」ことはコンビニの出店にとって致命的なのです。
この成功に学べ
店⑤の立地が良い理由
ここは橋のたもとです。この店より北側に住んでいる人々は、神田川をわたるにはこの橋を使うしかありません。東西600メートルも離れないと渡れるところがないからです。
そして、視界を遮るものがありませんので、看板は良く見えます。反対側からでも、民家の屋根より高い位置にあるため、十分知覚することが可能です。車での出入りも容易ですし、歩行者横断用の信号まで付いています。偶然が多少あったとは言え、ここを開発した人は尊敬に値します。
近未来予測
下高井戸周辺は、行止りや変形した道路がひじょうに多く迷路のようになっています(図3)。そのため、錯綜した道に人々が分散してしまい、主だった商店街以外に、人々が集中する道路はほとんどありません。加えて、国道20号線沿いも一部の例外を除いて、ほとんど余分な土地がありません。
したがって、今後、大きな再開発計画でも持ち上がらない限り、下高井戸周辺は店を増やすことはできないと推測致します。
※注 2008年度、駅別乗降者数総覧‘11(株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所)より
はやしはら やすのり 東京大学卒業後、日本マクドナルドで「立地と売上予測」を基礎研究し実践応用。 現在はチェーン展開する多くの企業や起業家をコンサルティングしている。定期的に開催しているセミナー“立地道場”は個人にも店舗開発プロにも人気がある。
23/06/12
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東京都杉並区と世田谷区の境で、国道20号線(通称:甲州街道)にほど近い下高井戸駅の乗降数は京王線で4万5939人(※注)ですが、都内では珍しい路面電車「世田谷線」の終起点でもあります(全線の1日平均乗降人員は11万1,340人とひじょうに多い)。このエリアでのコンビニ激戦度は前回の63位から今回は21位と急上昇、10店が競いあっています。
地域A(駅から日大へ向かう西側商店街)の3店舗
駅舎は改装され、チェーン店が2Fの改札前に並んで出店しています。その一つがコンビニ店①です。駅改札を利用する人々のほぼ100パーセントに近くされる最高の立地と言えます。ただし、営業時間に制約を受け、朝7時から午前零時までです。
駅南口を出てすぐ西側に商店街が続いており、もっとも人々で賑わいます。その先には日大文理学部(学生数約1万人)があり、駅TGとの間の強い動線が形成されていることがわかります。この動線上に、店②と店③があります。店②の看板は緑色であり、付近の看板と融合してしまい、ともすれば見落としがちです。
これに対し、店③はセオリー通りに交差点角地に出店しており視界性はきわめて良好です。距離的には動線のほぼ中央ですが、商店街としては最西端になります。つまり、他の店なら駅から離れていて難しいと判断されるこうした立地でもコンビニなら可能です。
それは、生活必需品のなかでも選りすぐりの商品を数多く有しているのでそれだけ「目的来店」を増やすことができるからです。
地域B(国道20号線、甲州街道とその周辺地域)の4店舗
甲州街道沿いはどこも難しい立地と昔から言われています。それは、中央分離帯がえんえんと続き、街路樹が多く茂っているため店が見えにくいばかりか、接近もしづらい。駐車場が確保できない。間口も狭い。などの理由があります。
この難点ばかりの立地の典型が店④と言えるでしょう。かろうじて、店が角地にあるため店の後背に住む人々が徒歩や自転車で利用してくれたり、自動車でも店側にもっとも近い車線に停車して買い物してくれるようです。
同じチェーンでも店⑤は、駐車場を備えています。店前が国道20号線に出るまでの自動車道となっているのでこれは効果的です。さらに、店が神田川を渡る角地に立地している点も優れた点です。このため、この店の知覚突出性はきわめて優れたものになるからです。
さて、その自動車道を下高井戸駅に向かい国道20号線を渡った角に、店⑥が位置しています。ここほど教科書通りの立地はありません。北側に住む人々は、ほとんど店前の横断歩道を渡らざるを得ません。ほかのところでは、ほとんど渡れませんので皆ここに集中してきます。そうして、集まってきた人のほぼすべてが店を知覚します。衝動来店は多いでしょう。さらに加えて、この店は12階建てマンションの1Fにあります。同じマンションからの来店はじゅうぶん期待できます。
店⑦の立地は微妙です。確かに、店からワンブロックの所に、同じような横断交差点があります。そして、そこから店が見えないこともありません。しかし、ワンブロックといえど、50メートルという距離は立地上の大きな難点です。人々の自然な来店は望めません。
地域C(駅から南へ向かった地域)の3店
店⑧は、路面電車「世田谷線」がカーブをするあたりにあります。ですので、店前道路沿いに駅のほうから来た人々にはこの店を見つけることができます。
しかし、線路を挟んで反対側の道路を通ってきた人は、同じように見えますが、ほとんど店に到達できません。100メートル以上も行かないと踏切がないからです。
店⑨は人通りの少ない商店街にあります。角地ではありません。付近は低層住宅が多く、商店街にも賑わいはありません。
店⑩は、撤退してしまい焼肉チェーンの店に変わってしまいました。
この失敗に学べ
店⑩が閉店した理由
一言で言うと、来店する理由がないことです。図1にある通り、地域の東側の住民は、A→B→C、または、D→B→Cの動線で駅に向かいます。南側の住民は、E→F→G→H→Iの動線、西側の住人はJ→K→H→I、またはL→Mの動線です。つまり、店⑩はどこの動線上にもないことがわかります。このように見てくると店⑩は東西南北どこにも商圏が広がらないことがわかります。だから、この「動線上にない」ことはコンビニの出店にとって致命的なのです。
この成功に学べ
店⑤の立地が良い理由
ここは橋のたもとです。この店より北側に住んでいる人々は、神田川をわたるにはこの橋を使うしかありません。東西600メートルも離れないと渡れるところがないからです。
そして、視界を遮るものがありませんので、看板は良く見えます。反対側からでも、民家の屋根より高い位置にあるため、十分知覚することが可能です。車での出入りも容易ですし、歩行者横断用の信号まで付いています。偶然が多少あったとは言え、ここを開発した人は尊敬に値します。
近未来予測
下高井戸周辺は、行止りや変形した道路がひじょうに多く迷路のようになっています(図3)。そのため、錯綜した道に人々が分散してしまい、主だった商店街以外に、人々が集中する道路はほとんどありません。加えて、国道20号線沿いも一部の例外を除いて、ほとんど余分な土地がありません。
したがって、今後、大きな再開発計画でも持ち上がらない限り、下高井戸周辺は店を増やすことはできないと推測致します。
※注 2008年度、駅別乗降者数総覧‘11(株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所)より
はやしはら やすのり
東京大学卒業後、日本マクドナルドで「立地と売上予測」を基礎研究し実践応用。 現在はチェーン展開する多くの企業や起業家をコンサルティングしている。定期的に開催しているセミナー“立地道場”は個人にも店舗開発プロにも人気がある。