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人口がなくても売れる 有明
人口がなくても売れる 有明 月刊コンビニ連載2011年 5月号
3月号で明らかになったコンビニ激戦区の筆頭は、「有明駅(ゆりかもめ)」、2位は「国際展示場駅(りんかい線)」でした。実はこの2駅は120mしか離れておらず、それらの駅から500m圏と言うとほとんど同じ地域になります。また、19位に「国際展示場正門駅(ゆりかもめ)」がありましたが、ここもほぼ同じ地域です。いわゆる「有明(ありあけ)」と呼ばれる地域です。
今回は、この激戦地「有明」を実査しました。
有明は、お台場などと同じく、もともと海だったところを埋め立てて作られ、他の陸地から隔離されたような地域です。ですから、いまだにこの地域の人口は3341人(2010年)、就業者221人(2001年)と少ない状況です。そこに、コンビニが12店舗あります。
なぜ、人口の少ない地域で成立するのでしょうか。
有明には、1987年に1万人収容可能な、多目的スタジアム「有明コロシアム」が、96年に駅名にもなった「国際展示場」別名、東京ビッグサイト(以下、TBSと略します)ができることによって、今や、後者だけでも年間1200万人以上もの人々を集める(流入する)地域になっています。
この流入が、コンビニ12店舗の売上げを支えていると考えられます。
しかし、本当にそれだけなのでしょうか。実査を敢行することによって、各コンビニのしたたかな立地戦略が見えてきました。
まず、ファミリーマート。
ファミリーマートは、TBSに3店すべてを布陣しています。1は、ゆりかもめの「国際展示場正門駅」から、TBS正門へ向かう動線上から、ひじょうによく見えます。つまり、視界性評価は満点。
また、2は、TBSエントランス内に、3は東展示棟に入ってすぐ左にあります。いずれも、満足のいく立地です。
しかし、難点は一つあります。それは、言うまでもない事ながら、TBSで催事がないとき、ここには流入がほとんどないことです。こういう日が月に4日から10日あります。
当然ながら、こういう日は売れません。しかし、問題は、売れない日でも、従業員は確保していなければなりません。そこで、そういう日の場合、ファミリーマートはTBS会場内の2店は閉めても、外の店はずっと開けておき、仕事をさせているようです。
催事さえあれば、この店は他のどのコンビニよりも立地が良いため、売上げも尋常ではないから人件費にもゆとりが生まれているのでしょう。
4のミニストップは、TFT(東京ファッションタウン)ビルの東館と西館をつなぐ主動線上にあります。
残念なことに、TFTビル東館の中央吹き抜けフロアーから見えませんので、TBSの催事の影響はあまり大きくはないと思われます。しかし、TFTビルのオフィス利用者にはじゅうぶん認知が進んでおり、じゅうぶんな売上げは確保しているでしょう。このTFTビルのような存在を立地論ではPC(ポテンシャルクラスター、需要集合体)と呼びます。
同様に、5のサンクス、6のデイリーヤマザキもそれぞれ、有明フロンティアビル、有明ワシントンビルというPCを持っています。加えて、いずれもTBSからりんかい線「国際展示場駅」へ向かう動線(イーストプロムナード)に沿っており、催事の流入者を顧客化できる立地です。ただし、6は視界性にやや難があります。
その「国際展示場駅」にはサンクスが出店していますが、ここならば催事流入を取り込めることができるのはもちろん、他の就業者の流入も取れます。
面白いのは、7のローソンです。ホテルサンルートの中の2階にあって、外部からの直接来店はできません。もっぱら、ホテル宿泊者専用のコンビニ(売店)です。ここで商売が成立するのには、ホテルそのものが加盟店で、賃料や光熱費の心配がないからかもしれません。通常ならまず無理な立地です。
これに対して、8のセブンイレブンは、同じように2階にありながら、TOC有明ビル内部の人はもちろん、外を歩く人々が階段を使って来店できるようになっています。今のところこの店以西にコンビニがありませんので、セブンイレブンのブランドを以ってすれば、この立地でもじゅうぶんやっていけるのでしょう。
10のミニストップは、完全に病院内の売店です。この病院は年間の外来患者だけで40万人というマンモス病院です。病院外からの利用はないもののこの外来患者はもちろん、入院患者(700床)や見舞客の需要をほとんど独占しています。一定以上のサービス水準を維持している限り、不振店になることはまずあり得ない立地です。こうした病院は典型的なPCと言えます。
11のローソンはロードサイド立地ですが、そのすぐ裏手には6階建て、9階建てのマンションと26階建ての高層マンションが控えており、その需要を独占しています。これらもPCと呼んで良いでしょう。
同様に、12のデイリーヤマザキは33階建ての高層マンションの1Fにあります。
加えて、これら2店は、「有明コロシアム(観客席1万席)」に来場(流入)する人々も売上げに寄与します。
総括
こうして見て来ると、この有明にある12店舗は、激戦どころか、どこも特徴ある立地をフルに活かしじゅうぶん余力を残しているように見受けられます。余程、賃料が高くない限り、どこもずっと営業可能です。それどころか、まだまだコンビニの出店余地があります。なぜなら、有明は依然、手付かずのの土地が膨大に残っており、今後さらに発展していくことが確実だからです。
【プロフィール】
はやしはら やすのり 東京大学卒業後、日本マクドナルドで「立地と売上予測」を基礎研究し実践応用。 現在はチェーン展開する多くの企業や起業家をコンサルティングしている。毎月開催しているセミナー“立地道場”は個人にも店舗開発プロにも人気がある。
23/06/12
22/05/20
21/12/30
21/08/04
21/08/03
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人口がなくても売れる 有明 月刊コンビニ連載2011年 5月号
3月号で明らかになったコンビニ激戦区の筆頭は、「有明駅(ゆりかもめ)」、2位は「国際展示場駅(りんかい線)」でした。実はこの2駅は120mしか離れておらず、それらの駅から500m圏と言うとほとんど同じ地域になります。また、19位に「国際展示場正門駅(ゆりかもめ)」がありましたが、ここもほぼ同じ地域です。いわゆる「有明(ありあけ)」と呼ばれる地域です。
今回は、この激戦地「有明」を実査しました。
有明は、お台場などと同じく、もともと海だったところを埋め立てて作られ、他の陸地から隔離されたような地域です。ですから、いまだにこの地域の人口は3341人(2010年)、就業者221人(2001年)と少ない状況です。そこに、コンビニが12店舗あります。
なぜ、人口の少ない地域で成立するのでしょうか。
有明には、1987年に1万人収容可能な、多目的スタジアム「有明コロシアム」が、96年に駅名にもなった「国際展示場」別名、東京ビッグサイト(以下、TBSと略します)ができることによって、今や、後者だけでも年間1200万人以上もの人々を集める(流入する)地域になっています。
この流入が、コンビニ12店舗の売上げを支えていると考えられます。
しかし、本当にそれだけなのでしょうか。実査を敢行することによって、各コンビニのしたたかな立地戦略が見えてきました。
まず、ファミリーマート。
ファミリーマートは、TBSに3店すべてを布陣しています。1は、ゆりかもめの「国際展示場正門駅」から、TBS正門へ向かう動線上から、ひじょうによく見えます。つまり、視界性評価は満点。
また、2は、TBSエントランス内に、3は東展示棟に入ってすぐ左にあります。いずれも、満足のいく立地です。
しかし、難点は一つあります。それは、言うまでもない事ながら、TBSで催事がないとき、ここには流入がほとんどないことです。こういう日が月に4日から10日あります。
当然ながら、こういう日は売れません。しかし、問題は、売れない日でも、従業員は確保していなければなりません。そこで、そういう日の場合、ファミリーマートはTBS会場内の2店は閉めても、外の店はずっと開けておき、仕事をさせているようです。
催事さえあれば、この店は他のどのコンビニよりも立地が良いため、売上げも尋常ではないから人件費にもゆとりが生まれているのでしょう。
4のミニストップは、TFT(東京ファッションタウン)ビルの東館と西館をつなぐ主動線上にあります。
残念なことに、TFTビル東館の中央吹き抜けフロアーから見えませんので、TBSの催事の影響はあまり大きくはないと思われます。しかし、TFTビルのオフィス利用者にはじゅうぶん認知が進んでおり、じゅうぶんな売上げは確保しているでしょう。このTFTビルのような存在を立地論ではPC(ポテンシャルクラスター、需要集合体)と呼びます。
同様に、5のサンクス、6のデイリーヤマザキもそれぞれ、有明フロンティアビル、有明ワシントンビルというPCを持っています。加えて、いずれもTBSからりんかい線「国際展示場駅」へ向かう動線(イーストプロムナード)に沿っており、催事の流入者を顧客化できる立地です。ただし、6は視界性にやや難があります。
その「国際展示場駅」にはサンクスが出店していますが、ここならば催事流入を取り込めることができるのはもちろん、他の就業者の流入も取れます。
面白いのは、7のローソンです。ホテルサンルートの中の2階にあって、外部からの直接来店はできません。もっぱら、ホテル宿泊者専用のコンビニ(売店)です。ここで商売が成立するのには、ホテルそのものが加盟店で、賃料や光熱費の心配がないからかもしれません。通常ならまず無理な立地です。
これに対して、8のセブンイレブンは、同じように2階にありながら、TOC有明ビル内部の人はもちろん、外を歩く人々が階段を使って来店できるようになっています。今のところこの店以西にコンビニがありませんので、セブンイレブンのブランドを以ってすれば、この立地でもじゅうぶんやっていけるのでしょう。
10のミニストップは、完全に病院内の売店です。この病院は年間の外来患者だけで40万人というマンモス病院です。病院外からの利用はないもののこの外来患者はもちろん、入院患者(700床)や見舞客の需要をほとんど独占しています。一定以上のサービス水準を維持している限り、不振店になることはまずあり得ない立地です。こうした病院は典型的なPCと言えます。
11のローソンはロードサイド立地ですが、そのすぐ裏手には6階建て、9階建てのマンションと26階建ての高層マンションが控えており、その需要を独占しています。これらもPCと呼んで良いでしょう。
同様に、12のデイリーヤマザキは33階建ての高層マンションの1Fにあります。
加えて、これら2店は、「有明コロシアム(観客席1万席)」に来場(流入)する人々も売上げに寄与します。
総括
こうして見て来ると、この有明にある12店舗は、激戦どころか、どこも特徴ある立地をフルに活かしじゅうぶん余力を残しているように見受けられます。余程、賃料が高くない限り、どこもずっと営業可能です。それどころか、まだまだコンビニの出店余地があります。なぜなら、有明は依然、手付かずのの土地が膨大に残っており、今後さらに発展していくことが確実だからです。
【プロフィール】
はやしはら やすのり
東京大学卒業後、日本マクドナルドで「立地と売上予測」を基礎研究し実践応用。 現在はチェーン展開する多くの企業や起業家をコンサルティングしている。毎月開催しているセミナー“立地道場”は個人にも店舗開発プロにも人気がある。